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魔剣グラム、第二段階解放

 魔気をグラムに送ると、前と同じように自分の体内からグラムに吸われていくような感覚になる。

 そして、前回で少し要領を得た俺は送る魔気の量を増やしながら、グラムと意識を同調させていく。


 すると、全身の中の血液が全身をめぐるような感覚が、俺の中から外へと向かいグラムと循環してるような感じになり、どんどんと魔気を吸われていく。


「くっ……」


 その量は前より多く、グラムが第二段階の能力を解放するために魔気を吸収しているんだろうけど、これは結構きつい。

 高熱が出て自分の意思とは関係なく、身体がフラフラするようなそんな感覚だ。



『……グラムどれくらいだ?』


『魔気充填率50パーセント……シンクロ率48パーセント……まだもう少しだ!』



 くっ、これでもまだなのか……くそ、でもへこたれてたまるか!


「うぉぉぉおおおおお!!!!」


 俺は気合を入れ一気に魔気を送る。


『おぉ!! すげぇぞショーマ! ……魔気充填率65パーセント……シンクロ率68パーセント……よし、いけるぜ! ショーマ!』


 グラムがそう言うと、以前のように魔気の巡るスピードが速くなり一気に魔気がグラムへと流れ、そして落ち着いた。


「これは……」


 俺は目に映る光景に驚愕した。



『へへ、やっぱショーマの魔気はサイコ―だ!!』


『いやいや、これいったどうなってるんだ?』



 手にはなぜか二本の刀身が黒い剣がある。



『これが能力の第二段階解放ってやつだ!』


『それは分かるけど……グラム、おまえ半分に割れているのか?』


『アホか! 両方俺だけど割れてる訳じゃねぇ! うまくは言えないが両方とも俺は俺だ!』



 いや、アホかって。

 ちょっと気になったから聞いただけなのに。

 それに、グラムの話を聞いても全然分からないじゃないか。


 ……まぁ、この件に関しては深く考えない方がいいな。


 両方グラムで二本になったと……ん?

 二本? そう言う事か!

 二本で攻撃する事で単純に攻撃スピードは二倍になるって事か。



『さぁ、ゆっくりしてる暇はねぇぞ! 早くしないと嬢ちゃんたちが帰って来てしまうぞ!』


『あぁ、分かってる!』



 いきなり二刀流が出来るかという不安があったけど、一本では再生能力上回るのには時間がかかるかもしれない。

 だから、やったことがなくてもやるしかない。


「行くぞ!」


 クロの母親にそう言うと、二本のグラムを持つ手に力を入れる。

 そして大きく息を吸いながら目を閉じ、そして目を見開くと同時に動き出した。


「うぉぉおおおおおおお!!!!」


 俺はただ一心不乱に両手に持つ剣を振るう。

 二刀流なんてのは初めてだけど、グラムと意識の同調をしているせいか、違和感なく両方の剣を振るう事ができている。


 剣がクロの母親を捉えるたびに何とも言えない気持ちになるが、それでも手を止めずに一撃二撃三撃と連続で剣を振るう。

 今できる事は剣を振るい、出来るだけ苦しまないように眠らせてあげる事だけだ。


「うぉぉぉおおおおお!!」


 俺の振るう剣によってクロの母親の血肉が周囲に飛び散り、嫌な匂いを発する。

 しかし、そんな事は気にしていられない。


 俺の振るう剣によって、確かに身は切り刻まれているが、切ったそばからすぐに再生が始まっている。

 それは頭を切り落とそうが心臓部を切ろうが、だ。

 手を止めたらまた苦しい思いをさせてしまう、そう思って俺は剣を振るい続ける。


 俺の一心不乱の攻撃が再生能力を上回り、徐々にクロの母親の姿が小さくなり、原型を留めなくなってくる。


 そして……


「これで最後だ!!」


 俺はここが勝負どころだと思い、身体の悲鳴を無視して気力を振り絞ってもう一段ギアをあげて剣を振るった。



「はぁ……はぁ……」


『やったな、ショーマ』



 剣を振るい終わった俺の前にはもう再生するクロの母親の姿はなかった。


「……」


 俺はグラムに言葉を返さずにグラムとの意識のシンクロを解き、グラムを元の姿に戻す。

 身体は疲労困憊で休みたい気分だが、俺は話さないといけない相手がいる。


「……クロ、辛い思いをさせたな」


 俺はちゃんとクロに謝らないといけない。

 どういう理由であれ、こういう事態を招いたのには俺に原因があるし、結果的にクロの実の親を手にかけたのだから。


「俺のせいでこんな事に……」


 あの時は仕方なかった。

 ララの目を見えるようにする為に光明草が必要だった。


 クロの母親と戦う必要はなかったけど、あの時はあれ以外、どうする事も俺には出来なかった。

 でも、そのせいで結果的にクロは親と離れただけでなく、永遠に母親を失ったのだ。


「――っ」


 何か熱いものが俺の頬を伝う。

 どうしようもない、仕方なかった……そう思うようにしても、生まれてすぐに母親とはぐれ、会えたと思ったらこんな形になってしまったクロを思うと込み上げてくるものがあった。


 ダメだ……俺が泣いちゃだめなのに……。


「キュウ……」


 すると、クロは飛んで来て、俺の肩に止まると顔で涙を拭うように頬に擦り付けてくる。



「クロ……そうだな、おまえの育ての親である俺が泣いてたらダメだよな」


「キュウ!」


「よし、街へ帰ったらいっぱい肉食おうな!」


「キュウキュウ!」



 過去を変える事も現実を変える事もできない。

 できる事はこれから先どうしていくかって事だけだ。


 だから俺は……


『これからもクロの為に出来る限りの事をする』


 そう心に誓った。


次回更新は21日(水)か22日(木)になりますm(__)m

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