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炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程  作者: シロクマシロウ子
最終編・道

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君の知らない道1


ー登場人物紹介ー

桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田風子さくらだふうこ・・・風晴の母親。民宿を営む。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。

桜田和臣さくらだかずおみ・・・晴臣の弟。桜田建設社長。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


宝来総司ほうらいそうじ・・・正火斗、水樹の実父。元陽邪馬市市長。桜田晴臣が行方不明になる同日に転落死。旧姓・神城総司


井原雪枝いはらゆきえ・・・風子に屋敷を貸すオーナー。


羽柴真吾はしばしんご・・・関光組組員。6年前から消息不明。

松下達男まつしたたつお・・・関光組組員。羽柴の舎弟。

緑川みどりかわまどか・・・羽柴真吾の女。6年前から消息不明。


 


 その日の朝の洗い物を 彼女は 終えた。

洗い物と言っても 枚数があるので、食洗機も併用する。台所には、その食洗機が作動する音だけが 響いていた。


 息子は高校の始業式に行った。戻るのは昼頃。

 他の人達もそれぞれの用事でここにはいない。

 今日はこの後、来る人の予定もなかった。


 自分 そして () だけだ


 彼女は椅子に座ってただ待った。

 来るはずの人物を────


 やがて 2階から人が降りてくる足音が した。

 やっぱり 彼は来た。

 そうだろうと思った。今しかないのだから。


 台所の入り口まで来て、彼は彼女を呼んだ。


風子(ふうこ)さん、お話しがあります」


 風子は うなずいて立ち上がった。


「広間で話しましょう。ここは食洗機の音がうるさいから」


 2人は広間に場所を移した。







「これをお返しします」


 向かい合って座った広間のテーブルで、彼は風子に()()を渡した。彼女は手の中の 今渡された物を見ながら、尋ねた。


「あなたは どこまで知っているの?」


 彼は答える。


(すべ)てを。僕は()()スマートフォンの……削除されたデータを復元しましたから」


 その言葉に 風子はひどく哀しい顔に なった。そうして 彼を見つめる。手に持った、壊れた夫の携帯電話はテーブルに置いた。


「あなたは神城総司(かみしろそうじ)の息子だものね」


「はい」


 大道正火斗(だいどうまさひと)はうなずいた。

 風子は悲しげに、でも微笑んで話し出した。


「あなたを玄関で見た時にすぐに分かったわ。面影(おもかげ)が総司くんとそっくりだもの。彼もそれはそれは整った人だった。髪が短くて、あなたよりガッチリしている感じだけれど。でも、良く似ている。瞳がそのものだもの。美しさと激しさと、荒々しさを秘めてる」


 正火斗はその褒め言葉に笑った。


「瞳のことは分かりませんが、父に生き写しだとは言われていました。だから、あなたが僕や水樹を見て全く父のことに触れなかった時、確信したんです」


 そして 続ける────


「あなたは()()()()()()()()()()()()()と」


 風子の顔から笑みが消える。彼女は、まるで正火斗を(にら)むような顔つきになった。


「言えるわけがないでしょう。私はこれを墓まで持って行くつもりです。桜田晴臣のためにも。()()()()()()()()()


「僕は…………」


 正火斗は少しだけ言いよどんだ。


「東京でいた時に、あなた方親子の現状は調べてありました。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。僕が援助を申し出ることも考えてここに来ました。結局……こんな形での支援になりました」


 風子は うなずいた。


「あなたがしてくれたことは、分かっているつもりです。

 ()()()()()()()()()()()()()()。…………でも、最後の手紙と この携帯電話の作戦は……私は 本当に引っかかって驚いたわ。全てが駄目になってしまうかと思ったから」


 そう言って、風子は再び晴臣の携帯電話に触れた。


「すみませんでした。けれど 僕には必要でした。僕は あなたが風晴に真実を隠している理由を、見極める必要がありました。

 万が一あなたが緑川(みどりかわ)まどかと同じ穴のムジナで、生命保険を…………お金を狙っているだけならば、風晴の近くに置いて東京に戻るわけには行かなかったんです。ですが 現実的には時間が無かった。風晴もハッキリさせたいと思ってくれていました。だから──ああするしかなかった」


 風子は、また少し悲しげな顔になって正火斗を見た。


「あなたは……大道真夜呼(だいどうまやこ)の息子だから」


「そうです。僕の母親は "あの女性(ひと)" なので」


 正火斗は やはり微笑んで そう言った。それから 彼は


「父の……宝来総司のしたことを、一言だけは謝って帰りたいと思っていました。本当に申し訳ありませんでした」


 と言って、座ったままだったが頭を下げた。

 それを見て風子は言った。


「あなたは何も分かっていないわ」





最終編・道 始まりました。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
いよいよ最終章ですね〜。 見ても驚かなかったのは産んだ子供だったからだったりして。とかテキトーなことを言ってみたりw (´ε`) 風晴が助かったの部分に何かヒントがあるのかな? (´・ω・`)
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