ようやくセシリーの元へ行けたけど、よくない展開な気がした
「何がですか?」
「いつもカイトさんがお世話になって……いや、それだけじゃありません。こうやってカイトさんと付き合えたのはショーマさんのおかげです」
「いやいや、そんな事ありませんよ」
「でも、カイトさんはショーマさんと出会ってから変わりました。正直最初は無口で恐い人かなと思っていたんですが、ショーマさんと一緒にいるカイトさんは本当楽しそうで、それを見ている私はいつの間にか、カイトさんを目で追うようになっていましたから」
そう言ってネリーさんは微笑む。
「いや、俺は何もしてませんよ。ただ普通にしてただけですし。それにカイトが変わったのではなくて、あれが本当のカイトなんでしょう」
なんてくさい台詞が俺の口から出る。
なんだ? 俺もなんだかんだで少し酔っているのか?
それともいろいろあったから、こうやってみんなと楽しく過ごせているのが嬉しくて感傷的になっているんだろうか?
「そうですね。でも、私たちだけじゃなく、ショーマさんの周りにいる人は救われ、助けられ、幸せになれる。ショーマさんって何者ですか?」
ネリーさんは悪戯っぽく笑いながら言ってくる。
いや、魔王ですけど。
なんて言えないしな。
てか、俺は特別何かしようとした訳でもなく、やりたい事をやりたいようにやってきただけだ。
「俺は俺ですよ」
すると、俺の格好をつけた台詞にネリーさんは「ふふ、今のショーマさんは闇夜の黒騎士さんですか?」と笑いながら突っ込みを入れられてしまった。
俺は少し照れながら、「いえ、今は闇夜の黒騎士の影響を受けた俺です」と返した。
「おーいネリー、飲んでるか?」すると、クレイがエールを片手に乱入してきた。
「飲んでますよ。それより、ギルド長の方こそ飲み過ぎじゃないですか?」
「今日はいいんだよ! 俺はショーマに感謝してるんだ、今日は飲んで飲んで飲みまくって盛大に快気祝いしてやる!!」
クレイの奴、むしろ逆に酒に飲まれているな。
それに、自分が参加してきた意味を見失っているじゃないか。
クレイは酔いながら、「ショーマ! おまえに何かあった時は次は俺が助けるからな!」って絡んできたところを、ネリーさんが「ギルド長、まずは絡むのを止めましょう。ショーマさんは行かないといけない場所があるんですよ」と言ってクレイを制止し、俺にウインクをして合図してくれる。
ありがたい、もし、クレイに捕まっていたらまたしばらく移動できなかっただろう。
クレイには悪いけど、少し席を外させてもらおう。
また、今度飲もうな、クレイ。
俺がそう思っていると、そこにゼクスがネリーさんの言葉を聞いてか、「クレイ、絡むなって言ってるだろ?」と、クレイに言って「何がだ!? 俺は感謝の言葉を口にしているだけだ!」と、もめ出して、その間にルークスが割って入って、ネリーさんと二人で宥めている。
俺も止めに入った方が良いかと思ったけど、ネリーさんは俺に向かって首を振って『大丈夫』と合図してくれたので、ネリーさんに会釈して席を移動した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あっ、ショーマさん」
「来たか」
席を立った俺は最初に少し話してから、全然話せていないセシリーの元へと来た。
セシリーのところにはカレンがいる。
どうやら、カレンとセシリーは立場が似ているからか話が合うようで、話に華を咲かせているようだ。
「おう。てか、だいぶ飲んでるな」
二人の前には空になったグラスが並んでいる。
話が盛り上がって酒のペースも上がっているようだ。
普通なら、この高級店ではすぐにグラスを下げてくれるが、ここにきたメンバーがほぼ全員、高級店に似つかわしくないペースで飲んでいる為に、片付けが追い付いていないようだ。
セバスとマスターが、急いでいる感じを見せないようにして手早く片づけているけど、こっちの数が多すぎてさばき切れていない。
まぁ、俺にとってはセバスに他の人とのやりとりをジロジロと見られないし、都合がいいって言えばいいけど。
「まぁな、話が弾んでお酒も進んでしまったようだ」
「そうなんですよ~。カレンさんとはいろいろ話が合って盛り上がっていたんです」
そうか、二人とも気が合ったみたいで何より……なのか?
カレンがセシリーと関わるといろいろ俺にとってはまずい気が……。
「ショーマ、そんなところに突っ立てないで座れ」
そう言ってカレンは横に移動し、カレンとセシリーの間の席を勧めてきた。
なんだろう……これはあまり良くない展開な気が……。
そうは思いながらも、俺は勧められるがままに、二人の間へと腰を落とした。
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