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俺の責任

「キュウ……」


『グォォォ……』



 そのまま二体のドラゴンを見守っていると、二体のドラゴンは近い距離で何やら話を続けている。


「っ!?」


 すると、突然アンデッド・ドラゴンがゆっくりと爪を上げる。

 どうしようかと迷った俺だが、そのスピードがゆっくりなのでクロでも避けられるだろうと思い、下手な刺激をするよりも様子を見る事にした。


 でも、クロは避けるそぶりを見せずにゆっくり降りてくる爪を受け入れた。

 アンデット・ドラゴンは爪でクロを捉えると、ゆっくりと爪を動かす。

 その動きはまるで、クロの頭を撫でるかのようだ。


 いったい何が起きているんだ……?


 俺は目の前の光景が理解できずに、呆然とそれを見つめる。


 何が起きてる?

 あれじゃまるで親と子……まさか!?


 ……いや、そんな事はないはず!

 でも……。


 俺の頭に一つの可能性が浮かぶ。


 それは、『アンデッド・ドラゴンがクロの母親なんじゃないか?』って事だ。


 でも、俺はすぐさまその考えを否定する。


 だって、俺が投げ飛ばしたドラゴンはアンデッド・ドラゴンではなく、普通のドラゴンだった。

 だから、違う。


 でも、そう考える俺とは別に、俺の頭の中にもう一つの意見が出てくる。


 俺がクロの母親を投げ飛ばしてからもうだいぶ月日が流れた。

 ドラゴンならばどれだけ遠くに飛ばされてもこんなに帰ってこないという事はないだろう。

 むしろ、子供を心配してすぐに帰ってくるはずだ。


 それなのにクロの母親は帰って来なかった。

 なぜだ?

 それは、帰りたくても帰れなかったんじゃないのか……?


 そんな考えが頭の中でグルグルと回る中、俺は一度目の前の光景を見る。


「……」


 その光景はやはり、親と子と呼ぶにふさわしいものだ。


『どうなってんだ? あれじゃまるで親と子じゃねぇか』


 グラムの言葉が俺の胸に突き刺さる。

 俺も目の前の光景を見て、クロとアンデッド・ドラゴンは親と子だと感じている。

 じゃないと、今の目の前の光景が説明つかない。


 クロは親を見た事はないし、親もクロを見た事はないけど、何か感じるものがあったのだろう。

 それは親と子の絆なのかドラゴンだからなのか、どういう理由かは分からないけど、確かに今あの二体のドラゴンは心を通わせている。


 でも、それを認めたくない俺がいる……それはなぜか?


 それは、目の前のアンデッド・ドラゴンがクロの母親だったとしたら、アンデッドになってしまったのは俺の責任だからだ。

 俺がクロを育てるようになったのは、光明草を採りに行ったときに、クロの母親ドラゴンに出会い、投げ飛ばしてしまったからだ。

 

 そのせいで何があったか分からないが、クロの母親はああやってアンデッド化してしまった。


 俺はその責任を認めたくないのかもしれない……でも…………。


『……きっとあれがクロの母親なんだよ』


 でも、認めないといけない。

 きっとあれはクロの母親なんだから。

 現実から目を逸らしてはいけない。



『あぁ? なんでクロの母親がアンデッド化してるんだよ?』


『それは分からない。でも、あれはきっとクロの母親で、アンデッド化したのは俺に責任がある』


『ショーマ……』



 俺の一言でグラムは何かを察したのか、それ以上は何も言わなかった。

 そして、俺も何もせずにただただ目の前の光景を見守った。



「キュウ」


「クロ……」



 様子を見ていると、しばらくしてクロが俺の元へと戻って来た。


「キュウ!!」


 すると、クロは俺の袖口を噛んでアンデッド・ドラゴンの方へと引っ張る。

 そうか……そりゃ怒るよな、自分の母親があんな風になったんだから……母親から全部聞いて俺を連れて行こうって言うんだな。


 俺は自分のした事の罪は受けようと抵抗する事なく、アンデッド・ドラゴンの前に行った。

 そして、俺はクロに連れられアンデッド・ドラゴンの前に立つ。


「……」


 俺とクロの母親は無言で向き合う。

 クロの母親がどういった行動を取るか分からないが、何をしようとも俺はそれを受け入れようと思う。

 それくらいしか今の俺にできる事はないから。


 そうしてしばらく見つめ合っていると、クロの母親はゆっくりと爪を振り上げた。

 それを見た俺は目を瞑る。


「っ!?」


 衝撃が来るかと思ったが、その衝撃は来ず、代わりに頭をゆっくり触られている感じがする。

 これは……。


 ゆっくり目を開けると、クロの母親はクロを撫でていたように俺を頭を撫でている。



「……許してくれるのか…………?」


『グォォ……』



 自分にとって都合の良いように見ているのかもしれないけど、クロの母親の目は微笑んでくれたように見えた。

 もしかしたら、クロが今まで俺が面倒を見てきた事を話したのかもしれない。


 でも、それを聞いたからって自分がこんな風になり、クロと離ればなれになった原因である俺を……。

 俺が込み上げてくるものを我慢していると、クロの母親はゆっくりと頭を下げる。



「どうしたんだ……?」


「キュウ!」



 すると、クロが鳴いてグラムの柄をを咥える。



「まさか俺にとどめをさせって言うのか……?」


次回更新は16日(金)になると思いますm(__)m

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