おまけの話:宴の風景 その1
本当の本当におまけです。蛇足です。
キャラ崩壊気味につき、許せるお方のみどうぞ!
結婚式が終われば、そのあとは披露宴。それはこっちの世界でも変わらないらしい。
ただし日本と違うのは、この祝宴が長時間耐久レースなこと。
一日目に結婚式と、親戚や親しい人々との祝宴。
二日目は近隣の貴族や有力者を招いての祝宴。
三日目は領民たちを招いての祝宴。
合計三日。
私の感覚からすると、とても長い。
一日目、それも日が落ちてまだそう経っていない。この宴は深夜まで続くらしいので、まだまだ序の口だ。
会場を見渡せば、みんな赤い顔で楽しそうに笑っている。
その向こう、黒々とした山の稜線に落ちた太陽の残光が、空を紫色に染めている。
中庭の隅に灯された松明、テーブルの上に等間隔に置かれた燭台。オレンジ色の光は柔らかく、闇を追いやる。
涼しく乾いた夜風が頬を撫でるように通り過ぎて、初めて自分の頬が熱いことに気が付いた。室内と違って酒の匂いがこもるわけじゃないけど、でもちょっとあてられているのかもしれない。
さらりとした生地で出来てる手袋を当てたら少しは冷めるかななんて思いながら、空いているほうの手で頬をおさえた。
この前、二十歳を迎えたので飲めないことはないんだけど、まさか自分の結婚式で酔いつぶれるわけにもいかない。
すすめられるお酒はどうにかかわし、断り切れなかった時だけすこし口をつけて、付き人をしてくれている侍女のメイディアやアウラにそっと渡したり。出来る限り自己防衛はしてるんだけど、この調子で最後まで保つかなぁ?
あ、とても、とても、余談なのですが!
祝宴が始まって最初の頃、どうしても断り切れなくて注いでもらったお酒。
一口飲んだあと、どうしようかと持て余していたらディナートさんが後を引き受けてくれて飲み干してくれた。──のは良いんだけど、飲み干した途端、壮絶に色気のこもった流し目付きで意味深に笑われたので、以後、彼に渡すのだけはやめました。私の心臓に悪い!!
盗み見るように見上げたディナートさんはとんでもない酒豪らしく、顔色一つ変わっていない。勧められるまま杯を飲み干しているにも関わらず、だ。何から何まで完璧すぎてどうしてくれよう。
「どうしました、ヤエカ? 少し酔った?」
私の視線に気づいて、微笑む。
我が夫(夫! 夫だよ! 初めて言った! 言っちゃった!!)ながら麗しい。世界で一番格好いい。
「ううん。元気です。大丈夫!」
見惚れてたなんて恥ずかしくて言えない。
「そう? ならいいのですが。あまり無理はしないように。疲れたら遠慮なく言ってくだ──」
「なに内緒話してんだよ。さすが新婚、熱いねぇ!」
なんて野次が飛んできて、周囲がどっと沸く。ちょっと話してただけなのに、なにこのからかわれようは!
一瞬で赤くなった頬を抑えて狼狽える私のとなりで、ディナートさんはふふんと鼻で笑う。腰に回されていた手にぐっと力が入って、私を引き寄せる。
更に密着したことに目を白黒させている私へ悪戯っぽく笑いかけると、彼は顔を上げて野次を飛ばした男性へ向き直った。
「悔しかったら、お前も結婚したらどうだ?」
彼らしくない乱暴な口調にちょっと驚いた。
けど、話しかけられた人も周りの人たちも全然気にしてない。この人たちに対するディナートさんは、いつもこんな話し方をしてるんだろう。
「ケッ! 自分が幸せだからってスカしてんじゃねーぞ、こら」
口調こそ怖いけど、ディナートさんを見る目も口元も楽しげだ。対するディナートさんも似たような顔をしている。きっと気の置けない仲なんだろう。
「ああ、そうだ。思い出した。お前、最近夢中になってただろ……ほら、あの花売りの。名前は何て言ったかな……」
「う、うわー! それ以上言うなっ! 心の傷を広げるんじゃねえ! つか、なんでこんな田舎に引っ込んだお前が俺のこと知ってんだよ!?」
名前も知らない彼は、ディナートさんの言葉に相当なダメージを受けたのか、テーブルに肘をついて頭を抱えている。
「ディナートさん。あの……?」
どなたですか? の意味を込めてディナートさんを呼ぶ。せっかく来てくれた方々の名前も知らないなんて失礼だもん。
彼は今しがたようやく気付いたという風に「ああ!」と頷いた。
「紹介がまだでしたね、ヤエカ。──こいつらはうるさいんであんまり紹介したくないんだけど」
「おまっ!? ひでぇな、おい」
「ちょっとそれ新郎の態度じゃねぇぞ!」
「相変わらず可愛げねーな」
ポンポンと文句が返って来る。ディナートさんはそれを涼しい顔で知らんぷり。
「このむさ苦しいのは、私とほぼ同時期に仕官したやつらで。それ以来の腐れ縁なんですよ」
つまり、同期とかそう言う感じなのかな?
「左端からエナス、ディオ、トリスと……」
「どーも!」
「初めまして」
「お噂はかねがね」
ディナートさんを遮って、エナスさん、ディオさん、トリスさんが笑いながら会釈をする。
三人とも黒い制服を着ているけれど、でも上着の袖や裾、前立てのふちどりの色と、襟の刺繍が違う。それぞれ所属が違うんだろう。
「あ、えっと。初めまして。八重香です。今日は遠いところをお越しいただきまして、ありがとうございます」
このあと日本的に『いつも主人がお世話になっております』と続けそうになって、止まった。
えー、えーっと。『主人』なんて言って良いのかな!? だってさっき結婚式あげたばっかりなのにいきなり言っちゃったら、なんかこう……恥ずかしくない!?
だいたいいきなり『主人が~』なんて私が言い出したら、ディナートさん嫌じゃない!?
ねぇねぇねぇねぇ!? 誰かおーしーえーてー!
……と言う心の中の阿鼻叫喚をよそに、男性陣は楽しそうに盛り上がっている。
「噂に違わず可愛らしいお嬢さんじゃないか、ディナートには勿体ねーな。なぁ?」
「だよなー! ヤエカさんはこいつのどこが良くて結婚する気になったの?」
「ねぇ、こいつと結婚すんのやめて、俺んとこ来ない?」
「……もう帰って良いぞ。むしろ帰れ」
「だからさ、お前のその態度、全然新郎じゃねえってば!」
真顔で言い合ってにらみ合い、一呼吸おいて爆笑。
しばらく楽しく談笑していたんだけど、一か所にとどまってるわけにはいかない。
「まぁゆっくり楽しんでいってくれ」
「おう。遠慮なくそうさせてもらうよ」
「ヤエカさんもまたね。今度ゆっくり昔のディナートの話をしてあげるから」
「余計なこと吹き込むな!」
いたずらを思いついたように笑うトリスさんへ、ディナートさんが拳を叩き込……もうとしたけれど、拳はトリスさんの大きな手のひらに阻まれた。ディナートさんも本気で殴ろうとしてたわけじゃなくて、二人はにやりと笑い合った。
「聞かれて困ることでもあるのかよ?」
「あることないこと話すつもりだろう? こういう時のお前ほど信用できない者はいないからな」
「失礼だなぁ。嘘なんてつかないさ。ただ、多少誇張はするかもしれないけど」
「世間ではそれを嘘って言うんだが?」
「えー?」と不満そうな声を、全然不満そうじゃない声音で言いながらトリスさんが身を引いた。
「冗談はこの辺にして、っと。──ディナート、ヤエカさん。結婚おめでとう」
ニヤニヤ笑いを微笑に変えて、トリスさんが言う。
続いて、
「おめでとう」
「幸せにな」
エナスさん、ディオさんも微笑む。
黙ってうなずくディナートさんの横で、私は「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。
三人の席から離れながら、頬が緩むのを止められない。
そっかあ。ディナートさんって、友だちと喋る時はあんな風なんだね。
「楽しそうですね、ヤエカ?」
「ディナートさんの意外な一面を見られましたから」
見上げた彼の顔は、困ったような照れたような、少しムッとしたような複雑な表情だった。それがよけい可笑しくて、つい爆笑しちゃったのは、宴の雰囲気と酒の匂いに酔ってたからかもしれない。
「昔のディナートさん、見てみたかったなぁ」
「見ても面白くありませんよ。──ヤエカ、ちょっとじっとして」
言いながら、彼は私の顔にそっと手を伸ばした。笑いすぎて目尻に溜まった涙を彼の指が拭う。かすかに触れたすこし冷たい指先の感触に、胸がドキドキする。それでなくても火照った頬が更に熱くなる。きっと茹でダコ以上に真っ赤なはず。松明の光の赤さで誤魔化せればいいけど、恐らくこの至近距離じゃ無理だ。
その証拠にディナートさんはさっきまでと打って変って余裕たっぷりの笑顔に戻ってる。これは絶対分かっててやってるんだよ!
「じ、自分で……」
「手袋が汚れるでしょう? いいから大人しくしていなさい」
「でもー!」
言い争っているうちにもう片方の目の端に溜まった涙も拭われていた。
「これでいい」
「──ありがとう、ござい、ます」
ちょっとしっくりこないけど、やって貰ってお礼を言わないのは気持ち悪い。渋々お礼を言えばディナートさんは「どういたしまして」と笑った。ついでとばかりに、後れ毛をそっと梳いて耳にかける。火照った頬と耳の辺りをそっと滑る指先の冷たさが心地いい。
どうしよう。やっぱり幸せすぎて怖いかもしれない。
「ヤエカの小さい頃なら、私も見てみたいかな」
「え!? それこそ見ても面白くないですよ!」
思わず、さっきのディナートさんと同じ答えを返してた。
ディナートさんの昔は見たいけど、私の昔はちょっとお披露目したくない!
唇を尖らせてそっぽを向いたら、ディナートさんが楽しそうに噴き出した。
「面白くないなんてことありませんよ。さぞ可愛い子どもだったでしょうね。出来ることならもっと早くに出会って、少しでもたくさんの貴女を記憶に焼きつけたかったな」
「え、あ、あの! その!」
いきなり甘い言葉を囁かれて、心臓が止まるかと思った。強烈な攻撃やめていただきたいものです。胸が痛い。
でも狼狽えるのは私だけで、ディナートさんは涼しい顔だ。ちょっと悔しい。
そこへ上機嫌な声が割って入ってきた。
「やぁやぁ、ディナート君! 君、いま昔の八重香を見たいと言ったか!?」
「お、おかーさん!?」
振り向かなくても分かる。母だ。
嫌な予感がする。
嫌な予感しかしない。
背後からコツコツとせわしない靴音が響いたと思ったら、次の瞬間、肩にぐぐっと力がかかった。
私とディナートさんの肩に手を置き、母が私たちに割り込むようにぬっと顔を出す。
「良いねぇ~良いねぇ~。良いこと言うじゃないか。あーはっはっは!」
上機嫌で笑う母。それを呆気にとられたような顔で見るディナートさん。
私はと言えば、額に冷や汗を浮かべながら二人を交互に眺めるしかない。
どこで私たちの会話を聞いてたの!? あなた今、歩いてきたよね? 歩いて来なきゃいけない距離にいたんだよね!? それなのに聞こえてたの!? なにそれ、地獄耳怖い!
「昔の八重香はぁ~めっちゃくちゃ可愛かったんだぞぉ~!」
赤い顔に、座った目。伸びきった語尾に、ちょっとアヤシイ呂律。これは完全に酔っている。どれだけ飲んだの? ここまで飲ませたの誰だ!?
周りに視線を走らせると、ソヴァロ様とルルディが二人の世界を構築しているその傍で、弟の晴章が悪びれもせずに手を振っている。そのまた隣に座った父がすまなそうに肩を竦めて視線を逸らした。
あのあたりか。あのあたりが止めもせず酔わせたのか! 酒が入るとウザいぐらいハイテンションになるって知ってるくせに! お父さん! 何年この人の夫やってるのー!!
「な~ディナートくーん。見たいだろう、うちのかっわいい娘の、昔の姿」
「お母さんっ! 良いから。そう言うの必要ないから。ね、自分の席戻ってよ。ね? ね?」
「い~から、い~から! 八重香は黙ってなさ~い! あははは~」
めちゃくちゃだ、この人。
ああ、この悪魔のような酔っ払い。何をしでかすつもりなんだろう。
「こんなこともあろうかとぉ~、私はぁ~、良い物を持ってきている! さぁ、ディナート君、私に感謝したまえ」
母はディナートさんと私の行く手を阻むように立ちふさがると、大仰な仕草で右手を顔の前に掲げた。
その手を軽く振ると、紙の束が現れた。
それをトランプのカードのようにすらすらっと広げる。
酔っ払いのくせに器用だ──なんて悠長なことを考えていられたのはほんの数瞬。
あーー!! あの紙の束は……写真!?
「ぎゃーーー!!! おかーさん! そ、それはっ」
「えへへ~! 父さんがこっちに移住する時、持ってきてもらったんだ。これだけじゃないぞ~、もっとあるんだぞ~、ほら!」
言いながら左手も軽く振る。と、さっきみたいにまた写真の束が出現した。
「お母さん、しまって! その写真しまってー!!」
できればディナートさんの目に触れないうちに!
なのに母はニヤッと笑いながら私を無視する。
「さーディナート君。どれが良い? 乳児、幼児、幼稚園生、小学生、初々しい中学生に、天下の女子高生まで各種取り揃えてあるが?」
「チューガクセー? ジョシ、コーセー?」
「あ、そうか、こっちの人間には分かりにくいな。よし、言い直そう。ディナート君、何歳ぐらいの八重香が見たい? 生まれたばかりから十九歳まで各種取り揃えてある。これは写真と言ってな、凄く精緻に描かれた絵画のようなものだ」
説明する母の口調は何故かめちゃくちゃシリアスで、呂律もしっかりしてる。さっきまでのあの酔っ払い口調はどこへ行った!?
「生まれたばかりから、十九歳までのヤエカ…………」
ちょっと待って! ちょっと待って!! ディナートさん、ちょっと待って! 真剣に悩まないで!!
母の手からチラチラ見え隠れする写真をみると絶対絶命のピンチを痛感せずにはいられない。
だって……
オムツ一丁でダンシングな私、涙と鼻水でグチャグチャの泣き顔、弟と取っ組み合いの喧嘩してる姿、運動会の徒競走で派手に転んだ瞬間、中学校の正門で入学式に撮った写真はリボンが曲がってるし、高校時代の写真に至っては、よりにもよって突風で煽られたスカートを手で押さえてるやつだし!!
ここからは見えない写真だって、きっとあれと似たり寄ったりの、ディナートさんに見られたくないものばかりに違いない。
新婚早々、あんなもの見られてたまるかー!
「お母さん、写真はまた今度ゆっくりでいいじゃない」
「やだ~、だめ~、いま見せるんだ~。ディナート君だって見たそうにしてるじゃないか~」
また酔っ払い口調に戻ってる。くねくねと変な踊りを踊る姿を見てたら、分かった。だめだ。何を言っても無駄だ。
「ディナートさん、ごめんなさい。ちょっと離れててもらえますか?」
「ヤエカ!?」
言ってきかないなら、実力行使あるのみ。
今だってディナートさんの指導のもと、毎日稽古を続けてるんだから、こんな酔っ払いに負けるはずがない。
なんとしてもアレを奪わなければ。
体の奥から引き出した力が、体を巡る。その気配を察知したディナートさんがぎょっとした顔で私を見下ろし、母は面白そうに唇を吊り上げた。
「待ちなさい、ヤエカ! 何をするつもりですか!」
「ほほ~う。やる気か、八重香。良いねぇ~面白いねぇ~。かかってこぉ~い! あーはははっ!」
やっぱりここはストレートに一発かまして、素早く追撃を……
「わー! わー! ねーちゃん、ちょっと待て! いまそれぶちかましたら、ここ地獄になるから!」
「大丈夫、ちゃんと周りに結界張るから」
そのくらいは考えてるってば。と晴章を睨めば、呆れたように肩を竦めている。
「そーゆー問題じゃねーだろ!? なんだよ、おふくろだけじゃなくて、ねーちゃんまで酔っぱらってんのかよ!?」
「失礼な。酔ってない」
「酔っ払いはみんなそう言うんだよ。──義兄さん、悪いけどねーちゃん押さえてて」
義兄さんと呼ばれたディナートさんは少し戸惑ったように「承知した」と言いながら、私の肩に手を置いた。途端、体を巡っていた力が消え失せる。やられた。これじゃあ力が出せない。
「ヤエカ、落ち着きなさい。貴女が嫌ならシャシンとやらは見ませんから。ね?」
「ほんとに?」
「ええ。もし、貴女が私に見せても良いと思うものがあったら、その時は見せてください」
「う……分かりました。じゃあ、あとであの写真の束、チェックしてみます」
良かった~! 嫌な写真は見られなくて済みそうだ。
ホッと一息ついて母のほうを振り返ると、ちょうど父に写真の束を没収されているところだった。
「恵梨香さん。こう言う悪ふざけ、僕はイヤだな」
「う……」
「ちょっとやり過ぎだよ。八重香が困っているだろう?」
「む……」
「向こうで少し酔いを醒まそう」
「むー……」
父は私たちに向き直って「すまなかったね」と謝って、まだ不満そうに唇を尖らせている母の肩を抱きながら、四阿のほうに歩いていた。あそこなら人もいないし、涼しいし、酔いも醒めるんじゃないかな。
「なんだ、もう終わりか! 残念だな」
ガハガハ笑いながらそんな適当なことを言うのはアハディス団長だ。
それに同調するような声もあちこちから上がっている。『え!?』っと思って辺りを見れば、いつの間にかみんな席を離れて遠巻きにしている。それぞれ自分の杯と皿を手に持って退避していたらしい。
「不発かぁ~」
「まぁ食べ物も無事だったし、これはこれでいいんじゃないか?」
そんなことを口々に言いながら席へ戻っていく。
やだ、どうしよう。
つい怒りに任せて披露宴をぶち壊しにするところだった! 顔から血の気が引く。
「騎士の結婚式には乱闘がつきものなんだが、まさか新郎じゃなくて新婦がおっぱじめるとは思わなかったぞ! さすがヤエカ殿だ!」
アハディス団長は笑いながら、私の背中をバンバンと叩く。
痛い。すごく痛い。
けど、それよりなにより気になったのは──
「え? 乱闘が……つきもの?」
「ん? まぁ、名物だわな」
「え? え? えええ~!?」
本当に?
尋ねるようにディナートさんを見上げれば、彼は何でもない事のように笑って頷く。
「ええ。本当ですよ。だからそんなに青い顔しないで。二ホンではない風習なんですね」
「飲んで騒ぐことはありますけど、乱闘はあまり聞いたことが……」
「ずいぶん大人しい祝宴なのですね」
感心したようにため息をつかれたけど、乱闘騒ぎがあるこっちの結婚式がちょっと怖いです。
「安心してください。明日と明後日の祝宴は静かですよ。今日は親しい者同士の無礼講でしょう? じゃれあってるようなものです」
郷に入っては郷に従え。
そう言うけれど、これはちょっとびっくりだ。
今日の宴が終わるまでにまたひと悶着ぐらいあるんだろうか。
今しがた大立ち回りを演じようとしていたことを棚に上げて、私は遠い目をして夜空を見上げた。
あんまり気にしたことなかったけど、やっぱり異文化は異文化でした……!




