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野営で青春した

本日二話目です!

「「「「「いただきまーす!」」」」」


 俺達は野営の準備を終え、食事を摂る事にした。

 今日のご飯は肉を焼いたものに、パンにサラダ、スープだ。


 なぜ、こんな豪華な食事かというと、アースが「野営でもちゃんとした食事は摂らないとね! 特に今回はそんなに遠くないところだから用意したんだ!」と言って馬車に積んである荷物から氷で冷やされた食材を出したのだ。

 氷が解けたらって思ったけど、そこはミリアの魔法で作るらしい。


 こいつらは普段抜けているのに、こういうところは要領が良いと言うか何と言うか……本当、謎だ。

 ついでに言うと、今回料理を作ったのはミリアという事で、その味がどっちの方に作用するか内心どきどきしている。


「んっ!? うまい!!」


 焼いた肉に噛り付くと、それはこの世界でありきたりな塩の味付けではなくて、日本で食べたようなタレのような味が口の中に広がる。



「本当、美味しい!!」


 横ではセシリーも目を見開いて感動している。


「えへへ、ミリア特製のタレなんだよ」



 ミリアがこのタレを……本当にこいつらのキャラは分からん。



「美味しいでしょ? ミリアは料理得意なんだ。彼女が料理得意なんて僕は幸せ者だよ」


「そ、そんな幸せなんてアース君」



 おいこら、おまえら目の前でいちゃつくな。



「えっ!? ミリアちゃんとアース君って付き合ってるんですか!?」


「そうだよ。知らなかった?」


「知らなかったです! そうなのですね!」



 アースとミリアが付き合っている事を知ったセシリーがその話に食いつき、そこから食事を摂りながら二人の甘い恋バナを聞かされる事になった。


 それにしても、こうしてみると、今日のセシリーはいつものような王女という肩書をを外し、一人の女の子にようにはしゃいでいる。

 いつもは自分を抑えているセシリーだから、こういった素の自分を出せる場が出来た事はアースとミリアに感謝した方がいいのかもな、と思いながら俺は食事を摂った。


 ちなみにカイトは「確かにうまい。……いや、しかし、ネリーの料理の方が……」と呟いていたので放っておく事にした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「はぁ~……いろいろあったな」


 食事も終わり、一通り片づけも終わった俺は今、一人寝そべりながら夜空を見上げている。

 クロはもう寝たし、グラムはテントの中に置いて一人黄昏ている。


 決して一人恰好をつけている訳ではない。

 この世界に来てから今までいろいろあり過ぎて、こうやってゆっくり物思いにふける事なんてなかったしな。

 こうやって見る空は、日本にいた時となんら変わらない。


 正確に言えば星座とかは違うんだろうけど、俺はそんな事詳しくないし、日本にいた時と一緒に思える。

 でも、こうやっていると日本と同じようだけど、異世界に来たんだよな、俺。

 今までいろんな事があり過ぎてバタバタしてたけど、本当に不思議なものだ。


 日本にいた時の俺は普通の高校生だったのに、今の俺は魔王でありながら人として生活している。

 夢のようだけど夢じゃない……本当、不思議だ。



「本当、何があるか分からないな」


「何がです?」



 俺がひとり呟くと言葉が返ってきて、ビックリして声のする方を向くとセシリーがいた。

 しまったな、黄昏てて油断しすぎた。


 そして、セシリーは俺の隣に来て地面に腰を下ろす。


「いや、なんでもないよ。ただ、こうやってシシリーみたいな人と出会って、こんな風に一緒に依頼受けたりするなんてなって思っただけだ」


 俺は前世の事を抜きにして本当の事を話す。

 最初こそ一目ぼれで好きになって、努力するって決めたけど、まさか本当にこうやって一緒に行動できるなんてな。


「確かにそうですね。私もまさかこうやって街から出る事が増えて、いろんな人と過ごす時間が増えるなんて思ってもみませんでした」


 そう言ってセシリーも空を見上げる。



「私はショーマさんと出会えて感謝しています。こうやっていろいろな経験をさせてもらえて」


「それは違う。セシリーが頑張ってきたからだ」



 セシリーは、俺の言葉を聞いてゆっくりと首を横に振る。



「私一人では無理でした。私は城からは出られても街から出られなかった……怖かったんです。いろいろ知りたいと思って鍛えたはずなのに、実際に外に出る勇気がなかった。それに私は王女。シシリーとして街に出ても、誰かと一緒に行動したらバレるんじゃないかと思うと誰にも頼る事も出来ませんでした。でも、ショーマさんと出会って、ショーマさんは私が王女だと知ってても普通に接してくれました。それに私のわがままを聞いてくれて街から出るきっかけをくれました。私はショーマさんに感謝してもしきれません」


「セシリー……」


「あっ、でも私のわがままな願いを聞いてくれて無茶してくれた時は焦りましたけど」


「うっ、それは……」


「冗談ですよ。本当感謝してます。今回の依頼、頑張りましょうね」



 そう言ってセシリーはニコリと笑いかけてくる。

 なんか少し空気を誤魔化された気がするけど……。



「そうだな、魔物なんて一掃してやろう!」


「ふふ、頼りにしてますよ」 



 そう言って俺とセシリーは笑い合う。



「星、綺麗ですね」


「あぁ、綺麗だな」



 焦る事はない、カイトとかアースとかと比べる必要なんてない。


 俺は最初に決めた。

 セシリーにふさしい男、Sランク冒険者になると。


 だから、今はこうやってセシリーと二人一緒に星を見上げられるだけでいい。

 いずれ、セシリーにふさわしい男になったら、その時はちゃんとこの想いを告げよう。


 そうして俺とセシリーはしばしの間、星を見上げていた。


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