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第62話 殲滅


 俺は矢を撃ち尽くした二挺目のクロスボウを地面に置き、三挺目を手にした。恐れ(おのの)くゴブリン達ばかりだが、全部が全部そうではない。落ち着きを取り戻し始めた奴、あるいはそもそもあんまり驚いていない個体を探して俺はトリガーを引いていく。結果、三射共に命中しゴブリンを倒した。


「キノク」


 アンフルーが撃ち終えて地面に置いていたクロスボウに三本の矢を装填(そうてん)して声をかけてきた。


 クロスボウに弦をセットするにはそれなりの腕力を要する。つまり、そのままでは弦を引くのにはそれなりの労力が必要な事になる。そこでクロスボウには梃子(てこ)の原理を応用し、小さな力でも弦を引く事が出来る。


「ありがとう、アンフルー」


「ん」


 戦場を見回せばリーンが再びゴブリンの群れに回転しながら突っ込み敵を蹴散らしていく。すぐに援護は必要無さそうなので俺とアンフルーは少し前線に近づく。前衛のリーンと距離を開け過ぎない為だ。サッカーで例えればスペースが空いてるようなものだろうか、サッカーも戦いでもそうだがそこにつけ込まれたりするのは面白くない。


 敵の包囲は崩れている。そんな中、馬車側にも動きがあった。


「グガアオオオッ!!」


 残る一匹のホブゴブリンから叫びが洩れた。数人がかりでホブゴブリンを相手取り、その中の一人が喉元を槍で貫いている。たちまちホブゴブリンは体の力が抜けていく。そのホブゴブリンを槍の使い手はホブゴブリンを横に薙ぐ。


 ホブゴブリンが倒れたので自然とその方向に視線がいった。するとそこにいたのは…。


「女?」


 俺が目にしたのは甲冑を着込んだまさに姫騎士といったいでたちの女だった。



「後は指揮をしていたホブゴブリンを失った雑魚です。こちらも一気に蹴散らしてしまいましょう!」


 槍を振るいながら姫騎士が叫ぶと周りの男達から応じる声が上がった。姫騎士とは異なるが男達は全員同じ統一された武装をしている、同じ部署に所属する騎士か正規兵といった感じだろうか。


 いずれにせよ馬車の包囲の外側からは俺達が、その内側からは姫騎士達がゴブリン共を打ち倒していく。そんな中、俺達はもう少しで合流出来る所まで到達した。


御助勢(ごじょせい)感謝いたしますわ!」


 槍を振るいながら姫騎士のよく通る声が戦場に響いた。


「礼は改めて、今はこの火急(かきゅう)の事にて切り抜けた後に。今しばらくお力をお貸し下さい」


「分かったニャ!」


 一番近くにいたリーンが敵を蹴り飛ばしながら応じた。いつの間にかリーンの体を包んでいた淡い光が失われている。効果が切れたのだろう。しかしゴブリンを相手取るのにまったく問題はない、次々とゴブリンを倒していく。


 俺はクロスボウをアンフルーに預けサバイバルナイフを振るう。なるべく背後など真っ正面からはやらないように心がける。俺はここにいる面子(メンツ)の中ではおそらく一番経験が浅いだろう。万が一もあり得る、臆病と言われても良い。とにかく慎重に確実に、そして周りに気を配りながら行動した。


 大勢は決していた。ボス的な存在の四匹のホブゴブリンは既に討ち倒している。あとは有象無象(うぞうむぞう)、ましてや混乱し怖気づいてさえいる。


「…これは妙」


 アンフルーが呟いた。俺はアンフルーの近くに位置取り、彼女のサポートについていた。


「なぜゴブリンは逃げない?形勢不利と見ればすぐに逃げる筈なのに…」


「戸惑っているだけじゃないのか?」


 戦場を見回しながら俺は返事をした。戦況は順調に推移している、あと数分あればカタが付くだろうと俺は感じた。


「ん。…その可能性もある。でも、嫌な感じ」


 その瞬間、俺はなんとも言えないぞくりとしたものを感じた。


 そう言えば水汲みに来た三匹、その後に六匹のゴブリンを倒した時にアンフルーは違和感を口にしていた。三匹を探す為に六匹を繰り出すような規模の大きな群れ。しかし六匹を倒した後の第三の遭遇は無かった。


 ゴブリンそれぞれが勝手に川まで来て飲めば良い水を汲みに行かせるような存在、すなわち支配階級がいる群れではないかと。ならば、あのホブゴブリンがそうさせたのだろうか…。いや、四匹もいる。それを支配階級と言うだろうか、言うかも知れないがなんか違う感じがする。支配者なんだろう、なんていうかそれは人間社会で言うところの(キング)のような存在…。


(キング)…」


 まさかと思った。だけどそう考えれば辻褄(つじつま)が合う。ホブゴブリンはあくまで現場の小隊長、それに命令をしてる支配者がいるのなら…。


「アンフルー!!リーンに潜在能力解放(フルポテンシャル)の魔法を」


「準備出来てる、…潜在能力解放(フルポテンシャル)


 さすがはアンフルー、俺が思い到る前にその結論に達し準備を終わらせている。たちまちリーンの体が淡い光に包まれる。そんな時だった。


 凄まじい破壊音をさせ、姫騎士一行が乗ってきたであろう馬車が粉々に打ち壊された。馬車の残骸が飛び散り、引くものが無くなった馬車馬が逃げていった。そして、その壊れた馬車の向こうから現れたのは…。


「ゴブリンキング…」


 アンフルーが呟いていた。






 いかがでしたでしょうか?


 作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどを感想にお寄せいただけたら嬉しいです。レビューもお待ちしています。よろしくお願いします。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 次回予告。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 ゴブリンの軍団を殲滅(せんめつ)したキノク一行と姫騎士達。


 そこに現れたゴブリンの王。


 その強さはとんでもないもので…。


 次回、第63話。


強靭(きょうじん)たるゴブリンキング』


 お楽しみに。

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