File20 惑星オルランゲアのフードコート③ 借金女王
お待たせいたしました
サムの情報に、全員が真剣な表情をしているところに、また人影があらわれた。
「あーいたー!キャシー!」
そいつは、全速力でキャシーの前までくると、膝をついてお祈りのポーズをし、
「お願い!5万クレジット貸して!」
借金の申し込みをしてきた。
こいつはアルニー・エスフォル。
同業者で、見た目はショートカットでスレンダー。
顔も可愛らしく愛嬌がある。
が、ブランド好きで金遣いが荒く、あちこちに借金をしている。
そんな彼女に対してのキャシーの答は決まっている。
「いやだ」
「そんなぁ?!お願い!どうしても必要なのよ!」
「じゃあ前に貸した2万クレジットを先に返して貰おうか?」
「それもないから貸してっていってるの!」
「2万クレジットを返したら考えてやる」
必死な形相のアルニーとは対照的に、キャシーは極めて冷静だ。
キャシーは無駄だと理解したアルニーは、男性陣に視線を移す。
「俺と一晩過ごすなら、貸すどころかプレゼントするぜ?」
「俺の船でストリップするなら考えてやってもいいぞ」
おっさん2人によるセクハラ大爆発の発言だが、借金を断る口実なので大目に見てやることにする。
「俺は貸さねえし借りねえ主義だ」
「それよりこの前の5万を早く返してほしいっす」
トニーはきっぱり断り、サムは冷たい目をしながら手を差し出す。
てかサムにまで借りてたのかこいつ。
「ねえサム君。お姉さんがイイことしてあげるから、ちょこっと貸して欲しいなぁ♪」
アルニーはウィンクをして身体をくねらすが、
「貧乳に興味はないっす」
サムの一撃にあっけなく撃沈した。
すると今度は俺の方に顔を向け、
「ねえショウン、12万貸して!」
と、借金の申し込みをしてきた。
「額があがってるぞ」
「それで2人に返して、さらに私の欲しいものも買えるでしょ?だから貸して!」
「船を買ったばかりで金がない」
「なんで船なんか買ったのよ?!そんなにお金あったなら私にちょうだいよ!」
なんつう理屈こねやがるこのアマ。
「だれがやるか!そもそもお前、仕事終わったばかりじゃないのか?」
俺のその言葉に、アルニーはビクッと震え、
「…借金取りに全部持ってかれた…」
ばつの悪そうな顔で、自分の現状を吐露した。
その事実に全員がため息をつく。
「じゃあ貸してくれなくていいから協力してよ」
それでもめげずに、アルニーは俺に話しかけてくる。
「なにを協力するんだ?」
俺が肯定的な発言をすると、満面の笑みを浮かべた。
「キャシーとショウンがえっちい水着、正確にはスリングショットを着て、カンパをお願いするの!2人だったら100万200万あっという間だよ!」
俺もキャシーもブチ切れかけたが、とりあえず質問をしてみた。
「で、お前はなにをするんだ?」
「私はプロデューサーだから、遠くから見守ってるわ!」
つまりなにもしないということだ。
「ふ・ざ・け・る・な!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
キャシーがついにブチ切れ、こめかみを拳で挟み、ぐりぐりとやりはじめた。
「あら。随分賑やかね」
そこに、後ろから声がかかった。
「あ、バルスィン姉さん!助けて!」
「あらアルニーちゃん。どうしたの?」
そこにいたのは、パンツスタイルのレディーススーツに身を包み、パンプスを履き、ストロベリーブロンドで腰の辺りまであるロングストレートの髪をうなじのあたりで纏めた、『出来る女』といった雰囲気の、れっきとした、パッと見女性に見えてしまう『男性』だった。
名前はバルスィン・チェンシー。
貨物輸送業者としてはもちろん、ファッションやジュエリーのデザイナーとしても名前が売れている。
貨物輸送業者をやめた方がいいのではと助言したところ、
「輸送中のほうがアイデアも浮かぶし、作業もはかどるのよ♪」
とのことだ。
ちなみに、『彼』はシュメール人ではない。
そのバルスィンに、アルニーが助けをもとめるが、
「キャシーとショウンが虐め…「お前が悪いんだろうが!」あいたたたたたたたたたた!」
キャシーが許す筈はなかった。
「はあ…アルニーちゃん。貴女またお金のトラブルなの?」
「だって新作が…」
バルスィンも、アルニーの所業は把握済みだ。
「ごめんなさいね。この子がファッションに入れ込むのは私が原因みたいなものなのよ」
実はアルニーは、このバルスィンに貨物輸送業者の仕事を仕込んでもらった、言わば師匠と弟子の間柄だ。
その時に、ファッションの素晴らしさを実感し、のめり込むようになった。らしい。
「まったく…この前貸してあげたのを含めて87万クレジット。一部でもいいからそろそろ返してちょうだいね。今日のお仕事で報酬は入ったでしょ?」
すると当然、アルニーはばつの悪い笑顔を浮かべる。
「えへへ…」
「あんたって娘は…」
それだけで全てを察したバルスィンは、
「いい加減無駄遣いを止めろっていってんだろうがぁぁぁっ!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!ごめんなさいぃぃぃぃ!」
キャシーでは比較にならないほどの力で、こめかみを拳で締め上げた。
その時、急にその場にいた全員の腕輪型端末が鳴った。
正確にはそのフードコートにいた全ての貨物輸送業者の腕輪型端末が鳴ったのだ。
それがいったいなんなのか?
貨物輸送業者は全員が理解していた。
「よかったな、アルニー。お仕事だ」
「これって強制呼び出しじゃん!タダ働きはいやぁ!」
そう、大規模代替輸送依頼が 発令されたのだ。
以前にも書きましたが、身の程知らずにも、キャラクターのセリフを考える時に、声優さんを当てはめて考えています。
あくまでも勝手な妄想なのでご勘弁下さい
ササラ・エスンヴェルダ:田村ゆかりさん
フッティ・オルグド・ポールダル:細谷佳正さん
エルゼリア・コールマン:野田順子さん
トニー・マードック:三宅健太さん
サムソン・カスタス:泊明日菜さん
チャーリー・レック:藤原啓治さん
ティラナ:名塚佳織さん
バルロス・クロイワーツ:安元洋貴さん
ロナ・フラング:民安ともえさん
ウィオラ・ザバル:佐藤利奈さん
リリーナ・フレマックス:早見沙織さん
マリーダ・ウェスロック:小松未可子さん
クロイド・ドラッケン:岩崎ひろしさん
サラフィニア・ドラッケン:伊藤静さん
マイルヤーナ・ドラッケン:竹達彩奈さん
ティナロッサ・ドラッケン:井口裕香さん
レストレイド・リュオウ:堀之紀さん
ラインハルト・シュタインベルガー:櫻井孝宏さん
レイアナ・リオアース:金元寿子さん
ガリウス・リオアース:速水奨さん
トーマス・フェイフォス:宮野真守さん
シュルゲート・ウッドベイル :平田広明さん
ガルダイト・ホーゼン:稲田徹さん
キャロライン・ウィルソン:日笠陽子さん
アルニー・エスフォル:植田佳奈さん
バルスィン・チェンシー:小野大輔さん
ここまで考えて、主人公だけが思い付かないという不思議。
そして趣味がわかってしまう結果に
ちなみに、今回のタイトルと新キャラは、お店の有線から聞こえてきたウ○フルズの借金○王をきいて思い付きました。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします
貸した○返せよ♪




