File66 惑星ビーテンツへの貨物輸送③ 男の夢の敗れる時
切るに切れなかったので、長いです
視点変換 ◇ニゼー・コギア◇
次の日の朝、目ぇさましたら、コーヒーとバターの匂いが漂っとった。
『…次のニュースです。銀河帝国所属の貴族による『徴税』と銘打った海賊行為に対し、銀河帝国は討伐艦隊を編成、共和国防衛軍と協力し、排除・殲滅することを、正式に発表しました。それに対し共和国評議会は…』
ラウンジのテレビからは、なんや物騒な話がながれとる。
しかしまあ、コーヒーの匂いがするっちゅうことは、兄ちゃんが朝飯の準備をしてるんやろ。
しばらくしたら持ってくるはずや。
「おはようございます」
が、でてきたのは兄ちゃんやなかった。
出てきたのは、銀髪碧眼で、ちちのデカイ美人の姉ちゃんやった!
うひょー♪今までどこにおったんや!
やっぱり上か?上におったんか?
よっしゃっ!これでむさ苦しい空間とはおさらばや!
寝具のついでに、この姉ちゃんもいただいていこやないか!
「よおお嬢はん♪ワイはブローカーのニゼー・コギアっちゅうもんや♪昨日救難カプセルで漂流しとったところを船長の兄ちゃんに助けられてなあ」
ワイは、悪い印象がつかんように陽気に話しかけた。
しかし姉ちゃんの反応がいまいちや。
すると姉ちゃんは軽くため息をついて、
「存じてますよ」
と、身分証を差し出した。
そこには、船長の兄ちゃんの立体映像があり、性別の欄には両性とあった。
「もしかして兄ちゃんシュメール人か?」
「ええ、すみませんね。急に『月のもの』が来ちゃって」
シュメール人は男にも女にもなれる連中や!
しかも種族的に美男美女が多い上にちちもデカイ!
さらにこの姉ちゃんは昨日の兄ちゃんやから料理の腕は間違いない!
これはマネジメントしたらメチャクチャに儲かることになるでえ!
美人シェフの手作り豪華ディナー!
サービスはランクごとに料金アップ!
あーん♥から始まって、最終的には女体盛りデザートや!
売れる!これは売れる!
ふっふっふっ…これは絶対に成功させなあかんな…。
「どうかしました?」
「いや!なんでもあらへんで。あんたがえらい別嬪やから驚いただけや」
「からかわないでください…」
兄ちゃんであり姉ちゃんやった船長は、ため息をつきながら朝めしを運んできよった。
美人の手料理の朝めしはなかなかええもんやでほんま♪
ちなみにメニューは、コーヒー・トースト・プレーンオムレツ・ソーセージ・サラダ・フルーツヨーグルト・オレンジジュースと、ホテルの定番朝食な感じや。
なんちゅうか、できる男の朝食っちゅう感じやな♪
それにしても…なんぼだしたらあのデカちち触らせてくれるやろか…。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
たしかにチャーリーのいった通り、このちっちゃいおっさんは、女になった俺を舐めるように見つめてきた。
はっきりいって気持ち悪いが、警察に引き渡すまでは油断させないといけない。
そんなことを考えていると、ちっちゃいおっさんの方から話しかけてきた。
「たしかショウンはんやったな?」
「ええ、そうですが」
「じつはええ商売のネタがあるんやけど…聞くだけ聞いてもらえんやろうか?」
嫌な予感だ。
間違いなくろくでもない商売だろう。
それでも、このおっさんの気を引くために話を聞いてやる事にした。
「どんな商売なんで?」
すると、してやったりという顔をし、
「この船を改造するか買い換えるかして乗客専用にしてやな、乗船料と食事代を別個にして、食事代をがっぽりとるんや!美人シェフの手作りディナーにブレックファスト。これは金になるで!」
と、自信満々にプレゼンをしてきた。
が、その内容は以前に副社長御嬢様が、自分の専属にならないなら、そういう商売をしてはどうだと提案されたことだった。
まあ多分それ以上のサービスを考えているんだろう。
なので迷うことなく、
「そういう話ならお断りします」
「なっ?なんでや!?メチャクチャ儲かること間違いナシや!ワイと一緒に外食産業のトップを目ざそうやないか!」
なんのスポーツドラマだというセリフを吐き、拳を振り上げて熱弁するが、聞いてやる必要はない。
「まず、私の本業は貨物輸送業者であり、料理人じゃない。それに、そういう話なら以前にも持ちかけられてますから、目新しくもないですね」
そう答えると、ちっちゃいおっさんはぐぬぬと悔しがり、
「ちなみにどんな奴に持ちかけられたんや?」
と、聞いてきたので、正直に答えてやることにした。
「リキュキエル・エンタープライズ社の副社長ですよ。船やサポートスタッフもこっちが用意するとか言われましたね」
「なっなんやて?!」
まあ驚くよな。
でもこれは、副社長が御嬢様とは知らない感じだ。
そして俺に詰め寄り、
「なんで承知せえへんのや?!チャンスや!めちゃめちゃの大チャンスやないか!そのハナシはまだ有効なんか?」
「とっくに無効ですよ。きっちり断りましたからね」
「いや!改めてお願いしたら何とかなるかもしれへん!今すぐ連絡を…」
慌てふためきながら、自分の汎用端末を取り出して連絡をしようとする。
「おい!副社長の連絡先番号は何番や?」
「教えるわけないでしょうが」
それを聞いて一瞬こちらを睨み付けたが、
「せや!船の電話になら連絡先番号が書いてあるハズや!」
と、宣い、俺の船の通信機を掴み取った。
「いいかげんにしろこのクソボケ!」
なので思わず、このおっさんの頭に蹴りを食らわせてしまった。
もし連絡なんかしたら、副社長御嬢様は嬉々として承諾してしまうに決まっている。
やっちまったと後悔はしたが、直ぐにおっさんを縛り上げ、男に戻ってから、チャーリーに連絡をいれた。
「すまん。あまりにもイラッと来たからぶん殴って拘束した」
視点変換 ◇ニゼー・コギア◇
ワイは人の話し声で目が覚めた。
頭がめちゃめちゃ痛い。
一体なにがあったんや?
そう思って回りを見渡すと、警察の制服がワイを取り囲んどった!
しかも、ワイの手にはごっつい手錠がはめられとる!
「なんやこれは!?ワイはさっきまでボインの船長と朝めしを楽しんでたはずやのに!どえらい儲け話があったのに!」
訳がわからへん!
ワイがなにもんかは、船長は知らんはずや!
すると、
「ほー。儲け話ねぇ」
警察の後ろから、同業者どもが顔を出してきた。
どうやったんかはわからへんが、こいつらが警察連れてきたんやな!
「そうや!儲け話や!助けてくれたら教えたるで!」
ワイは全力でそう叫んだ。
コイツらもブローカー、儲け話には食いついてくるはずや!
この警官どもは、間違いなくコイツらの飼い犬やから、コイツらに儲け話をしたったら逮捕はされんはずや!
しかし、連中は話には一切乗らず、いつの間にかワイを囲んどった。
「今から監獄行きの奴の儲け話なんかにのるかよ」ゴッ!
「ぶっ殺されないだけありがたいと思え!」ガッ!
「面汚し野郎が!」ゴッ!
そして、文句をいいながらワイを爪先で蹴り始めよった!
「おい!何すんねん!」
「うるせえ!これぐらいで済ませてもらってるだけありがたいと思え!」ゴッ!
「ぐべっ!」
自分が動いたせいで、鼻に爪先が直撃した。
警察はこの状況をほったらかし、つまりはきっちり買収されとるか、偽者っちゅうことや。
くそう…あのデカイちち…揉んどくんやったなあ…
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
「いいのかあれ…」
『ちっちゃいおっさんを爪先で蹴る会』を見ながら、横にいた男に話しかけた。
「あれは、今から監獄行きになる同業者への激励だ。なあんにも問題はない。それにあの警官達はちゃんと本物だけど、アイツの被害にあった連中だよ」
その男は爽やかな笑顔を浮かべながら、『ちっちゃいおっさんを爪先で蹴る会』を眺めていた。
なぜこんなことになっているかというと、
俺が昨晩チャーリーに連絡した直後に、話を聞いたビーテンツにいるブローカー達が船をチャーターし、警官達と一緒にこの船に向かっていたらしい。
そして俺が改めて連絡した時には、直ぐ近くまできていた。
じゃあちょうどいいってことで、ちっちゃいおっさんを引き渡したというわけだ。
ちなみに俺と話しているのは、ブローカー達のリーダーでフレデリック・オーシェライドという男だ。
顔はいいが、なんとなくチャラい雰囲気を醸し出していた。
「それにしても、チャーリーのやつに話聞いてたからさ~、てっきり女の子の姿で出迎えてくれると思ったんだけどな~。ほら、シュメール人って美人が多いって言うじゃん♪みたかったな~♪」
ちがった。
雰囲気じゃなくて、マジでチャラかった。
さっきから、ちらちらとこっちを見つめ、「変身してくれないかな~」と訴えてきやがる。
「必要が無くなったからな」
なのできっちりと断ってやった。
しかしそれでもめげずに話しかけてきた。
「そうだ。あんたも一緒に来てもらうぜ。証言とかほしいし」
が、内容はまっとうなものだったので、
「だったら少し遅くなる。あんた達の船のほうが速いから、先に向こうに到着するだろうからな」
と、返答した。
何しろ向こうがチャーターした船は、スリーカース社が最近発売した『ディアマンド・オーシス』という高速輸送戦闘艦だ。
輸送とついているが、軍艦として使用できる上に、フォルムも美しい船で、軍の払い下げの俺の船では、基本スペックが2桁違いだ。
「そうだな。じゃあ向こうでまってるよ。できれば再会するときは女の子の姿でよろしく♪」
オーシェライドは、歯を見せた爽やかな笑顔を浮かべた。
とりあえず今後、こいつの前には、女の姿で出ないようにしよう。
このちっちゃいおっさんは好きなキャラクターなので、また出したいと考えています。
脱獄か刑期を勤めてからになりますが…
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします。




