平和の終わりと敗北
国王に呼び出され城へ行き、その帰りにアース達との出会ってから一ヶ月。
俺の暮らしは平穏を取り戻していた。
あれからはセシリーとの関係も今まで通りに戻り、時々俺の依頼について来たりしている。
そして、カイトとは恋愛相談したり、依頼受けたり、飲みに行ったりと、親友と呼べるような付き合いをしている。
でも、やはり親友と言えど、耐えられない事がある。
それは絡み酒だ。
カイトは見かけによらず酒好きで、結構な頻度で飲みに誘われる。酒癖が悪いのを知っている俺はやんわりと断るが、毎度毎度は断れないので、三回に一回くらいは飲みに行くが、毎度絡み酒で絡まれている。
そして、その時の話は決まってネリーさんの事だ。
一回酒の場にネリーさんを呼んでやろうかと思う。
アースとミリアとはあれから会いたくないと思っても二日に一回くらいは街で出会い、その都度絡まれ喋っている。
そのおかげというか、そのせいというか、あの二人のキャラにもだいぶ慣れてきた。
だから、次のラウンドは負けないだろう。
それにしても、そんな頻回に会うとは勇者の再来と魔王という縁だろうか?
まぁ、そんな感じで最近は大きな問題も起きずに平和な日々を過ごしている。
そう、今日までは……。
「なに!? ネリーさんをデートに誘っただって!?」
「しー!! ショーマ声がでかい!!」
いや、おまえの声も十分大きいから。
というのは置いておいて、俺とカイトは今、カフェとでも呼ぶべきような店で二人向かい合っている。
今日は朝一で宿屋にカイトが訪れ、「相談したい事がある」と呼び出されたのだ。
相談という事でクロとグラムは留守番にして出てきたけど、まさかこんな男二人で来るような場所じゃないところに行くとは思わなかった。
……ってのはまぁ別にいいとして、平和な日々を送る俺にカイトから爆弾発言を聞き、俺の平穏な日々は終わりを告げたのだった。
まさかあのカイトがネリーさんをデートに誘う日が来るとは……。
「おまえどうやってデートに誘ったんだ!?」
「だから、そんな大きな声出すなよ! ……いや、前にネリーさんが言ってただろ? 正面からストレートに言われる方がいいって」
あぁ、あの惚れ薬の時か。
「だから、昨日の依頼達成の報告の時に言ったんだ。明日一緒にご飯でもどうですかって」
「……」
こいつ、いつの間にそんな勇気を……いや、Sランク冒険者だからその辺の度胸はあるか。
でも、それとこれとは違う気が……。
「ショーマ?」
「あぁ、悪い。あまりの展開にボーっとしてた。それでネリーさんはオッケーしてくれたって訳か」
なんだろう……この敗北感と言うかなんというか……子供が手を離れる感じ?
いや、そんな気持ちは俺には分からないけど、なんとも表しがたい気持ちだ。
「そういう事なんだ。俺はどうしたらいい?」
どうしたらいいって言われてもな~。
すでに、俺の手を離れたレベルの問題だし。
「やぁショーマ君! それにカイト君も! こんなところで男二人どうしたんだい?」
何やら聞きなれたいやな声がして振り返ると、そこには俺の天敵アースが微笑んで手を上げていた。
そして、その横にはあたふたして頭を下げているミリアの姿もある。
ちなみにアースとカイトは同じSランク冒険者同士の親交があり、元々顔見知りでアース達が街に戻ってからは二人で依頼を受けていたりもするようだ。
それにしてもこいつは本当に一言多い奴だ。
「別になんだっていいだろ」
「いや、聞いたところによると恋の相談だったようだけど。良かったら僕も相談に乗るよ」
いやいや、アホか。
おまえみたいな残念系鈍感タイプが恋なんざを語れるはずがない。
おおかた、ミリアと幼馴染でミリアはアースの事好きだけど、それに気付いていないで傷つけているってパターンとかだろ。
てか、盗み聞きするなよ。
「いや、良いって。どうせおまえだって恋した事ないだろ?」
「えっ? 失礼だな。僕だって恋もするし、命をかけても守りたいって思う彼女がいるよ。言ってなかったっけ?」
「なん……だと……?」
まさかこの恋愛に不向きなキャラのアースに彼女がいるだと!?
カイトもびっくりしたのか、呆然としている。
「そ、そんな嘘をつくなよアース。だいたいおまえが彼女といるところなんて見た事ないぞ」
俺は二日に一回くらいアースに遭遇してるけど、そんな人物見た事ない。
「えっ? いつも見てるじゃない。ほら、ミリアが彼女だよ」
そう言ってアースが振り返る先には顔を赤くして礼をしているミリアがいた。
なに!? あのアースが高難度の幼馴染の女の子を彼女にしているだって!?
俺はこの日、平和が終わったとともに対アースの第二ラウンドに敗北を期した。
明日は忙しく更新できないかもしれません。
もし更新できなかったらすいません。
※追記
現在、割烹にてこの作品の略称を募集中です。
何か良いのがあれば書き込んで頂けたら嬉しいですm(__)m
(略称は主に割烹で使う時等に使用する予定です)




