第24話
京の町中-
総司が歩いていると、後ろから走りよってくる下駄の音がした。
ふと振り返ると、中條が駆け寄ってきていた。
総司「…中條君…」
中條が追いかけてきた意味も、だいたい言いたいこともわかる。
総司「先生、一人で出歩いてはいけないと副長がおっしゃっていたではありませんか」
中條は、口を開いたまま呆然としていた。まさに今、そう言おうとしていたのである。
総司はくすくすと笑って、中條のあごに手を当てて、口を閉めさせた。
総司「ごめんよ…。ついふらふらと出歩く癖がついてね。」
中條「はあ…」
中條は、あごをさすりながら言った。
中條「でも、気をつけてください。まだ先生の首には、賞金がかかっているそうですから…。」
総司「本当かい?…しつこいね…。」
総司は歩き出しながら、げんなりとして言った。
中條も、あわてて総司について歩き出した。
中條「それも、沖田先生の賞金額がどんどんあがっていくそうなんです。」
総司「私の…?…どうしてだろう?」
中條「腕のいい剣士だということだからでしょう。永倉先生や、斎藤先生も額があがっているそうです。」
総司は、ため息をついた。
総司「なんだか面倒くさいな…。この際、斬ってもらった方が楽か…」
中條「冗談は、よしてください!」
総司「わかったわかった…」
総司は笑いながら、中條に言った。
……
川辺に、たどり着いた。総司は、川に向かって伸びをした。
総司「…いい天気だね。…こんな時…」
と続きを言いかけて、はっと口をつぐんだ。
可憐のことを、言いそうになったのである。
総司「…どこか、遠いところへ行きたいね…。私のことを誰も知らないようなところへ…」
中條はとまどったような表情をしている。
…二人の背後に、女性が近寄ってきていた。
気づいた総司が、ふと振り返ると、その女性が丁寧に頭をさげた。
女性「…あの…そちら様は沖田総司さまでしょうか?」
総司「…はい、そうですが…?」
中條が、はっとした表情になり、総司の前に立ちふさがった。と同時に、隠しているその女性の右手を引きだし、掴みあげた。
女性「…い…た…っ」
女性の手には、懐刀が握られていた。
総司「あなたも賞金稼ぎですか?」
女性は、中條に腕を強くつかまれて、美しい顔をゆがませている。
女性「違います…主人の…仇を…」
総司の顔が、暗くなった。




