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第83話

川辺-


総司は永倉と一緒に川辺を歩いていた。

永倉は頭を掻きながら言った。


永倉「すまんなぁ…。急に連れ出して…。しんどくねぇか?」

総司「大丈夫です。医者からも綺麗な空気を吸うようにと言われていますし。」

永倉「そうか…。それならよかった。」


永倉は何か話があるはずなのだが、なかなか話し出そうとしない。

しかし、総司にはなんとなく検討がついていた。


総司「…永倉さん…もしかして、伊東さんたちのお話ではありませんか?」


永倉が突然立ち止まった。総司も同時に立ち止まる。


永倉「んん…。」


永倉はうなずきともうなりともつかない声を発し、総司を見た。


永倉「…伊東さんのこと…というより、藤堂君のことなんだ。」

総司「……」


藤堂は永倉同様、試衛館時代からの仲間である。しかし、伊東甲子太郎が入ってきてからと言うもの、藤堂は土方から離れ、伊東と一緒に行動するようになった。もともとは藤堂が伊東を近藤に勧めたのだから仕方がないが、永倉はそれをずっと不安に思っていたらしい。


永倉「山南さんが切腹した日を境に、完全に伊東派になっちまったんだからな。…それまでは、まだ奴も傍にいた…。」

総司「……」


山南切腹のことは総司自身も辛い思い出である。土方から「脱走した山南を連れて帰ってくるように」と言われたときは、さすがに総司も迷った。連れて帰れば、もちろん山南は切腹になる。…しかし、山南の気持ちも知りたかった総司は山南を追った。できれば見つけても、そのまま逃がしてやりたいと思っていた。が、総司を見た山南は


『君が来たか…じゃぁ、逃げるわけにはいかんなぁ。」


と笑った。…その時の山南の笑顔が、今も忘れられない。

結局総司は、逆に説得されるようにして山南を連れ帰った。


総司「山南さんのことで…私も嫌われたみたいですね。藤堂さんに。」

永倉「いや、それは違うよ…。伊東派になったことで、いつも土方さんの傍にいる総司に話しかけにくくなっただけだ。それは、本人も言っていた。」

総司「…そうですか…。それならよかった。」


総司は心からほっとして言った。

永倉は歩くのをやめて、じっと川に見入っていた。


永倉「…伊東派が隊を抜けるって…聞いているかい?」

総司「…え?」


総司には寝耳に水だった。


総司「抜ける…とは…?…隊規違反ではないですか。」

永倉「伊東さんが分隊だとかなんとか、うまく言ったらしいが…。とにかく新選組から離れて、独自で活動したいそうだ。」

総司「…それを近藤さんと土方さんは?」

永倉「土方さんはどうかわからんが、近藤さんは許したらしいよ。」

総司「…えっ!?…じゃぁ…」

永倉「もちろん、藤堂君もついていくだろうな。」

総司「…!…」


総司は目を伏せた。試衛館時代の仲間が去っていくのは、何か悲しかった。

そして…たぶん、このままでは終わらないことも、悟らずにはいられなかった。

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