決着と新たな問題の予感
「返り討ちにしてくれる!!」
俺がグラムを振るうのを見たティルフィングはさっきのグラムの変形の影響が俺の身体能力の上昇だけと思ったのか、それとも自分が破壊される事がないと思ったのか分からないが、ティルフィングを逸らす事なく、逆に振るうスピードを上げ、繁体に持つラグナロクを振るう体勢に入る。
もしかすると、ティルフィングでグラムを弾き、ラグナロクでとどめをさそうと思ったのかもしれないが……
「なにっ!?」
次の瞬間、グラムは弾かれる事なく、ティルフィングの刀身に食い込んでいき……そして、ついには刀身を切り落とした。
「ぐぁぁぁあああああ!!!!」
ティルフィングの刀身を切り落とした瞬間、カレンを乗っ取ったティルフィングは剣を投げ捨て頭を抱えて暴れ出し、少しすると事切れたかのように倒れた。
「――っ!? おい、カレン!?」
その様子を見て俺はすぐさまカレンの元に駆け寄る。
「……良かった、息してる……」
カレンの様子を窺うと、息もしているし脈もある。
素人判断だけど、どうやら死んではいないようだ。
でも……。
『おいグラム、カレンはちゃんと意識戻るんだろうな?』
『あぁ、たぶんな』
『たぶんなっておまえ!?』
『いや、俺は方法は知っててもやった事ねぇしな。でも、その方法は身体を傷つけなかった命に別状があるってもんじゃねぇし、きっとしばらくしたら目覚ますだろうよ』
こいつ肝心のところを……まぁでも、カレンの様子を見る限り、気を失っているだけっぽいし大丈夫だろう。
もし意識を取り戻さなかったら、またエルフの里に行って頼み込んでエリクシールをもらおう。
というか、何か俺も……。
「何かだんだん意識が遠くなって……」
『あぁ、そろそろ時間が――』
俺はグラムの言葉を最後まで聞くことなく、意識を失った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
なんだ? この程よい弾力がありながらも、柔らかいものは?
俺って低反発の枕とか持ってたっけ?
……いやいや、俺は死んで異世界に転生したから低反発の枕なんて売ってないし……そもそも俺は低反発の枕なんて持ってなかった。
てか、なんで寝てるんだっけ?
……あぁ、確かティルフィングとかいう魔剣がカレンを乗っ取って、俺はカレンを助ける為にティルフィングを破壊しようと、グラムの第三の能力を解放したんだっけ?
それで、無事にティルフィングを破壊して……あぁ、グラムの第三の能力を解放した代償に意識を失ったのか。
ん? じゃあこれはいったい…………?
「うわっ!?」
意識を取り戻し、目を開けて状況を確認した俺は飛び起きる。
「も、もう大丈夫なのか?」
「あ、あぁもう大丈夫だ」
俺とカレンは気まずげに言葉を交わす。
というのも、俺が低反発枕だと思ったのは実はカレンの太ももで、俺は膝枕されて寝ていたのだ。
なぜだ!?
なぜそういう状況になっている!?
「そ、そうか、なら良かった。いや、あの、ショーマが魔剣に取りつかれた私を助けてくれたってアースから聞いてな! 命の恩人を地面に寝かせておくのもって思ってその……」
カレンはあたふたしながら言葉を並べたけど、最後の方は声も小さくなり、顔を赤くして背けてしまった。
そ、そうか、そう言う事か。
よし、ちょっと整理してみよう!
俺はティルフィングを破壊してカレンの様子を確認した後で意識を失った。
その後、ミリアの安全を確保したか、ミリアが意識を取り戻したかしらないがアースが戻ってきて俺より先にカレンが意識を取り戻してアースは事情を説明した。
それでカレンは俺を膝枕……ってなんでそうなる!?
命の恩人って言っても膝枕!?
それにカレンのこんな様子今まで見た事ないんだけど!?
「そ、そうか。ありがとうな」
結局整理できなかった俺だが、内心の動揺を隠すように努めて冷静に言葉を返す。
なんでカレンはいつもと違うこんなしおらしい感じなんだ!?
それに、だからなんで膝枕!?
冷静な感じで言葉を返したところで俺は内心、絶賛混乱中だ。
いや、どう考えてもこの状況をうまく整理できるわけがない。
……ん? もしかしてカレンはまだ操られているとかか!?
……いや、それだったらもっと攻撃的なはずだし……いったい何なんだ!?
「あっ、ショーマ君、目が覚めたんだ!!」
その時、俺とカレンとは違い、一人だけ違う空気を持つ奴が声をかけてきた。




