第37話
川辺-
総司は、桜並木の続く川辺を歩いている。そして、その隣にはみさがいた。二人手をつないでいる。
もちろん後ろには中條も控えていた。そして両手には、何かの荷物をぶら下げている。
総司「まだ、蕾が目立つね。…でも、綺麗だ…。」
みさ「うん!」
みさも、嬉しそうである。
総司は、近藤からやっと外へ出る許可がもらえて嬉しそうである。
みさは、あれから毎日のように総司を見舞った。そのうちに総司の表情が明るくなり、見た目にも元気になっていた。
しばらく歩いてから、中條が「先生」と声をかけた。
中條「ここらへんでそろそろ…」
総司「ええ?…でも、まだ桜は続いているのに…」
みさ「おじちゃん、あかん。先生が病み上がりは、無理したらあかん言うとった・・。」
総司「そうか…じゃぁ、ここらで座ろうか。」
総司はこの「かわいいお医者さん」の言うことはよく聞くのである。
これも、礼庵の思う壺…というところか。
中條が、もっていたござを桜の下に引いた。
少し早い花見である。
そのござに総司とみさが座ると、中條は手早く風呂敷包みを開いた。
風呂敷包みからは、三段の重箱があらわれた。
中條特製の弁当である。
総司は正直食欲はまだなかったが、みさの前で食べないわけにはいかないと思っていた。
しかし重の一つ一つが広げられると、少し目を輝かせた。みさも「わあ!」と嬉しそうな声をあげている。
色合いが食欲をそそるものだったのだ。中條が旅館で下働きをしながら得た技である。
総司(やはり、中條君を新撰組に置いておくのは惜しいな…)
総司はそう思った。
中條「さぁ、いっぱい食べてくださいよ。先生は体調を整えるために、みさちゃんは、もっとかわいくなるためにね。」
中條がそう言うと、みさが「いややわ」と言って頬に手を当てて照れた。
総司は思わず、そのみさにどきりとした。ふと可憐と重なったのである。
総司(みさも…もう女性だな…。)
そう思い、何か寂しく感じた。




