表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程  作者: シロクマシロウ子
解決編・水

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/128

今こそ末路へ


ー登場人物紹介ー

桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田風子さくらだふうこ・・・風晴の母親。民宿を営む。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


井原雪枝いはらゆきえ・・・風子に屋敷を貸すオーナー。

大河弓子おおかわゆみこ・・・夏休みの間の民宿の手伝い人。


北橋勝介きたはししょうすけ・・・フリージャーナリスト。

安藤星那あんどうせいな・・・朝毎新報・新聞記者。


羽柴真吾はしばしんご・・・関光組組員。6年前から消息不明。

松下達男まつしたたつお・・・関光組組員。羽柴の舎弟。

緑川みどりかわまどか・・・羽柴真吾の女。6年前から消息不明。


 


 その日の午後──風晴は黒竜池のほとりに立っていた。ジーンズとTシャツで、紺色のキャップも被っている。

 すぐ近くには あの赤い布をまとうお地蔵様があった。お地蔵様の下には枯れたメマツヨイグサが散らばっている。彼の立っている足元にもそれはあり、風晴は目をやった。


 次の瞬間、カサリ と草を揺らす音がした。

 だが振り返ろうとした時には、(すで)に遅かった。




 バシャン…………!!!!!



 全てがあっという間だった。


 一瞬でそれまでいた世界は歪み、うねり、だんだんとそれすらも遠のいていく。

 自分を飲み込み、もがく体にまとわりつき、服に浸透する冷たさは体力を恐ろしい速さで奪っていく。

 そして何よりも……

 開いた口からは気泡すら出なくなっていく。

 飢えた魚のように口をパクパクと必死に動かす。


 空気を! 空気を!クウキヲ…………!!


 だがそこには水しかない。

 自分の周りには水しかない。息がデキナイ。

 水が喉を埋め肺を埋める。肺を超えて肉体の何もかもを潰していく……


 死ぬ! 水に落とされて死ぬ!


 そうだ、オレは突き落とされたんだ。


 オレは背後から押されて、ここに突き落とされた。


 クソッ!息ができない……死んでしまう!

 そして 死体は上がらない……

 これまでの行方不明者達と同じように!!!


 わかっていた。予感はあった。

 だけど どうしようもなかった!




 でも────


 一体 ()()()()()()…………?





 黒竜池の中央に流されながら 風晴は1度の浮上に成功した。息継ぎをして地蔵の方を見た時、そこには確かに人の姿があった。

 2人…………!!


 それは井原雪枝(いはらゆきえ)桜田風子(さくらだふうこ)だった。


(母さん……!!!)


 絶望感の中で、足を何かにとられるような感覚に襲われた。──感覚だけではない。

 孝臣の水流解析データを見たから知っている。

 黒竜池は落ちた者を中央に流し引きずりこむ。そして地底で弾かれて、最後には流良(ながら)川に通じる穴に取り込まれるのだ。

 そうなれば、もう戻っては来れない。


 必死にもがく。浮上を願って。


 だが取り込まれた水中で────

 誰かが自分の手に触れた気がした。


 ……小さな……子供のような……手?


 すると また浮上した。息を吸う。

 次の瞬間──


「風晴!!!」


 桜田風子はシューズを脱ぐと、黒竜池に飛び込んだ。


「母さん!?」


 風晴が驚いて叫ぶ。

 流れの助けと泳ぎの技術があったのだろう、風子は風晴にすぐに追いついた。だが、彼女自身が中央に引きずり込まれそうになる。


「母さん……!」


 風晴は手を伸ばしたが、風子は自らが中央に陣取り──息子を押し出すと叫んだ。


「行って! 行きなさい! 私はいいから……っ」


 言いながら彼女の頭は水中に沈んだ。

 風晴が叫ぶ。


「母さん!!!」


 その時──茂みから飛び出して来た北橋勝介の手には、薄いが、長い鉄板の板が持たれていた。彼は場所を定めるかのように水中を見てから、その板を振りかぶって思い切り差し込んだ。

 そして、風晴と風子に大声で言う。


「上がれ!!今なら水流が止まるはずだ!!」


 泳ぎやすくなって風晴は 母の元へ行こうとした。

 だが 浮上した風子は言った。


「大丈夫!私は自分で行けるから。上がりなさい」


 母がしっかり泳げていたので、風晴もうなずいて池の縁へと向かった。

 手が土をつかみ 草を握った。両腕に力を込めて体を水から上げるが、服が水を吸って物凄く重い。疲労もあって、渾身(こんしん)を振り絞って転がるように上がった。

 それでも()うように身体を起こして、母親に手を貸した。

 母も風晴の手につかまり、共に力を込めて身体を陸にのせる。

 2人はハァハァと肩で息をついた。

 視界の端に北橋が走って来ているのは 分かっていた。

 が、彼は今 脚を止めて 微動だにしていない。


 どうして?


 反対側を振り返って──風晴もその理由が分かった。



 自分と母親には銃口が向けられていた。


 井原雪枝が拳銃を構えて、そこに 立っていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
狙われてる自覚があるのに何故池のほとりに立ってしまうんだろう。 自分をエサにするにしてももう少し防衛策を練ってだね……………。
あれ? なんか間を飛ばしちゃったような展開。 一体何が? (´・ω・`) 拳銃⁉️ (´⊙ω⊙`)!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ