魔剣グラムの隠された能力
「魔剣だって!?」
俺は驚きのあまり思わず声を口にしてしまう。
グラムを手に入れた後で聞いた話では、この世界にはグラム以外にも魔剣と呼ばれるものは存在していると聞いた。
でも、それは剣としての能力以外に魔法としての要素が少し加わり、炎を纏ったりとかいった具合であり、月花やラグナロク、エクスカリバーと言ったものには到底及ばないと聞いている。
さらに通常の魔剣と呼ばれるものは、魔剣同士や業物の良い剣と剣を交えたり、腕の良い剣士の太刀筋によっては折れたり刃こぼれすると聞いた。
それくらいの能力だけど、本数も少なく貴重な為、高額で高ランク冒険者や貴族が所持しているくらいらしい。
そんな魔剣をオークキングが持っている。
しかも、グラムと交えても折れない魔剣を……。
『あれは普通の魔剣じゃない。俺ほどじゃないにしても、闘気を力に変える能力を持ってる魔剣だ』
なんだって!?
闘気を力に変える能力の魔剣……それってグラムの能力に近いんじゃ?
『おいグラム、それってもしかしてフィクスが作ったって事か? 魔剣っていっぱいあるもんなのか?』
『いや、分からねぇ……少なくとも俺が知っているのはフィクスが作ったってので知ってるのはラグナロクと月花だけだ』
じゃあ、あの剣はいったい……?
「っと、その前にこいつを倒さないとな」
オークキングが俺達が考えるのをまってくれるはずもなく、再度俺達に詰め寄り剣を振るう。
俺はそれを躱して距離を取った。
さて、あの剣が得体の知れないものである以上、あまり触れない方がいいな。
よし、魔法で――
『ショーマ、いい機会だ。試したい事がある』
俺が魔法でオークキングを倒そうと思っていると、グラムが声をかけてきた。
『どうしたんだグラム?』
『実は俺の能力にはもう一段階上のものがある』
『一段階上?』
俺はグラムと脳内で会話しながら、オークキングの攻撃を躱し続ける。
『あぁ、そうだ。俺には契約者との意識を同調させる事で俺の性能を引き出す力がある』
意識を同調?
能力を引き出す?
『それってつまりどういう事なんだ?』
『俺とショーマの意識のシンクロを高める事で俺に隠された力を発揮できる』
いや、聞いても良く分からん。
『……それって危険はないのか?』
『あぁ、シンクロ率が高くなる事で魔気の消費が激しくなるが、ショーマなら大丈夫だろう』
『その根拠は?』
『勘』
こいつ……。
まぁ魔気消費くらいなら問題ないか。
今までに魔気を使ってて特段どうってことはなかったし。
『まぁいいけど……それで、なんで急に言い出したんだ?』
『この俺がボンクラの魔剣ごときに手を焼くなんて癪だしな! ぜってぇたたき折ってやる』
『……』
人が攻撃を躱しながら話を聞いてやったと思ったらこいつマジでこんな理由で……。
本来なら怒るところだけど、グラムの隠された能力ってのも気になるしここは穏便にいくか。
これはいつか返してやる。
『ショーマいくぞ!』
こいつ本当に覚えてろよ。
『分かった』
俺はそう返事すると、オークキングの攻撃を躱した隙にオークキングを押し飛ばし距離を取った。
そして、俺はグラムを前に構える。
『それでどうしたらいいんだ?』
『魔気を送りながらショーマと俺の間に流れる魔気の流れを感じろ!』
魔気を感じる?
要領が分からないけど、とりあえずやってみるか。
俺は魔気をグラムに送りながら自分の体内からグラムに吸われていくような魔気の感覚をさぐってみる。
なんだろう?
風呂に長湯してのぼせた時とか走った後に鼓動が速くなって身体の中の血液が全身をめぐるような感覚が、俺の中から外へと向かいグラムと循環してるような……。
「くっ……」
今まで魔気を使って疲れを感じた事はないけど、今は昔マラソンを走っている時にだんだんと疲れていくようなそんな感じがする。
『……グラムどうだ?』
『魔気充填率30パーセント……シンクロ率30パーセント……よし、いくぜ! ショーマ!』
グラムがそう言うと、魔気の巡るスピードが速くなり一気に魔気がグラムへと流れ、そして落ち着いた。
「これは……」
「ブモッ!?」
俺は吹き飛ばされた後、警戒していたオークキングと同時に声を上げる。
そして、俺とオークキングの視線の先には大剣へと変形したグラムがあった。
『やっぱりショーマの魔気はサイコ―だな!』
なんだこれ……変形する剣とかカッコよすぎる!!
『グラム、おまえすげぇな!』
『なんだ急に? でも、あたりまえだろっ! なんたって魔剣グラム様だしな!』
グラム様ってのはともかく、変形するってのは最高だ。
厨二精神のモロど真ん中だ!
『よし、いくぞグラム!』
『あぁ! ここからは俺達に時間だ!』
そうして俺は変形したグラムを手にオークキングへと駆けだした。




