リリ、ララ救出戦!
「クロ!!」
突然のクロの行動に俺は叫ぶ。
いくらドラゴンとは言え、オークの集団に囲まれたらただではすまない。
でも、クロがあんな行動するからには理由があるはず。
俺はクロが急降下していくのを見て、すぐさま駆け出した。
それこそ、久しぶりに魔気を纏っている。
『おぉ! 本気を出してねぇのに、これだけの魔気を纏えるとは、やはりただ者じゃねぇな!』
俺はグラムの声を無視して進む。
今はそれどころじゃない。
本当は本気を出したいところだけど、本気を出したら自分の体も含め、リリやララにも影響がありそうだから使えない。
それでも、俺は普通なら追いつかない距離のところをクロの降下速度を超えて近づく。
すると、俺の目はリリとララを捉える。
「そういう事か!!」
クロの急降下していく先には、オークに囲まれたリリとララがいる。
それを見た瞬間、俺は魔法を発動させた。
「ダーク・ミラージュ!」
俺は、クロの鳴き声によってクロに目を向けているオークの向かって闇魔法を唱えた。
俺が魔法を唱えると、闇に覆われ術者以外は視界を奪われる。
「ブモォッ!?」
「ブモブモォッ!?」
俺の魔法によって、突如視界を奪われたオークは戸惑ったようで声を上げ狼狽える。
俺はその隙にリリとララの前に立ちはだかる。
「我、闇夜の黒騎士の加護を受ける者に手を出すとは許さん!」
俺の声で、この状況がこの声を出している奴の仕業だと思ったオークは、俺の方へと無作為に拳や剣を振りかざしてくる。
しかし、俺はその前にリリとララを抱えその場から離れた。
「キュウ!!」
すると、急降下の途中で止まっていたクロは、この闇の中でもさすがドラゴンと言うべきか、目が利くようでオークに向かって口から炎を吐き出す。
「ブモッ!?」
「ブモォォォオオオ!!」
俺の声に向かって攻撃を仕掛け集まっていたオークは、突然の反撃に混乱し、暴れる中でお互いに攻撃を加えたりしてさらに混乱を深める。
「ブモォォォオオオオオ!!」
そんな中、一匹のオークが叫びながら手にした大剣を振るうと闇が切り裂かれた。
「……やるな」
このダーク・ミラージュはある程度の強さを持つ者には効果が薄く、また闘気や反対属性の光魔法に対して破られる。
今の様子ではオークだし光魔法を使った訳ではなさそうだし、闘気の類のもので魔法を破ったのだろう。
「さすが、オークの王を名乗るだけあるか」
「ブモォォオオオオオ!!」
俺の魔法を破ったのは一際大きなオーク、こいつがオークキングだろう。
俺の魔法が破られた事で、オーク達も落ち着いたようで俺達を囲む。
さらに、騒ぎを聞きつけたオークが集まってきた。
「闇夜の黒騎士さん……」
「大丈夫だ。我に任せろ」
俺は怖がるリリとララを後ろに回しながら、声をかける。
「ブモォォオオオオオ!!!!」
「「「ブモォォォオオオ!!」」」
そして、オークキングが吠えると他のオークはそれに同調し吠え、俺に向かって来た。
『行くぜショーマ!!』
『あぁ!!』
俺はグラムに魔気を流すと同時に、空いている左手でリリとララを抱え跳躍する。
「二人とも目を瞑れ!!」
俺は飛びながら二人にそう叫ぶ。
二人は素直に言う事を聞いて目を瞑った。
俺は闇夜の黒騎士になる時は、声を意識して低く喋っているので、どうやらバレていないみたいだ。
それを見た俺は上空から魔法を放つ。
「ダーク・アロー!!」
魔法を発動すると、無数の漆黒の矢が次々へとオークを襲う。
「ブモッ!?」
俺の放った高速の漆黒の矢は、オークが何が起こったか分からないまま命を奪ったりダメージを与える。
「ブモォォォオオオ!」
「安らかに眠れ」
俺は着地するとリリとララを抱えたまま、ダメージを受けても死なずに生き残ったオークに対して魔気を送ったグラムで切り捨てていく。
『いいぜいいぜ、ショーマ!!』
いつもの依頼の時よりグラムに流す魔気を増やすと、いつもよりも切れ味が増し筋肉質なオーク相手でもすんなりと斬ることが出来た。
『一気に抜けるぞ!』
『あぁ! どんどん魔気を送ってこい!!』
俺はそのまま駆けながらオークを切り捨てオークの集団を抜けると、魔道具でクロを呼ぶ。
そしてオークのいない場所へとリリとララを下ろす。
クロはやってくると俺の目を見て言いたい事が分かったのか、リリとララの前で飛びながら周囲を警戒する。
「二人ともここで待ってろ」
「で、でも……」
「我は大丈夫だ。それに二人の事は我が友、ショーマが二人を助ける為に連れて行ってくれと言ったクロが守ってくれる」
俺は仮面越しに微笑みながら言うと、それが声にも表れたのか二人は黙って頷いてくれた。
『はは! ここでも演技か?』
『今の俺は闇夜の黒騎士だ。ショーマと思われてはいけない』
『俺には演技しなくてもいいだろ?』
『……いくぞ!』
『ったく、あいよ!!』
俺とグラムはそんなやりとりをして、踵を返し再度オークの集団へと向かって行った。




