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14話 エルフ

「ほへー」


 ゲイルに案内されたその先で。口を0(ゼロ)の字にし、イドキはログハウスを見ていた。

 純粋な木造と云う、はじめて見る形式の住宅に驚きを隠せないのである。

 現代人で例えるなら、ドングリでイノシシを育てている牧場を見つけたような気持ちだ。


 そんな中にひとつ、見覚えのあるものを見つけ、歩み寄った。

 一枚板製の扉の横に吊るされたカンテラの光源。ガラス容器に入れられたそれは、キノコの原木である。

 イドキが森に入ってはじめて見つけたキノコは、このように使われるものなのだと、しきりに感心した。


「人の家がそんな珍しいかい」


 声が聞こえた。ログハウスの陰からだ。

 そこに立っていたのは、スラリと脚が長く、長い金髪をサイドテールに纏め、そしてゲイルと違い尖った耳を持った女性であった。


 片手には棒切れの先端に湾曲し、錆土にまみれた鉄板をはめ込んだものが握られて、それを肩で担いでいる。

 『(クワ)』という、データベースには載っている古代の農作業具だ。一旦は(すき)とも思ったが、鉄板の向きから違うと判断した。

 だとすると彼女の背後にあるのは、かつて『畑』と呼ばれていた、土と堆肥と苗で作る原始的なプラントだろうか。


 イドキに嘘を付くという発想はない。

 それ故に歯に衣着せる発想もなく、正直に応えた。


「あ、はい。足りない資源でどのようにやりくりしているか、新しい事の連続でワクワクが留まらないと言いますか……」

「ふん。正直過ぎる小娘だね、そんなんじゃ何時かいらない怒りを買うよ」

「そうなんですか、ごめんなさい」


 怒られたのでシュンとした。これといってプライドもないので直ぐ謝る。

 女性は呆れた顔をして、女性はクワを壁に立てかけると、イドキに大股で歩み寄った。そうしてポンと頭をヘッドドレスの上から撫でる頃には、愉悦の混ざるムズ痒い顔に変わっていた。


「まあさ、良いんだけどね。見たいなら見ていけば。

他の人間は色々あるけど、私は正直な子ってなんだかんだで好きだし。気をつけるんだよ」

「ほんと!?ありがとう、優しいお姉さん」


 その一言で空気が変わった。

 女性は先ほどの訝し気な態度とは打って変わり、光り輝かんばかりの笑顔でイドキを抱き上げて、テンション高めにクルクル回る。


「えー、お姉さんだなんてー、キャワワワワ。

どうせだし、君の名前を教えてよ。私は『リリーナ』っていうんだけどさ」

「ん、イドキ」

「イドキかぁ。なら、あだ名はイドっちゃんかねぇ」


 そんな様子を離れて見るのは、ゲイルである。


「お姉さん?リリーナが?……ないわー」


 ポツリと呟いた一言だったが、鋭く発達した耳はそれを逃さない。

 「ちょっと待っててね」と残念そうにイドキを脇へ寄せ、眉間に皺を寄せ口をひくつかせ、彼の方へ向く。


「んだコラ!?ていうかあんた居たの?ごめんねー、あんまりにも興味なくて目に入らなかったわー」

「俺としてももうちょっと目に映りたくなかったんだけど、痛々しすぎてなぁ。流石にねぇ」

「「んだとコラ、ぶっ殺されてえか」」

「ちょっといいかな……。『ないわ』ってどういう事?」


 イドキが疑問に思い口を挟んだので、ゲイルが説明した。

 話をまとめると、彼女は『エルフ』と呼ばれる、魔法に優れたヒト科の長命種であるとの事で、実際は百歳を優に超えるらしい。


「つまりババアだババア」

「はっ。あんたら人間がくたばるの速すぎなのよ。

ハムスターかなんかなのアンタたちは?もっと私たちに合わせろっての」


 そんな言い争いが続き今度は遠目に見る立場になったイドキの中では、それでもリリーナは『お姉さん』のままだった。

 彼女の居た世界では寿命を決定するテロメアに手を加えるアンチエイジング技術が発達しており、五百歳や千歳などの人間が上層部には普通に居るからだ。

 戦争の大義名分では、遺伝子操作していない人類こそ正当な地球人であるという話だが、ソレは『遺伝病の治療』という事で許容される事らしい。

 命令されるだけのイドキにはどうでも良い事であったが。


 それはそれとして、平和的な言い争いは長くなりそうなので珍しい植物の観察をする事にしたのだった。


「スケッチブック、今度から持ち歩くのも良いかもなぁ……」


 ナノマシンで記録するのも良いが、自分の手で絵を描いてみたいなと、なんとなく思った。



 ゲイルはロボットに持ってこさせた大トカゲをドスンと降ろした。

 撲殺なので大分綺麗なもので、このまま剥製として飾られてもおかしくない。素材としてはこれ以上はないものである。

 リリーナはしゃがんでペチペチと鱗肌を叩いていた。


「ほら、注文通りのキイチゴドラゴンだ。これで薬を作れるんだろう?」

「へえ。本当に持ってくるとはねぇ。腐っても『疾風怒濤』と呼ばれていただけはある」


 ゲイルは皮肉気に口をもごつかせて、身体全体から緊張感を放ちながら力技で話を進める。


「その名前は好きじゃねえんだけどな。それで薬は出来るんだろ?」

「まあね」


 イドキには何が何だか分からないが、緊張感を下ろしたゲイルはとても嬉しそうで、少しだけ何が彼の周りで起こっているのか気になった。

読んで頂き、ありがとう御座いました

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