新たに見つかった魔剣
「「魔剣……?」」
俺とカレンの声が重なる。
魔剣……この世界には魔剣と呼ばれるものはある。
もちろん、俺の持つグラムやアースやカレン、カイトが持つエクスカリバーやラグナロク、月花といったものとは違う少し魔法が付与されているような代物だ。
それでも希少価値は高く、高値で取引されているけど、それが見つかったからといってアースが動くような依頼がある訳ないだろう。
と、いう事は……。
「二人とも何か察したみたいだね。そう、見つかった魔剣というのはショーマ君が見つけたグラムような魔剣らしい」
「「っ!?」」
やっぱりか!?
でも、どういう事だ?
以前に、グラムにオークキングとゴブリン王の持っていた魔剣について聞いた時には、自分以外の魔剣は知らないと言っていたし……。
『そうだぜ、ショーマ。アースの言う魔剣がどんなものか知らねぇが、俺や他の三人が持つ剣みたいなのは存在は俺は知らねぇ』
『だよな。じゃあどういう……ってとりあえずアースに詳しく聞くしかないか』
「魔剣とはショーマが見つけたグラムみたいなものか?」
グラムと話している間に、カレンがアースに問いかける。
「うん、たぶんね」
「たぶん? たぶんとはどういう事だ?」
「えっとね~、とりあえず最初から説明するね」
そう言ってアースはカレンと俺を一瞥する。
その表情はいつもと違い、真剣そのものだ。
「先日、ある冒険者グループが魔物の討伐依頼から帰って来なくなった。残念なことだけど、魔物に襲われ命を落とす冒険者もいる。だから、それ自体はギルドの間でも大事になっていなかった。冒険者は自己責任だからね。でも、昨日の夜、その冒険者グループが向かった森に別の依頼で行っていたBランク冒険者グループが倒れていた冒険者を連れて帰ってきたんだ。それが実は帰って来なくなって死んだと思われていた冒険者でね、意識は取り戻しているんだけど、ずっと上の空で『魔剣』『ティルフィング』と呟いているんだ。Bランクの冒険者が見つけた時にも意識はあったらしいけど、そんな感じで上の空だったみたいで、気になったそのBランク冒険者は近くにあった洞窟を調べようとしたらしいんだそしたら、聞こえたんだって。『我は魔剣ティルフィング』って」
「「っ!?」」
「そう、話が本当なら僕たちの持つ剣と同じ感じって事。ただ、違うのはそのBランク冒険者はその声を聞いて危険を感じてその場を後にしたって事。ようするに僕たちみたいに声が聞こえたからって所持者になってないという点だね。そこでこの件についての調査の依頼が今日の朝、僕にあったって訳」
剣の所持者になっていない……グラムの時のように契約がいるとかなのか?
それとも……。
「それは面白いなどと言っている場合ではないな。でも、依頼があったのはアースとミリアにだけなのか?」
「いや、本当はカイト君にも出そうとしたらしいけど、カイト君とネリーさんは昨日の帰りに、ギルド長にネリーさんの両親に会いに行くって言って朝早くに出たみたいなんだ。ギルド長がこの事を知ったのは朝に出勤してからだから、とりあえず僕とミリアに話が来たんだ」
あいつ、こんな時に限って行動早いな!
「なんだ、私も来ているのに……」
「いや、カレンちゃんはフレア帝国の皇女だからね、得体の知れない剣を調べる依頼は避けたんじゃない? 何かあったらいろいろ問題になるかもしれないし。だから、今までに伝わっていないグラムの所持者になったショーマ君についてきてもらえたらなって。何かグラムを手に入れた時と違う事とか同じ事があったら教えて欲しいんだ。もちろん、報酬は分けるから」
それはそうだな。
一国の皇女がいくらSランクと言え、指名依頼を出して何かあったら問題になるか。
それにしても、だからって危険があるのに俺を呼ぶって酷くないか!?
まぁ理にかなっているけど。
でも……。
「じゃあ、なんでアースはこの場にカレンを呼んだんだ?」
「それはSランクだか……あっ」
そう言ってアースはテヘペロする。
こいつは……っ!!
でも、クレイがさっき天を仰いでいたのは俺がいたってのもあるだろうけど、きっとアースがカレンを連れてきたからだろうな。
クレイの奴、大変だな。
でも、仕事だしな。
「大丈夫だ。今の私は皇女ではなく、Sランク冒険者としてここにいる。変な気を使ってもらっているようだが、冒険者である以上はすべては自己責任だ。それは私が皇女だからでも変わらない。直接ギルド長へ言おう」
「そうだね! じゃあ僕も一緒に言いに行くよ!」
……クレイの奴、ご愁傷様。
カレンの奴は真面目だから聞けば行くって言っただろうし、言わなかったんだろうけど、この国のSランク冒険者はなんてったってアースだしな。
クレイも苦労するな。
でも、魔剣ティルフィング……。
『グラム、知ってるか?』
俺はグラムに聞いてみる。
『いや、見た事も聞いた事もねぇな』
『やっぱそうだよな。どう思う?』
『何ともな……でも、俺達みたいに話しかける魔剣って事は普通じゃねぇし、気をつけたほうが良いだろうな』
『そうだな、気をつけるしかないか……』
グラムと話している間にアースとカレンは話がまとまったのか、アースが「ショーマ君、行くよ!」と言ってきた。
いや、俺はまだ何の返事もしてないけど……。
と、思いながらも、このままカレン達だけで行かせるのは不安なので、言われるがままに席を立ち、同行することにした。




