第27話 成長しない理由(わけ)。(後編)
「裸になるのは上半身だけで良いんだよな?」
「全部脱いでも構わない。むしろ推奨」
「いや…、脱がないよ?」
「ちっ…」
舌打ちしたぞ。このエルフ。
とりあえず原因が分からない事にはどうしようもないので、アンフルーに俺がレベルアップしない理由を調べてもらう事にした。聞いてみるとやり方は簡単。俺が上半身の服を脱いでうつ伏せになれば準備は完了するらしい。
「よし、じゃあやってくれ」
俺は布団にうつ伏せで寝そべった。
「うニャ!」
リーンが俺の横に寝そべった。まるで飼い主が寝る布団に入ってくる飼い猫みたいだなと思った。
「ふふ」
すとん。うつ伏せに寝る俺の尻の上あたりにアンフルーが馬乗りになるようにして座った。その体温は妙に高い。
「じゃ、じゃあ…」
「お、おう」
「大丈夫、何もしない。何もしないから…。…はあはあ」
「真面目にやれ、真面目に」
「大丈夫、真面目にヤる」
「…不安だ」
俺はアンフルーに背を向けたまま呟いた。
「大丈夫…。ヤる時はヤる…」
そう言って俺の背中にA4用紙を置いたようだ。ひんやりとした感触…。
「魔力よ応えよ…」
アンフルーの声が変わったような気がした。抑揚がないのは変わらないが、声に張りのようなものを感じる。
「………浮かびしものは余す所なく….」
詠唱が続く、言動は変わっているがアンフルーの腕は良いのかも知れない。
「…我は深淵を知る隠者也。全てを識る隠者」
おお!だんだん声に力が入ってきている。
「この魔法は対象の情報を得る為の魔法…。ギルドにおける鑑定と似たようなもの…、だが決定的に違う事がある…」
鑑定…、レベルとかが分かる冒険者ギルドで受けられるサービスの一つだ。…有料ではあるが。
「それは…?」
「この魔法は鏡に写る姿のように余す所なく情報を写す事が出来る。一回鑑定するごとに高価な紙を消費してしまうけど」
ばぁんっ!!
「コンサルテイション(人物評)!!」
魔法の名を口にして、アンフルーは俺の背中に乗せた紙に手の平を落とした。いわゆるビンタのようなものだろう。独特の皮膚を走るピリピリとした痛みがする。
「お、終わったのか?」
「ん…、終わっ…。…いや、まだ終わってない」
「え?今、終わったって言おうとしなかったか?」
「言ってない」
そう言うとアンフルーは俺の上でなぜか腰をくねらせ始めた。
「な、何してる?」
「これは必要なアフターケア。…はあはあ」
「絶対嘘だろ!とりあえず俺から降りろ!」
そう言って俺は布団から起き上がった。
□
「調査の結果…」
「うん」
「ニャ」
アンフルーによる俺の調査とやらが終わった。今、俺達三人はなぜが布団の上に三人でいる。俺は胡座をかいて座り、アンフルーは正座。リーンは半分寝そべるような感じで上半身を俺の太ももの上に陣取っている。
「キノクの天職は商人」
「知ってる」
「ニャ」
「最後まで聞いて。ここからが本番。見て」
そう言ってアンフルーはA4用紙を俺に示した。
キノク (◼️◼️◼️◼️◼️)
種族:人間 (異世界人)
性別:男
年齢:22
職業:商人 (UL)
LV:12
筋力 : 80
敏捷 : 90
体力 : 86
器用 :110
生命力: 91
魔力 : 10
特殊能力(天啓)
拠点
両替(new)
公共料金(new)
投資(new)
↪︎宅配ボックス(小)&生鮮用宅配ボックス(小)
「おっ、レベルが上がってる!」
「ニャー!!んんっ?この職業の商人の隣に書いてあるのは何ニャ?」
本当だ、ULって書いてある。俺が異世界に来たあの時、鑑定が行われた時には商人という事が分かっただけだった。
「そのULの表記は究極の意味。つまり、キノクの商人としての素養は究極レベルという事…」
「究極…レベル?」
アンフルーによると職業やスキル、色々あるがその素養やランクはなぜかアルファベットを用いたランクで評価するのだそうだ。一番低いものはG、これは素養が皆無である事を示す。例えば魔法の素養がGならば一生に渡り修行を積んだとしても習得は不可能とされる。
その一つ上がF、素養はゼロではないがセンスは感じられない。ハッキリ言えば魔法の道を志すのはやめておいた方が良い。そこからEになると不器用を絵に描いたような奴、Dで中の下あたりか。Cになると中の上、Bともなれば秀才だ。このあたりの素養があればその道を目指した方が良いとされる。
Aともなればまさに天才。学問で例えるなら東大が狙えるレベルだろうか。アンフルーによればさらにその上もあるらしい。
「それが究極…」
「違う。それならS級。あえて言葉で言うならBは上級、Aが最上級、Sなら超級。ULはその上、もうこれより上はない。まさに究極」
「そ、そう…。じゃ、じゃあどうして俺のレベルが上がらなかったんだ?リーンの話じゃ、ある商人はモンスターを倒したらレベルが上がった事があったらしいけど…」
「ニャ。そんな事もあったニャ」
「いくら戦ってもレベルが上がらない?それは当たり前、あなたは商人。商人の本分は稼ぐ事、それが成長につながる」
「それはまあ分かるけど、レベルが一つも上がらないっていうのは…」
「それが究極というもの」
「どういう意味?」
「究極の素養はとても極端。キノクは商人としておよそ考えられないような成長をする可能性を秘めている」
「おお」
「だけど、反対にお金を稼ぐ以外にはレベルが上がらない。素養が人並なら稼いでもモンスターを倒してもそれなりには成長する。だけど、究極は…」
「なるほど、いくら稼いだかで成長すると。成長したけりゃ、とにかく金を稼げと…」
そう言えば両替の能力を得たのも、願いの井戸の底で金に触れた時だったな…。それにしても極端な特性だ。とにかく稼いで成長を…、そして宅配ボックスみたいに新たに出来る事を増やしていけと…。
「よし!俺のこれからの方向性とやらが見えてきたぞ」
俺は閉塞感しかなかった異世界生活に一筋の光明が差してきたような気がしていた。
いかがでしたでしょうか?
ニシノフラワーがまだ出ません。Cygamesさん、頼みます。
作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどをいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。




