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引き裂かれた末は4

どうしようかなぁ。


一粒かけたネックレスを見ながら途方に暮れる。


確かに安全を取ったらすぐにここから離れた方がいいだろう。国境を超える?幼いルーンにを連れて死の砂漠を越えられるだろうか。リアンの事も気がかりだし……ああ、どうしたらいいんだろう。


「全部売っちまって家を建てようじゃないか。」


私の苦悩を余所にモーサは陽気な声で言った。もう、人の気も知らないで。


「モーサ……これはね。私たちを追ってる王族の持ち物なの。」


ヤバイの。


「……お前さんが盗んだのかい?」


「そうじゃ無くって!私はそんなことしないわよ!確かにもらったものよ!」


「じゃあ、お前さんに惚れて追っかけて来るってことか?」


「いえいえ、そうでもなくってね?」


「リル。このネックレスは生涯一人の伴侶に送ると言われてるやつだ。留め金を作らない代わりに高価な金属で作る。一般のものでも普通の高級品より何倍もの値段だ。ハーレムも作らずに唯一と決めた水の巫女に逃げられたんじゃあその王族も立つ瀬がないねぇ。」


「そ、そうなの?」


「何か事情はあると思ってたがそんな男から逃げてきたとはね。まあ、よっぽどのことが無い限り他の男に走った女を4年も追っかけやしないさ。きっと死んだことになってるよ。こんな僻地まで追ってきたとしたらそん時は諦めな。」


「……。」


あきらめ……ってモーサ……。


「大丈夫さぁ。王族って言っても王子ってわけじゃないんだろ?」


「……。」


「……まさか、王子だったのかい?」


「……。」


「あんたもやるねぇ。」


ヒューっと軽く口笛を鳴らしてモーサは私をニヤニヤして見ていた。


もう!ホントに!


モーサにはかなわないなぁと思いながらもその軽口に救われていた。


「でも、モーサ。もしものことが有ったら……。ルーンのことを守ってね。この指輪はあの子の父親に貰ったものなの。それにルーンは父親にそっくりだからもしも父親が現れたらわかると思うわ。」


「……。ルーンは孫みたいなもんさ。……あんたも……。そんな今生の別れみたいな言葉、聞きたかないね。」


真剣に話したらモーサはつんと横を向いた。それでも指輪には興味があったようで指を二度揺らして私に見せるようにゼスチャーした。


「ふうん。この指輪は大したことないね。大金持ちの王子を振って、お前さんはその男を取ったのか。」


「……うん。」


でもリアンは私を選んだとは言えないけれど。


「リル。もっと自信を持っていい。お前さんの目はそこいらに居る娘どもみたいに曇っていない。片親のルーンが良い子に育っているのがその証拠だ。お前さんが選んだ男ならきっと間違いなかったろう。」


「……ありがと。モーサ。私の見る目は自信ないけれどルーンの父親は間違いなく良い人よ。」


「こんなになってルーンを守ってきたんだ。……愛してるんだな。」


「う……ん。本人には言えなかったけれどね。」


「ま、ルーンそっくりなら絶世の美男子だからリルが騙されていたっておかしくない気がしてきたがな。」


「……いま、良い流れだったのに、モーサ、酷い……。」


そしてあながち間違ってい無い所が胸をえぐるわ。


リアンは。


リアンは生きているのだろうか。


ルーンを見たら喜んでくれる?


……。


ルーンはね。


あなたそっくりになってきたよ。




******



宝石の出処を隠すためにモーサは売った商人に遊牧民族から水と交換したと作り話を大袈裟にした。

かといってやはり同じ場所に留まるのは良くないとネックレスを手放してお金にするとあちこちにお金を隠してから持てるだけ持って住居を移動することにした。ルーンが生まれた時にできた泉は名残惜しいけれどこれから成長するルーンの為にも新しい生活が必要だと思った。


「ルーン。これはね、あなたのおばあちゃんの形見だから大事にするのよ。」


「かたみ?」


「無くしたりしたら駄目だからね。」


「うん。きれい。」


ルーンの首にチェーンに通した指輪を入れたものをつける。旅の安全を祈願して、リアンのお母さんが守ってくれるようにと。初めて手にする高価なものをドギマギしながらルーンが手に取っている。


「あんまり触らないで。こうやって服の下に隠しとくのよ。」


「どうして?」


「悪い人が取ってしまうかもしれないでしょ?」


「!!」


慌ててルーンは眺めていた指輪を服の下にいれた。でも、相当気に入ったのかローブの首元から覗いては上から触っている。


昨日一日も熱は出なかったし、体調も戻ったようだから大丈夫よね。疲れた様子を見せたらすぐに休ませよう。


「さあ、今度は小さなお家に住めたらいいわね。」


そう言うとルーンはさらに目を輝かせた。


住み慣れた洞窟を後にして街を目指す。私たちは国境を越えずに王都から離れる形で進むことにした。


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