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学園デビューしたいのに、ツンデレ男が邪魔してくる  作者: いか人参


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怪我の代償


心優しい友達も出来たし、校医の先生もお昼食べ損ねた私のためにサンドイッチ買って来てくれたし、私が知らないだけで、この学園にはまだまだ素敵な人がたくさんいるのかも…


ふふ、怪我の功名って言うし、保健室に運ばれたことで心配してくれてクラスの子達と友達になれたりしないかな…さすがにそんなにうまくは行かないかな?


でもきっと、心配で声を掛けてくれる人はいると思うから、まずはそこできっちりコミュニケーションを取って仲良くなって……


って、あれなんだろ???



カシュアは先に戻ったため、一人で教室に戻って来たアイナ。

もう授業が始まる時間だと言うのに、廊下には数名の女子生徒達が立っていた。


どうやらアイナのことを見ているようだ。



ん…?


もしかして、、心配で待っててくれたのかな…?ま、それは期待しすぎだとしても、少しは興味を持ったとか?何が起きたか知りたい野次馬とか??


…それでも全然良いんだけど。


無視より辛いものはないから。

反応があるのなら御の字って思うんだ。




「貴女、何様のつもり?」


集団の先頭に立つジュリアンヌがキツい口調で突っかかって来た。

初日にアイナのことを騙した時のような繕う姿は見当たらない。


彼女に対して本気でキレているようだ。



「……….ここでそう来るか。」


口の中だけで呟いた声はジュリアンヌに聞こえることはなかった。



「ねぇ、あなた一体どういうつもりなの?レイン様に色目を使うだなんて、身の程知らずもいいところだわ。」


「・・・」


うわ、めちゃくちゃキレてる……ジュリアンヌ怖い……きっと、レイン・オックスフォードに抱き抱えられているのを見られちゃったんだろうな……


もうあんなの仕方ないじゃん。


意識朦朧として動かないってのに、助けてくれる相手を選ぶやつがどこにいるかっての。しかも色目使うって…むしろ使われているのは私の方な気がするんだけど……いや、こんなこと言ったら火に油だよね。



はぁー…



怪我の功名だと思ってたのに、これじゃ普通に怪我の代償じゃん………





「聞いてるの?何か言いなさいよ、ブス。」



ー ブチッ



「なに?そっちこそ言いがかりはやめてくれる?そんなに私が羨ましいなら、貴女も授業で倒れてみれば?心配してくれるんじゃない?それに、そんなに彼のことが気になるなら、早く婚約でも結んで自分のものにすれば良いじゃない。まぁ、それがうまくいかないから、こんな男爵家の娘に目くじら立てているんでしょうけど。」


「なっ………」


いつもにこにこと諂うだけだったアイナから発せられた辛辣な言葉の数々に、ジュリアンヌは言葉を失った。


こんな仕打ちを受けたことのない高貴な身分の彼女は、心の中で渦巻く様々な感情の処理が上手く出来ない。

顔を真っ赤にして拳を握りしめ、身体を震わせる事しかできなかった。


そんな彼女を取り巻き達が泣きそうな顔で見つめる。



「じゃあ、もう授業始まるから。」


アイナは冷たく言い捨てると、怒りで震えるジュリアンヌを放って教室の中へと入っていった。





「やってしまった………つい感情的に……」


席についたアイナは、机に突っ伏して息を吐いた。



「アイナ、大丈夫?」


机から顔を上げると、心配そうに覗き込んでくるカシュアがいた。



「あ、いな…アイナっ……この学園で名前を呼ばれるなんて!!すごく嬉しい。やっぱりアイデンティティって大事だね。ありがとう、カシュア。元気になったよ。」


アイナはカシュアの手を握り、歓喜に震える瞳で彼女のことを見上げた。

大袈裟なアイナに、カシュアは照れくさそうにしながらも嬉しそうな顔をしている。




「じゃあ、僕もアイナって呼ばせてもらおうかな?」


「い………」


寒気がして横を向くと、にこやかに微笑む外面の良いレインがいた。


バッチリと目が合ったにも関わらず、アイナは何も見なかったふりをして顔の向きを正面に向ける。

その動きに合わせて、レインも彼女の正面に回り込んで来た。




「もう体調は大丈夫なの?」


僅かに揺れるダイヤモンドの瞳。



「え、あ、はい。おかげさまでこの通りピンピンとしております。」


彼が本心から心配してくれているのだと悟ったアイナは、声が上擦ってしまった。



「それなら良かった。無理はしないように。」


それだけ言うとレインに自分の席に戻ってしまった。




「え…何がしたかったんだろ……」


「アイナ、すごいねっ!!!あのレイン様に話しかけてもらえるだなんてっ!!!」


「いや、そんなに大したことでは…ほら、同じクラスメイトだし。」


「そんなことないよ!レイン様って、話しかけられたら返すけれど、自分から女子に話しかけることなんてないもんっ。」


「そう、なの…??」


「そうなのよ!!」


恋愛話だとはやとちりしたカシュアが瞳を輝かせた。

そんなことは絶対にあり得ないと分かっているアイナは、適当に返事をしている。


そんな仲良く話している二人のことを、金色の瞳がじっと見ていた。





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