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#22 少女はわからない

 《領域制圧ドミネート》は標識針マーキングニードルに対してかける魔法だ。標識針同士を結んだ内部には魔法をかなり自由に、かつ継続的に仕掛けることができるが、その準備段階としてこの魔法をかける必要がある。

 魔法をかけるための土台作り、といったところだろうか。


 この魔法は、魔法の系統的には付与エンチャント魔法に当たる。付与エンチャント魔法には、《鋳造》や《重弾烈ピ・ツィカート》なような魔法とは違い、変化の様子――魔法の流れを視覚的に捉えることができない。

 厳密には、魔力の流れとしては見ることはできるが、そのためには条件を揃える必要がある。


「とりあえず、いちおうは説明しながらやるが、正直このままだと何が起こってるのか、わかったもんじゃないんだが……まあ、とりあえずしっかり聞いとけよ」


 エアハルトはそう言いながら、ルカの目に右手を添えた。


「え、何?」


「とりあえず、少しでもわかりやすくする。ちょっとだけ我慢しろよ?」


 《索敵眼サーチ・アイズ》、エアハルトは魔法をかけた。


「これで多少は見えやすくなったはずだ」


「?」


 エアハルトはそう言うが、ルカの視界には依然として変わりない景色が存在している。

 何が変わったのだろうか?

 エアハルトは一人で解決してしまい、ルカはすっかり取り残されていた。

 そんな中、説明が始まる。


「それじゃあ始めるぞ。まず、《領域制圧ドミネート》を行うためには範囲にするための標識針マーキングニードルに意識を向ける必要がある」


 エアハルトは言葉を発しながら集中を開始した。しばらくすると、ルカの視界に白い線が見え始める。


「すごい、なにこれ?」


「それは魔力の流れる様子だ。《索敵眼サーチ・アイズ》によって視覚的に魔力を捉えられるようにした」


 白い線はエアハルトから標識針マーキングニードルへと真っ直ぐに真っ直ぐに伸びる。そして、繋がる。


「これで標識針マーキングニードルの制御権を握ることができた。次に、今度は隣同士を結んで、範囲を囲う」


 スゥッと針の珠から互いに引き寄せられるように、白い線が伸び始める。伸びる、伸びる。繋がる。


「そして、まだここまではいいんだが、ここが何言ってるのかよくわからないと思う」


「大丈夫、ここまでもなんとなくでしかわかってないから」


「……そうか」


 それを大丈夫とは言わない。エアハルトはそう思ったが、ルカは魔法については根っからの初心者、まあ仕方ないか、と。

 彼女なりの皮肉なのだろう、と。


「とりあえず見せるだけ見せるぞ」


「うん」


「《領域制圧ドミネート》」


 エアハルトは想像する。今、先で結ばれている領域内に、自身の魔力を行き渡らせる。

 こうやって同調させ、指定範囲に魔法を刻む。それが《領域制圧ドミネート》。


「こうやって……なんて言えばいいんだろうか。このエリア内が自分のものだ、みたいに思うんだ。そうすれば、なんとなくなんとかなる」


「大雑把」


「……仕方ねえだろ、俺がそう思ってやってしまってるんだから」


 付与エンチャント魔法についても魔法の本質は変わらず、やはり想像がそこにある。

 けれど、付与エンチャント魔法は概念的な想像が多く、特に難易度を誇る。

 その中でも「もっと強く」や「もっと速く」などの強化系ならいざしらず、この《領域制圧ドミネート》についてはそういった想像も難しい。想像に要する技術の難易度だけで言えば、複合魔法でないにも関わらずトップクラスの難易度を誇る。

 これが、エアハルトがどうやって教えるべきかと悩んだ原因でもある。


 ただ、《領域制圧ドミネート》、これさえできてしまえば、あとは非常に楽になる。


「ルカ、こっちに来てみな」


「うん」


 テクテクテクとルカがエアハルトに駆け寄る。「手」とエアハルトが手のひらを上に向けて差し出す。

 ルカはその上にちょこんと乗せる。


「久しぶりにやるから、もう一度我慢しろよ?」


「……? うん」


「《魔力共有リンク》」


 んっ……と、ルカは思わず声を出した。


「ちょ。エ、ア……」


「今度はちゃんと先に言ったろ」


「何するかまで言ってよ……もう」


 エアハルトはルカに魔力を分け与え、飽和した魔力を無理やりに自分の体内に取り込む。

 そして、体内に入ってきた魔力が自分の魔力に書き換えられないように慎重に、ルカの魔力を集める。


「ねえ、ま……だ?」


「いや、たぶんこれでもう大丈夫だ。行くぞ?」


「……え? う、うん」


「《領域再制圧リ・ドミネート》」


 エアハルトがそう唱えると、ルカの体に変化があった。

 知らない、わからない感覚が思い切りに体の中を駆け巡る。


 ソゾゾワッと背筋が震える。


 そして、それが落ち着いた頃には。


「……あれ? なんか違う。不思議な感覚がする」


「よし、成功だな」


 ルカがエアハルトの方を向いた。どういうこと? と首をかしげる。


「今、この領域はルカの領域だ」


「なんで?」


「ルカの魔力を主体として、ルカの体を通して上書きした」


 ……? ルカの疑問符は増える。

 エアハルトは頭をガシガシかきむしり、考える。


「あー、どう言えば伝わるんだ? ……ったく、言語化しにくいんだよ魔法ってのは……これだから……」


「あの、えっと、難しいならいいよ」


「いや、いちおう言う。魔力ってのは同調させることができるんだ」


 そうして同調させた魔力を使い、周辺を制圧するのが《領域制圧ドミネート》、そこに新たな術者が上から別の魔力で同調させ直すのが《領域再制圧リ・ドミネート》。

 つまり、《領域再制圧リ・ドミネート》には最初とは別の魔法使いが一人必要になる。それも、《領域制圧ドミネート》可能な。


 ただ、ルカはそれができない。そこで、エアハルトがルカから取り出した魔力で魔法の命令式、型だけ作成。それをルカの体に送り込み、エアハルトの魔力で無理やりにブーストさせ、魔法を使用。


 この、無理矢理に送り込まれ、ブーストさせが、ルカの感じた不快感の原因だった。


「正直成功するかどうかは微妙だったから、なんとかなってよかった」


「ねえ、最初からおんなじようにして私が《領域制圧ドミネート》したらよかったんじゃないの?」


「それも考えたんだがな、《領域制圧ドミネート》は比較的複雑な魔法なんだ。だから今の方法でやっても、無理やりにブーストさせたときに命令式が壊れて、俺の魔力で補完された場合、俺の領域と判断される可能性がある」


 ルカは、ポカンとする。


「それに対して《領域再制圧リ・ドミネート》は上から書き換えるだけだから命令式が単純、少なめの魔力でも結構頑丈に作ることができるんだ」


「そ、そうなんだ……」


「まあ、わかってないのはよくわかる」


 仕方ない、仕方ない。エアハルトがそう言うと、

 ルカはちょっと、不機嫌そうに頬を膨らませた。

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