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任務完了と新たな疑問

「よっ、クレイ土産だ」


 俺はそう言って、ギルドのカウンターで肘を突きながらボーっとしているクレイの前に、水色の半透明の液体が入った小瓶を置く。


 あれからの道中は、特に問題なく街まで帰って来られた。

 それに、帰りは少し急ぐようにして帰ってきたので、十日で帰ってくる事ができた。


 結構過酷な行程に御者をしていたゼクスは不満を言う場面があったが、道中の街で美味しいっていう酒のあてを仕入れ夜に与えると「しょうがない」と渋い声でいうのとは裏腹に、にやけた顔でエルフからもらった酒と一緒に味わい、機嫌を直した。


 こうした、エサ作戦で帰りは早く帰ってくることができ、ちょうど着いた時間が昼という事もあって、一目散にギルドへとやってきた。


 ちなみに、セシリーとゼクスは城に帰っている。

 いろいろ報告しないといけない事もあるし、クレイもセシリー達が一緒に行っていたと知ったら気を使うだろう。

 だから、ギルドへは俺一人で来ている。


 それにしてもクレイの奴、大丈夫か?


 クレイは生気のない目で、小瓶と俺の顔を交互に見ながらやがて急に立ち上がった。


「ショーマ!? えっ!? じゃあこれは!?」


 そして、小瓶と俺を見て正気に戻ったのか、目に生気が戻る。

 でも、まだ小瓶と俺を交互に見ているし混乱しているみたいだ。


 大丈夫だろうか……?

 でも、まぁ驚くのも無理ないか。


「そう、言ってた土産だ。運よく手に入ってな。あっ、土産だから礼はいらないぞ」


 クレイは小瓶を抱えながら「すまない……すまない……」と言っている。

 あのクレイがここまで追い込まれるなんてな。

 子供が出来るとそんな感じなのだろうか?

 俺はまだ親になった事ないから分からないけどいつかは……っていけないいけない、セシリーとそういう風になる為に今を頑張らないといけないんだから。


 煩悩に頭を埋め尽くされたらいけない。



「土産くらいでそんな感動すんなって。それより仕事中だろ? 俺も休暇は終わりで明日からまた働くからギルドカードくれ」


「あ、あぁ……」



 俺の言葉で仕事中だと思い出し、目にこすって涙を拭いて俺のギルドカードを取りに行き、戻って来て差し出した。


「サンキューな、クレイ。……ん? どうした?」


 ギルドカードをクレイから受け取ろうとしたけど、クレイはその手を離さない。



「……ショーマ、礼をさせてくれ」


「いや、礼なんて――」



 いらないって言おうとしたけど、クレイの目がマジだ。

 これはいらないなんて言えないな。

 言ったら勝手に何か大きな事で返そうとするかもしれない。



「そうだな、じゃあ今度酒を奢ってくれ」


「えっ……?」


「嫌か? 俺が言ってるのは安酒じゃなくて良い酒だぞ? 今回良い酒を飲み逃したし」



 エルフの酒、一度ちょっと飲んでみたかったな。

 あの時はそんな気分じゃなかったけど、どうせなら俺も土産にもらっとけばよかったな。



「それで良いのか……?」


「あぁ、その代わりうまい酒だからな!」



 俺はそう言って親指を立てる。



「……分かった! おまえがビックリする酒奢ってやる!」


「おう! 楽しみにしてるぜ!」



 そう言って俺とクレイは微笑み合う。

 男二人で微笑み合うってのはあんま絵にならないけど、たまにはこういうのも良いものだ。



「とりあえず早く娘さんにそれを……って言いたいところだけどまだ仕事中か」


「あぁ、今はみんな飯食いに出て行ってるしな」



 そうだよな、本当はすぐ行きたいだろうに……俺が代わりに受付を……ってそれは出来ないな。

 俺が家に届けるってのも考えられるけど、奥さんも娘さんも顔知らないし、向こうも見ず知らずの奴から「これ飲んだら治るから」なんて言われても胡散臭いどころか、怪しいだろうしな。


 うーん……。



「良いですよ、ギルド長。そんな顔で受付に立っていたらみなさんに迷惑がかかります。私が代わりますよ?」


「ネリーっ!?」



 振り返ると、入り口のところにはネリーさんとカイトがいた。


 えっ、カイト!?



「ネリーなんで」

「カイトなんで」



 俺とクレイの言葉がシンクロする。

 驚いた内容は違えど、俺とクレイは驚きの表情を浮かべていた。


「さっきショーマさんが街に戻ってくるのを見まして。それでカイトさんが行ってみようと言いまして」


 カイトが?

 ……あっ、もしかしたらあのバカ勇者、同じSランク冒険者だからってカイトに言ったな?

 それでカイトはネリーさんに……ってなぜネリーさんと一緒に!?



「いや、でもおまえまだ休憩中だろう?」


「良いですよ。でも、その代わりに今度少し早く帰れるようにしてもらえれば」



 そう言ってなぜかネリーさんはカイトの方を見る。

 すると、なぜかカイトも頷く。


 おいおい、どういう事だ!?


「それはかまわねぇが……すまない、頼む!!」


 俺の内心での疑問はよそに、目の前の展開は進み、クレイはエリクシールを持って走り去り、ネリーさんはゆっくりと歩きながら受付へ回った。


 そして、フロアには俺とカイトが残される。


「……カイト、場所変えて少し話そうか?」


今年の更新はこれが最後になります。

今年一年、ありがとうございましたm(__)m


今日は執筆はかどったので、一話ストックあるので、元旦の11時(1並び)に予約投降してます。

よければ読んでくださいm(__)m

では、みなさん良いお年を!

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