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炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程  作者: シロクマシロウ子
解決編・炎

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いきなりの山場


ー登場人物紹介ー

桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平の長男。農業高校2年。


羽柴真吾はしばしんご・・・関光組組員。6年前から消息不明。

緑川みどりかわまどか・・・羽柴真吾の女。6年前から消息不明。


 


 その頃 2階に上がったメンバー達もまた、オープンスペースで話をしていたのだ。


「保険金、金額上がってたな。3億超えじゃ本当に狙われるぞ、桜田」


 桂木は真剣な顔で言った。


「羽柴真吾は消えたけれど緑川まどかは残ってる。しかも首謀者は彼女の方だ」


 安西も分かっていた。


「私達、もうすぐ帰らなくちゃいけないですよね。桜田くんに何をしていけるでしょうか……」


 椎名の言葉に沈黙が広がった──が、神宮寺が


「思い出を作りませんか!?」


 と急に叫んだ。


「なんで命狙われてるのに……思い出?」


 椎名に(にら)まれて神宮寺はオドオドしながら説明する。


「いれる時間が限られているなら 楽しい思い出作ったらいいかなって。どうせ僕らじゃできることないし……」


「桜田くんを見捨てるんですか!」


 椎名は怒ったが、安西と桂木は笑顔だ。


「悪くないんじゃないか?ビクビクしてるより風晴と楽しんでさ。で、その間になんか策を部長に考えてもらうとか」


 桂木に続いて 安西も賛同した。


「明後日ちょうど椎名の誕生日だろう。誕生会ってことにして 何かやろうか?バーベキューとか手持ち花火とか」


「僕、ケーキ作っても良いですよ!みんなに!」


 神宮寺が言ってくれたが、3人の頭には 彼が母の日に作った"雪崩(なだれ)発生雪山ケーキドカ盛り"の写真が浮かぶ。


「あ!ケーキは 桜田くんが作ってくれてることになってました」


「神宮寺は肉焼いてくれよ、肉。1番重要な役割なんだぞ」


「花火のバケツとか紙皿数えるとか、もう仕事は無限にあるよ」


 3人の必死の意見に、神宮寺もなんとか思い(とど)まったようだ。


「……確かに、前に桜田くんが作ると言ってましたね。準備を頑張ります。

 僕ら6人に北橋さん、安藤さん、桜田くん、風子さんに大河さん…あとは……」


「真淵!声かけてみたらいんじゃないか?」


 桂木が指を鳴らして言った。


「私はいいですよ。バーベキューと花火ってことで呼んだらどうでしょう?」


 椎名は気遣いのある発言だった。


「じゃあ、水樹に真淵くんに連絡してもらおうか」


 と安西の言葉に──全員が静かになった。

 安西は3人の顔を見回して


「何?……何なの?」


 と聞いた。

 桂木が まずゆっくり答えた。


「何って……そこへ連絡頼むの彼氏としてどうなんだろうと思ったんだよ」


「それも、3日前にできたばかりの()()に ですよね?」


 と神宮寺。


「水樹さんが親しくなろうとしていた相手にあえて連絡させるって、安西先輩は平気なんですか?」


 はい、椎名だ。


「ちがう!全然ちがう!!!」


 真っ赤になって 安西は否定した。


「そうですよね。好きなら心配ですもんね。真淵くんへの連絡は桜田くんに頼みましょう」


「そうじゃなくて!……彼氏とか彼女とか、ちがうから……」


 一瞬 間を置いて


「「「はい!?」」」


 と3人が聞き返す。


 安西は赤い顔で眼鏡に手をやり、答えた。


「彼氏とか彼女とかになってない。付き合ってない」


「「「え────────!!?」」」


 オープンスペースに3人の声は響き渡った。








 桂木と椎名と神宮寺に 安西は散々責められた。

 逃げるように外に出てきた。自動販売機に行くと言って。


 警察達は午後から来たので、もう夕暮れ時だった。最近は雲も多くなり、日が短くなってきてる気がする。ゆっくりとだが、確実に 夏は終わりに近づいている。

 方向は自動販売機の方でも、ハッキリ言って何処(どこ)ということもなく 安西は歩き出した。


(分かってる。分かってはいるんだ。何かしなくてはいけないって。──水樹に)


 だが考えようとして 彼女を思い浮かべると──

 途端(とたん)に どうしたらいいか分からなくなる。


 だって()()()()なんだ


 美しくて綺麗で美麗で可憐でまばゆくて……

 比類(ひるい)無くて(とうと)くて完璧だ。


 そう言う人間に何て言う?

 "好きだ"

 なんて言ったって彼女にとっては

 天気予報の雨 程度の響きかもしれない。

 いや、曇りかも

 多分雨より頻度(ひんど)が高いから。


 そもそも水樹に目を奪われない男なんていない。

 誰だって彼女に惹かれる彼女に焦がれる。


 自分だって……水樹が

 すすすすすすす好き……だ


 輪命回(りんめいかい)病院で爆破に巻き込まれるかもと思った時も

 襲われそうになったと北橋さんから聞いた時も

 心臓が止まる想いだった。

 大切で大切で仕方ないんだと分かった。


 だから……だから仮に"好きだ"と告白はしたとしても

 告白は!しても!だ!

 ……でも"付き合って下さい"なんて頼めるだろうか。

 申し入れることすら 申し訳ない気がする。

 そうしてお願いしたって、水樹に僕が何をしてあげられるだろう。

 勉強ばかりして勉強だけが取り()の自分なのに。

 与えられるものなんか 何も無いじゃないか。



 色々考えて歩いていたら、自動販売機を越えて坂の上の方まで来ていた。


(ええっと……風晴のお爺さんの畑って……これかな?)


 上がりきると、野原のようなものが広がっているのがわかる。緑の敷地の中に、色とりどりの花が入り混じっていた。山岳の向こうに西陽は隠れ始め、安西は少しの間 その風景を見て 心地良い風に吹かれた。


「秀一!」


 突然 呼ばれた声に、自分が今いる方が夢の中なのではないかと思う。

 坂の下に目をやると……それも恐る恐るになったが、

 やはり──彼女がいた。


 水樹は走ってきていた。まだ暑さの残る夕暮れに、坂を駆け上がるのはかなりの負担のようで、彼女は息を切らしていた。

 真っ白な頬は桃色がさし、ミントグリーンのTシャツが上下する。長い髪は風に吹かれていて、その姿が安西の瞳にはとにかく……


 綺麗だ


 ただそう映る。

 水樹は駆け寄ってきて


「スマホ置いてったでしょ?夕食の時間だから呼びに来た。それから……」


 そこで 彼女は息を整えて時間を置いた。


「それから、話があって……」


 何も言えずただ見つめる。その安西の瞳を水樹が覗き込むようにして──目が合った。


 ドクンッ と


 鼓動(こどう)は跳ね上がる。


「わ、私は 秀一が好きなんだけど。あの……秀一は?」


 今言葉が理解できてないかもしれない。


「え?」


 色々脳の許容量がオーバーしてる。


「秀一は私のことは……嫌い?それとも……好き?」


 水樹はまっすぐ秀一を見た。彼は その瞳に吸い込まれそうになった。


「嫌いなわけない」


 好きだ──そんな言葉では伝えきれないほどに。

 きっと ずっと長く。 大きく。 強く。


「良かった」


 水樹が胸に手を当てて瞳を潤ませた。その輝きに見惚(みと)れているうちに、彼女は続けた。


「私と……私と……つ、付き合ってくれませんか?」


 水樹は胸の拳を握り込んだ。手が震えぬように。



 秀一は


 自分の世界の全てが止まるのを


 感じた。







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― 新着の感想 ―
意外とヘタレていた秀一くんと、当初のヤバい雰囲気から一転してきた水樹ち。 青い春やねぇ~、と見守っていてもいいものか。 だってね……………。 これのジャンルは恋愛じゃなく推理だから!
おお、見事なまでに「外堀を埋められていく」という感じですね~。 (*´ω`*) ついに水樹が踏み込んだ! 返答や如何に⁉️ (´・ω・`) あと、周りの皆も、風晴✕聖なんですねぇ〜。 (´ε`)
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