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この際に聞いてみた

 俺達が街を出て二週間。

 ここまで少し急ぎながら来たけど、旅は順調だった。


 でも、元々は俺一人で行く予定だったし、全力で走ったりすればこれほど長い旅になる訳でもなく、食べ物もどっかの街に行ったらそこで食べて、進んでお腹が空けば空間魔法で戻るを繰り返して行こうとしていた。


 だから、持参の食糧なんてほとんどなく(お金に関してはちゃんと持ってきていた)、セシリーに「よく、それでエルフの森まで行こうとしましたね」と言われ、「いや、もっと街も道中にあって近いと思ってさ、アハハ……」という恰好のつかないやりとりもあった。


 とまぁ、当初の予定と違った事で長い旅へとなったが、それ以外は順調に進み、もうそろそろ世界樹へと着くはずだ。


「まさか、生きている間にエルフの森に来るとは……」


 御者をしているゼクスが呟く。


「そうですね、本来ならこの場に来られるのは年に一回の交流の時、それにエルフの森へ行くのは三ヶ国の王とその護衛のみですからね」

 

 ここまでの旅の途中でいろいろ聞いたけど、エルフとの交流は年一回で各国の王とその護衛のみが許されているようだ。

 なぜ、各国の王が行くかと言うと、エルフからもたらされる品や世界樹の葉は価値が高く、一国が独占すると争いの種になりかねないと言って、こういう形になったみたいだ。



「そうです。本来なら自分のような者が来られる場所ではないので――」


「良かったじゃねぇか、良い記念になって」


「おまえっ!? 良い記念って分かってるのか!? 下手したら今までに結ばれていたエルフとの協定がなくなるかもしれないんだぞ!? それを良い記念って!!」


「いや、何もそれを破りに行くって訳じゃねぇよ。俺達はただ観光してたら迷子になって入っちまうだけだからな」


「そんな屁理屈を……」


「良いじゃないですかゼクス。貴族の方たちもそんな屁理屈をうまくつかっているのですから」


「セシリー様まで!? ……ルークスから聞いていましたが、ここまでショーマの影響を受けているなんて……失礼ですが、それほどの仲なのですか?」


「えっ!? それほどの仲ってそんな別に……」


「ところでそのルークスの奴はどうしたんだ? 休みって言ってたけど」



 俺は話の方向が怪しくなったところで、違う方向へと話を持って行った。


 本来であれば、休みでも最初にセシリーが街を出た時みたいになんらかの対応で動くと思うけど、今回に限っては城でセシリーとゼクスが押し問答した時も、そして、この旅に出て二週間経っても一度も姿を見せない。

 あいつの能力なら一度くらい見に来れる気もする。


 まぁ、休み明けでゼクスの代わりに城の警備とかしているんだろうけど。


「あぁ、なんか急に三日程休みが欲しいって言ってな。それからは知らねぇな。ちょうど休みの最後の日におまえがいらねぇ事して、セシリー様がこうなって俺まで巻き添え喰らったって訳だ。ったくせめてもう一日遅かったら俺じゃなくてルークスの野郎だったのによ~」


 ただ単に休みが欲しいってか。

 まぁ休みの日でも休みじゃないような感じの事言ってたし、分からなくもないけどな。


 それにしてもゼクスの奴、相当ルークスに思う事があるんだな。

 ここ最近遠慮がなくなっているし。


「そうですか、ゼクスは私の事面倒だと思っているのですね。それにクレイの娘さんの命の事も」


「えっ!? いや、違います! 今のはショーマに対する愚痴で――」


 セシリーの方もここ最近は城から離れてセシリーというよりシシリーのキャラに近いのか、ゼクスに対する扱いが変わったな。


 ゼクス、ご愁傷様。


「それはそうとゼクス、ルークスってどうやってあんな偉いさんになったんだ? 普通ならあの若さではあり得ないと思うけど?」


 俺は目の前の光景に動揺することなく、この機にずっと聞いてみたかった事を聞いてみる事にした。


「えっ、あぁ、そうか。ショーマは知らなかったよな」


 ゼクスはここがチャンスとばかりにセシリーから俺に向き直り、話し始める。


 それを見て俺は目で「貸しだからな」と訴えておく。

 そして、ゼクスは俺の目を見て少し苦虫を潰したような表情をしたが話し出した。


「ルークスの奴は五年前に王都にやって来てな、そこで騎士団に入ったんだ。すると、入団するなり、騎士団の大会で優勝してな。そのままあっという間に昇進って訳だ」


 あいつならそれも可能だろう。

 あいつの実力はSランク冒険者のカイトやアースにも匹敵……というか、まだ全員の本気は見てないけど、ルークスにもまだまだ隠してる実力があるだろう。


「なるほどな。それでしばらくして団長も滅多打ちってか」


「あぁ、まぁな」


「でも、なんでそんな強い奴が無名だったんだ? それくらい強いなら噂でも流れそうだけど?」


「そうだな、普通なら流れてくるんだが、ルークスに限っては全くなくてな。というか、どこの出身かも親は誰か、身内は誰かも分かっていない」


「なっ!? それどういう事だ!?」


「何やらルークスの奴は王都に来る直前から記憶がないって言っててな。とにかく、自分の意識が戻ったら強さがあったと思ったから騎士団とかに入ってお金を稼ごうと思って来たって言ってたな」


「マジか……それでなぜ騎士団? 普通は冒険者とかじゃないのか?」


「さぁな。それは俺に聞かれても分からねぇよ」



 すべてが謎……ルークスの奴、いったい何者なんだ?



「そっか。じゃあなぜルークスは国の軍もトップなんだ? 普通はゼクスじゃないのか?」


「ぐっ……それを俺に聞くか?」


「ゼクスは酔うとダメですからね。それで強くて兵の指揮も出来る才能があったルークスをトップにってなったようですよ?」


「セシリー様!?」



 なるほど、軍のトップってのは半分はゼクスが絡んでいるって事か。

 それにしてもますますルークスの得体が知れないな。



『本当だぜ』


『グラム?』


『あの野郎の気配はなんてか得体が知れねぇ感じがしやがる』


『まぁ確かにそうだな』



「あっ、あれが世界樹かしら!?」


 ルークスの事について謎が深まったところでセシリーが口にした言葉が響き、俺達の目的地である世界樹が見えてきた。


明日は更新できないかもしれません。

出来なかったら申し訳ありません。

明後日は更新する予定です。

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