まともな奴かと思ったら厄介な奴だった
今日も三話は更新します!
「えっ!?」
俺は突然のSランク冒険者の出現に驚く。
いや、確かにさっきの動きはただ者ではなかったけど……。
「えっ? フレア帝国のSランク冒険者って事は皇女のカレンさんですか?」
すると、セシリーがさらに衝撃に事実を告げる。
Sランク冒険者で皇女だと……?
なんだ、その反則的な肩書は!?
「そうだ。あまり皇女という肩書は好きではないがな」
「でも私、尊敬してます。同じ女性でありながら先頭に立って国民の為に戦うあなたに」
そう言ってセシリーはカレンの元に寄り、手を取って握手する。
「同じ女性にそう言ってもらえるのは嬉しいな」
カレンも微笑んで握手を交わす。
そこには俺を押しのけて微笑ましい光景がある。
いや、別にいいけど。
それにしてもまさかフレア帝国のSランク冒険者がこの森に来ているとはな。
「それでフレア帝国のSランク冒険者がなんでここに?」
決して自分の存在を知らしめる為ではない。
ここはフレア帝国とセイクピア王国の交易ルートに入っているとは言え、セイクピア王国内だ。
わざわざフレア帝国のSランク冒険者が来る理由はない。
「それに関しては言える事と言えない事があるがな。私はSランク冒険者としてセイクピア王国に向かう予定があったのだ。その通り道でこの森の異変に気付いてな。Sランク冒険者としてもフレア帝国の皇女としてもここを通る民の事を思うと放っておけなかったのだ」
……なんだこいつ!?
めちゃめちゃ善人じゃん!
下手すると……いや下手しなくてもアースより勇者っぽい感じだぞ!?
もしかしたら、初めてまともなSランク冒険者じゃないか!?
「そうですか。ありがとうございます」
「いや、私は人々が安心して幸せに暮らせる世界にしたい。それは我が国の意志でもある」
帝国ってあんまり良いイメージなかったけど、これはイメージ変わるな。
普通こういう異世界っていうと帝国とかはいつか裏切って他国攻めたりしそうなのに。
この世界は本当に人間間はうまく行ってるんだな。
俺がそんな風に思っていると、カレンがセシリーを見て口を開く。
「それにおまえもそうやって変装して偽名使ってまで冒険者になって民の為にしているんだろ? 一緒じゃないか」
えっ!? なんでバレてるの!?
「……なんの事でしょう?」
「誰にも言わないから恍けなくて良い。国同士の交流で何度か目にしたからな。それに自分で言っただろ? Sランク冒険者という事は皇女のカレンかって。確かにそうだが、私はSランク冒険者のカレンか戦姫カレンと呼ばれる事が多いし噂もそうだ。皇女カレンって言うのは皇族か貴族、それか他国の王族や貴族だけだ。一介の冒険者ではそう呼ばない。その男も知っているのだろ? じゃなければ男女二人で行動なんてしないだろうし」
えー!! なんだこいつ!?
観察力とか洞察力とかも凄いじゃないか!?
いや、全くもってまともな奴だけど少しこわいわ!!
「……さすがですね。そうです、私はセシリー=セイクピアです。そして、カレンさんの言う通り、ショーマさんは知っています。でも、他にここに来ているみなさんは知らないので――」
いや、カイトは気づいているけど。
そう言えばあいつ、口滑らせないよな?
心配だ。
でも、今まで大丈夫だったし大丈夫だろう。
「分かっている。誰にも言わないさ。それにしても他にもここに来てくれている者がいるのか助かる。想像以上に魔物が多いからな」
「そんなに多いんですか?」
「あぁ、五分も歩けば魔物に出くわす。異常だ」
そうか、俺達だけでなくカレンも……って事は他もそうなのだろう。
これだけ急激に魔物が増えるってのは異常だ。
やはり魔族が……?
「それにしても、セシ、いや、シシリーと呼ぼうか。ショーマとどういう関係だ?」
「「なっ!?」」
俺とセシリーの声がシンクロする。
こいつ急に何を言い出すんだ!?
「やっぱりそういう――」
「「そう言う関係じゃ――」」
またしても俺とセシリーの声はシンクロし顔を見合わせる。
「はは!! 息ぴったりだな! ……っと、今はそんな事話してる場合じゃないな」
カレンがそう言うと周りにはまた魔物が寄ってきた。
それを見て俺もセシリーも迎撃する態勢を取る。
俺はそうしながらも、また厄介な奴が出てきたと心で思うのであった。




