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炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程  作者: シロクマシロウ子
解決編・水

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残り少ない道だから


ー登場人物紹介ー

桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田風子さくらだふうこ・・・風晴の母親。民宿を営む。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵実咲まぶちみさき・・・耕平の妻。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。

真淵和弥まぶちかずや・・・耕平と実咲の次男。


北橋勝介きたはししょうすけ・・・フリージャーナリスト。

安藤星那あんどうせいな・・・朝毎新報・新聞記者。

 



 安藤星那(あんどうせいな)が東京に帰った日は、聖が午後から民宿に来ることになっていた。

 スマートフォンで通話した時、黒竜池での緑川まどかとの事件の顛末(てんまつ)は大体話してあった。すると聖は、壊れてしまったお地蔵さんを見に行きたいと言ったのだ。


 到着すると民宿の2階に上がって、聖はオープンスペースでミステリー同好会メンバーとも会った。

 彼らの方は 黒竜池の水流データの解析を仕上げていた。そして東京に戻れば出来なくなることを、やっていこうとしていた。


「明日は僕らは流良(ながら)川に行こうかと思っているけど。2人は?」


 秀一の問いに 2人は首を振った。明日は もう始業式だった。午前あがりだが 高校に行かなくてはいけない。


「そっか。県立だと私達より始まるの早いんだね。残念」


 水樹が言った。


「午後からなら合流できるけど、そんなに長くやるもの?」


 風晴の質問には 椎名が答えた。


「正直、黒竜池の補助データとして一応取るだけなので、

 長くやる必要はないかも……」


「いいじゃんか、やることなくっても。明後日はもう帰るんだし、その時は2人は学校ってことだろう?

 一緒に居れる時間いて、UNO(ウノ)でもトランプでも……なんか一緒に遊ぼうぜ」


 桂木が言う。そうか。──見送りはできないんだ。

 すると 聖が思わぬ提案をした。


「僕……明日泊まりに来ようかな」


 お────!っと歓声が上がる。


「お金……払ったらいい?」


 聖が風晴に聞く。風晴は首を振って


「いらない。友達だろ」


 と言った。聖はニッコリとした。


「パジャマパーティー!パジャマパーティーだよね!?」

「怖い話しとかやりませんか?みんなで?」


 話が沸いている中、風晴は秀一に聞いた────姿の無い人物について。


「正火斗は?なんでいないんだ?」


「さっき電話があって抜けた。仕事のだと思う。多分男子部屋だよ」


 風晴と聖は顔を見合わせた。








 男子部屋をノックすると、返事が聞こえた。

 風晴は迷ったが 聖が正火斗に会いたいと言うので、黒竜池に向かう前に寄ってみた。

 開けようとしたら、中から開いた。


「聖、来ていたんだな」


 正火斗は聖を見て言った。風晴にはただうなずく。それだけで入って良いんだと分かった。

 風晴は部屋に上がると、そこですぐに まとめてある荷物が目についた。もしかして……


「帰らなくちゃいけないのか?すぐに東京に?」


 だが正火斗は首を振った。


「準備していただけ。まだ大丈夫だ」


 少し安堵(あんど)する。聖も正火斗の荷物を近づいて 見ていた。


「明日の夜、聖が泊まりに来れそうだって。だから、みんなで最後にゲームとか怪談とか出来たらって、さっきオープンスペースで話してきたんだ」


「なんとか……なると思う」


 少し歯切れの悪い言葉だったが、正火斗はそう答えた。

 すると 後ろから声がした。


「正火斗……この本貸してほしい…」


 聖だ。荷物の中にある"生物解体図説" と言う本を指差している。


「ああ、それ絵が分かり易いんだ。あげようか?」


 と正火斗は言ったが、聖は断った。


「中、見てみたいだけ。気に入ったら買う。……明日返すから」


「分かった。どうぞ 持っていって」


 聖は正火斗にうなずくと、本を引き抜いて自分のリュックに入れていた。

 風晴は正火斗を見た。


「なんでお前が "生物解体図説"?」


「それ 哺乳類や鳥類や、あと人間もついているから。身体の仕組みは、知識として入れておいた方が良いだろう?何かの時に役立つかもしれない」


 その答えに思わず言ってしまった。


「一体東京でどんな暮らししてるんだよ、お前って」


 正火斗の表情が曇った。風晴も しまったとは気づいたが、もう止められなかった。


「お前のいる世界なんか、オレには想像もつかないけれど……危ない橋ばかり渡るようなことをしているなら──本当に止めろよ、正火斗。お前 そんなことしなくったって、ちゃんと生きられるはずなんだから」


 ちゃんと生きるべき人間だ。本当は。

 義父への復讐になんて 生きずに。


「水樹は前を向いた。自分で治そうと あがいて、秀一を捕まえた。次はお前じゃないのかよ!?」


 正火斗は風晴を見たまま 言葉は 無かった。

 風晴は最後に言った。


「友達だと思ってるなら ちゃんと忠告きけよ!……行こう、聖!」


 風晴は聖を引っ張った。聖は 心配そうに正火斗を見ながらも、男子部屋から出て行った。









次が解決編・水 ラストエピソードになります。

よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
これがラストの章だと思っていたら次の章があったのか。 解決してないことは何だろう? 正火斗の心がまだ救われていないからそれかな? (´・ω・`) 聖は正火斗が一人で勝手に戻らないよう、わざと本を借り…
 海亀のスープ?  初めて聞きましたが、なんでUNOとトランプの間にこれが……?  まあ水平思考型推理ゲームだけに彼ららしくはありますが……。  実は何かの意味がある?
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