良い事をしたと思ったらビックリしました
ララはリリに手を引かれ、下を見たまま顔を上げずに佇んでいる。
その姿には他の子達と同じような活気は見られない。
おそらく目が見えなくなった事で絶望したのかもしれない。
「マリアさん」
「はい」
俺の言葉でマリアさんは察してくれたようだ。
「ララ、みんなであなたの目が治るようにお薬を買いました。これで見えるようになりますよ」
マリアさんがそう言うと、ララは驚いた顔をしながら顔を上げる。
「えっ……ララまた見えるようになる……の……?」
「えぇ、そうですよ」
マリアさんはニッコリとしてララに微笑む。
……なんだか俺、泣きそうになってきた。
マリアさんはそう言うとララの顔を押さえ、目に滴を入れた。
あれは、俺が子供たちと遊ぶ前にマリアさんに渡した光明草で作った薬だ。
俺が子供達とあそんでいる間に、マリアさんが作ったのだ。
作ると言っても沸かしたお湯に光明草をすり潰して入れてひと煮立ちしたら完成らしい。
そして、俺が遊んでいる間に冷ましていたのだ。
だから、俺がやっていた事は無駄じゃない。
目に滴を入れられたララはビックリしたようだけど、マリアさんが「ララ、目を開けてください」というと恐る恐る目を開けた。
「……見える……見えるよ、先生!!」
さっきまで元気がなかったのが嘘のようにララは目に光を取り戻して元気になった。
「ララ良かったね!」
「うん!」
リリも隣で嬉しそうにしている。
リリはララの事を妹のように思っていたみたいだから、嬉しいのだろう。
二人ではしゃぎあっている。
「ララ! あのお兄ちゃんがララの薬採ってきてくれたんだよ!」
リリはララに俺が光明草を採ってきた人だと教える。
すると、ララは俺の方までトテトテと走ってきた。
「お兄ちゃんありがとう! 大好き!」
そう言ってララは俺の足元に抱き着く。
「あっ、ララずるい! 私もお兄ちゃん大好きなんだから!!」
すると、リリも走って来てララと反対側の足に抱き着く。
こっ、これはやばい!
「お、おう、じゃあみんなで遊ぶか!!」
俺は照れ隠しと、このまずい状況をなんとかしようとして、そう言ってみんなと遊んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「今日はありがとうございました」
「いえ、俺も楽しかったです」
俺は子供達と遊んでいたけど、日も暮れ始めたのでそろそろ帰る事にした。
おもいっきりはしゃいで遊んでいたからか、途中で休憩している時に、リリとララや小さい子供たちは昼寝してしまった。
そして、落ち着いたのを見張らって、子供達を代表してギルドに依頼しにいったマリアさんに、依頼達成のサインをしてもらい少し話をした。
そして、気づけば日も暮れ始めている。
一日は早いものだ。
ちなみに、クロも子供達と一緒に飛び回って遊び疲れたのか俺の肩で眠っている。
「そう言ってくれると助かります。みんな嬉しそうに遊んでいましたけど、ショーマさんは疲れていないか、迷惑になってないか心配していました」
「迷惑なんて……大丈夫です! 俺は冒険者ですからね!」
そう言って俺は親指を突き立て、前に出す。
やべ、調子乗ってしまった。
「ふふ、ショーマさんは面白い方ですね」
「まぁよく言われたりします」
俺は調子に乗ったのをごまかすようにとりあえず話を合わせて早くこの会話を終わらせようとする。
「じゃあ俺行きますね」
「はい、今日はありがとうございました。よかったらまた遊びに来てください」
「はい、また来ます」
なんだかんだ言って一緒にはしゃいで気分転換になったしな。
こうやって子供と遊んでいると自分の置かれている状況を忘れて一人の人間、翔真としていられる。
それにクロも楽しんでたしな。
「じゃあ」
「はい」
そう言って俺は孤児院を後にする。
「今日は楽しかったな、クロ」
俺は寝ているクロを撫でながら今日の事を思い出していた。
「さて、依頼も達成したし報酬もらって……ん? 報酬もらって何かしないといけない事が……あ~~っ!! やべっ!! 宿代払わないと!!!!」
宿代を払わないといけない事を思い出した俺は、落ちる陽を見ながら焦ってギルドへと駆け出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お待ちしておりました、ショーマ様」
「えっと……」
ギルドに帰ってきた俺は、受付がクレイでなくて綺麗な女性が対応してくれていて戸惑っている。
ギルドに帰って受付に行くと、案の定クレイはいなくて、それで戸惑っていると、金髪でボブくらいの髪の長さの女性が俺を微笑んで出迎えてくれたのだ。
「ギルド長から依頼の報酬と、素材の買い取りの報酬をショーマ様へと渡すように聞いております」
そうか、クレイの奴、本当にみんなが昼休みでいない時しか受付に立たないのか。
それで、引き継ぎしたんだな。
……ん?
「今、ギルド長って言いませんでした?」
「はい、そう言いました」
「えっ!? クレイってギルド長だったの!?」
「はい、そうですけど?」
「え~~~~~~っ!?」
俺は驚き叫んで、ギルドの中に俺の声が木霊した。




