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名刀『月花』

「名刀『月花』……俺の愛刀だ」


 名刀月花……それメッチャかっこいい!!

 俺が刀の名前に感動していると、カイトは月花を手にゴーレムへと向かう。

 ゴーレムは近づくカイトに向かって、俺の時みたいに拳を繰り出した。


「許せ」


 カイトがそう呟き、月花を振るうと、ゴーレムの拳が豆腐を斬るようにスルリと斬り落ちる。


「すげぇ……」


 あのクソ固いゴーレムを豆腐のように斬るなんて……。

 俺が目の前の光景に感動している間に、カイトは月花を振るい、ゴーレムを倒してしまった。


「すげぇな、カイト!」


 俺はゴーレムを倒したカイトに駆け寄る。



「まぁこれくらい当然だ」


「いや、マジすげぇ!」



 まるで、斬〇剣みたいだ!



「いや、それほどでも……」と言って少し照れているカイトに向かって、俺は聞いてみる事にした。


「なぁなぁ! その月花って奴、コンニャクとか切れなかったりするのか?」


「コンニャク……? コンニャクは知らないが、この月花は人間は切れないようになっている。月花は聖なる力を宿していて、人間以外のものなら切れるが人間は切れないという風になっている。こういう風にな」



 そう言ってカイトは自分の腕に刀身を振り下ろすが、刀身が腕に当たって跳ね返っている。



「マジか……」


「まぁ、人は切れないが俺には支障がないしな。それに、万が一、人を相手する時があっても、人くらいなら鞘の状態でもなんとでもなる」



 そう言ってカイトは月花を鞘に戻した。


 まぁカイトの実力なら人を斬れなくても問題ないか。

 鞘に入った状態でも魔物を切ってたくらいだし。


 でも、まさか人が切れない刀があるとは……これも異世界だからか?

 それにしても月花か~かっこいいな。

 俺もあんなかっこいい剣が欲しいな。


 てか、今思ったけど、人は切れないって言ってたけど魔族とかは切れるって事だよな?

 もし今、試しに俺を斬られていたらやばかったんじゃね!?


 実は、結構ヤバかったという状況だったのに気付いた俺は額から冷や汗を流す。



「ん? どうしたショーマ?」


「いや、さっきのカイトの戦いに興奮してさ。あはは! ダカラ、ナンデモナイヨ?」



 俺はそう言いながら、後ろの壁へと後退する。


「イテッ!」


 後ろが壁だと思っていたら、そこに何もなくて俺はこけた。


「イテテッ、あれ? なんで前に壁があるんだ?」


 後ろにあるはずだった壁が、なぜだか俺の目の前にある。

 どういう事だ?



「ショーマ!!」


「うわっ!!」



 目の前の壁から急にカイトが現れた。



「大丈夫か?」


「大丈夫だけど大丈夫じゃねぇよ!」



 おもいっきり驚いたっての!!



「まぁいいけど。それよりこれは……?」


「あぁ、たぶん何かの結界でカモフラージュしてあったんだろうな」



 カイトはそう言うと俺の背後に視線を送る。

 それに沿って俺も後ろを見ると、地下へと下りて行く階段が見えた。



「まだ続きがあるのか……」


「そうみたいだな。それにまだ嫌な気配も消えてない」



 そう言えばゴーレムの出現と月花の事で気を取られていたけど、まだ魔気は消えてない。

 むしろ、この奥から溢れてきているようだ。



「ショーマ、おまえはここで――」


「いや、大丈夫だ」


「おい、ショーマ!」



 俺はカイトの制止を振り切って先へと進む。

 さっきのゴーレムには不覚を取ったけど、魔気は俺の得意分野だ。

 遅れを取ることはない。


 それに、この魔気を発するやつが人間や魔族に害を及ぼすなら、両種族のかけはしになろうとしている魔王として確認しておかないといけない。


「ほら、行くぞ。俺を守ってくれるんだろ、相棒?」

 

 俺がそう言うとカイトは「ったく、無茶する相棒を持ったもんだ」と言いながらも先に進む事にしてくれた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 俺とカイトが見つけた隠し階段は今までと違い、長く続いている。

 そして、途中からは土を削って段になっているだけという階段になった。



「どうやら着いたみたいだな」


「そのようだな」


 下り始める事二十分程。

 ついに階段の終わりが見えた。


 これだけ降りると酸素があるのかとも思ったけど、どこからか少し風が入っているのを感じるので大丈夫のようだ。

 そして、俺達は階段を降りきり、その先を見る。



「あれは……」


「なんでこんなところに……?」



 俺達が見つめる先には、刀身が黒く、地面に刺さっている剣があった。


「おい、ちょっと待てショーマ!! 何をする!?」


 俺は何となく危ない気がしながらも、引き寄せられるように地面に刺さっている剣へと向かい、そして、その剣を地面から抜いた。


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