さらに続く頭痛の種
「はぁ~……何か無駄に疲れた……」
セイクピア王国に帰ってきた俺は戻って来た路地でセバスと別れ、夕暮れで暗くなってきている中、一人溜息をつく。
セバスはというと、今日までにいろいろと調べていたようで、いきなり現れた人物が一緒にいるといろいろまずいと思います、一人で生活出来るように頑張って近くで見守ります、私も独自で調べて何か分かればお伝えします、と言って去って行った。
少し心配だけど、セバスの能力ならどんな仕事でも大丈夫だろう。
頭も良いし。
そういう事で、俺は今一人になって、肩の力を抜いた。
それにしても、魔族の疑惑がほぼ晴れたけど、余計に分からなくなってきたな。
魔法陣とか使えて、なおかつ、俺と同じくらいの魔力を持つ者……Sランク冒険者のカイトやアース、カレンも魔法陣は知らないみたいだし、もし演技をしていたとしても、活動の拠点がこのセイクピアで毎日誰かの目に触れているだろうしな。
そうなると、カレンはつい最近までの行動は全然分からないけど……あの性格からすればない気もする。
あとは……ルークスか。
でも、確かに得体の知れない奴だけど、人間だし、魔物を召喚する魔法陣なんて知らないだろうし魔力も……となると、いったい誰だ……?
「ショーマ君! やっと見つけた!」
「うわっ!?」
考えに没頭していたところに急に声をかけられて俺は無様にも驚きの声を上げる。
びっくした……でも、この声って……。
「何か用か? アース?」
振り返りながら言うと、案の定アースと隣にはお決まりのミリアがいた。
「そうだよ! 探してたんだ!」
なんだろう、アースに探してたと言われると厄介ごとしかない気がするのは。
俺がそんな事を思っているとアースとミリアは俺の事を上から下、下から上へと見てくる。
なんなんだ!?
人の事をジロジロと見るなんて!?
「な、何なんだ?」
「いや、そんな恰好してどうしたのかなって思って」
アースがそう言うと、その隣でミリアが『うんうん』と首を縦に振っている。
いや、恰好って言われても……あ~~~~っ!! しまった!!
魔族の件で一件落着したから安心して着替えせずに戻ってきてしまった!!
「……これは闇夜の黒騎士としてやらなければいけない事があったからだ」
俺はアースの思わぬ先制攻撃に努めて冷静を装い、闇夜の黒騎士となって応戦する。
「あぁ、それでその恰好で人気のない道にいるんだね。でも、グラムは持ってないみたいだけど?」
「……武器は必要ない仕事だ」
くっ、こいつはなんでこうもいらないところばかり目ざといんだ!
「そっか、お疲れ様。でも、いつもと衣装ちょっと違うね、それも恰好良いよ」
そう言って微笑むアース。
こいつは本当に……そう言ったちょっとした変化に気付くのはミリアに対してだけにしろ!
俺に対して気付いて心を抉るな!!
「わ、わたしも恰好良いと思います!!」
俺が闇夜の黒騎士の姿だから、怯えていたのか、今まで言葉を発しなかったミリアがどうでもいいところだけ話に入ってくる。
……もう二人揃ってメンタルに攻撃をしかけないでくれ。
「……それで何の用だ?」
これ以上、言い訳したり説明したりで、この話を続けると自分がダメージ受けるだけだと思った俺は、渋々アースが言っていた俺を探していた理由というのを聞いてみる事にする。
もしかしてこいつら、こういう作戦で俺に話を聞くようにもっていっているんじゃないよな……?
「あっ、そうだったね」
そう言って爽やかイケメンスマイルを繰り出すアース。
この笑顔に女性はおろか男性でも見惚れるものがあるかもしれない。
でも、俺にはこの笑顔は悪魔の微笑みにしか見えない。
それは、アースがこういった笑顔で言ってくる時は、俺にとってよくない事ばかりだからだ。
すると、アースは「ショーマ君はそのままの闇夜の黒騎士でいるの? できればショーマ君に戻って欲しいんだけど」と、俺の心を抉る事を平気で言ってきたけど、俺はそれに負けず、「我は闇夜の黒騎士だ。ショーマとは違う」と、自分でショーマに用があると言ってきたアースに話の続きを促したのにそれを否定した。
無茶苦茶だと分かっているが、これは俺の意地だ。
すると、アースは「そっか、仕方ないよね」と言って話し出した。
「実はね、この前の依頼で大変な目にあったでしょ? 僕は……ううん、僕だけじゃない、みんな意識を失ったショーマ君を心配してたんだ。それで、ショーマ君が意識を取り戻したって聞いてね、みんなでショーマ君の快気祝いとお疲れ様会をしようと思ってみんなに声をかけたんだ。そしたらみんな快くオッケーしてくれてね、今度みんなで飲み会開くから、主役のショーマ君を探してたんだよ!」




