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第34話

総司の部屋-


礼庵は目を見開いて、総司を見ていた。


礼庵「…今…なんと…?」

総司「…もう、屯所へは来ないで欲しいと言ったのです。」


総司が厳しい表情で言った。


礼庵「…しかし…私は…」

総司「あなたが、土方さんからの命でこちらに来られているのはわかっています。…土方さんには私から言っておきます。どうか…もう診察に来ないで欲しい。」

礼庵「……」


礼庵には総司の気持ちがわかっている。

総司は、自分に診察に来られて具合が悪いことを土方に言われては困るのだ。


礼庵「…では、約束してもらいたい。」


礼庵が険しい表情のまま言った。


総司「…なんです?」

礼庵「胸の薬を必ず毎日飲むこと。そして…少しでも具合が悪くなったら、必ず医者を呼ぶこと。」

総司「…わかりました。…約束します。」

礼庵「必ず守ってください。……では私はこれで…」


礼庵は総司に頭を下げると、部屋を出て行った。

その後には、何か重苦しい空気が残っていた。


……


礼庵が屯所を出た時、中條が慌てた風に追いかけてきた。


中條「礼庵先生!!」


礼庵は振り返りもせず、足早に歩いている。


中條「先生!…本当に、もう来られないおつもりですか!?」


中條は部屋の外で、二人の会話を聞いていたのだった。


礼庵「仕方がないでしょう。…来るなと言うのだから。」


礼庵の声に、感情がなくなっている。


中條「でも…!…先生が来なければ、沖田先生はどなたが…」

礼庵「…中條さん…」


礼庵が、突然立ち止まって言った。


中條「…はい…?」

礼庵「あなたが毎日、総司殿の様子を見ていて欲しいのです。ちゃんと薬を飲んでいるか…様子がおかしくないか…。それぐらいなら医者でなくてもわかるでしょう。」

中條「…ええ…しかし…」

礼庵「もし、少しでも様子がおかしかったら…あなたから医者に連絡して欲しいのです。」

中條「…え?医者って…礼庵先生ではなくて?」

礼庵「…私ではもうだめです。」

中條「!?…何故です?」

礼庵「お互い気安くしすぎました。…私が行くと、きっと総司殿は意固地になる。…熱を測らせてもらうことすらできないでしょう。」

中條「……」


中條は黙っていたが、やがて「わかりました」と言った。


礼庵「…頼みましたよ。」


礼庵は最後まで中條に振り向かずに、歩き去っていった。

中條は、何か辛い思いで、その礼庵の後姿を見送った。

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