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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第六章 王都セントラル編
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92話 決戦の扉 - 静かなる突入

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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王宮中央広間――

かつて宴が開かれ、貴族たちが笑い合ったその場所は、今や戦の痕跡が色濃く残る静寂の場と化していた。


だが、空気は騒然としていた。魔力の残滓が漂い、まだ熱を帯びた床が戦の激しさを物語っている。


「中央、制圧完了。残敵の抵抗なし。扉の向こう――王の間に動きはありません」


報告する騎士の声に、マコトは一つ頷く。


「……静かすぎるな。まるでこちらが来るのを待っているかのようだ」


低く響く声。その口調に焦りや驕りはない。ただ事実を見つめ、冷静に策を巡らせる姿は、まさに軍師のそれだった。


アリアは、緊張で乾く喉をひとつ飲み込む。


(ここを越えれば、すべてが終わる……でも――)


足元には、以前イリスが浄化の力で癒した石畳。かつてこの場で血を流した仲間たちの顔が、脳裏に浮かぶ。


「怯えているのか?」


低い声がして、アリアは顔を上げた。


マコトが、静かな瞳でこちらを見ていた。


「……少しだけ。怖くないわけ、ないよ」


「なら、良い」


「え……?」


「恐れを知らぬ者は、命を軽んじる。だが、恐れを超えて歩む者は……己のすべてを懸けて立てる」


それは、ただの慰めではなかった。マコトの言葉には、彼自身の覚悟と痛みがにじんでいた。


彼もまた、戦場で数えきれぬ犠牲を背負ってきたのだろう。だからこそ、アリアの怯えを否定せず、寄り添うことができる。


「ありがとう、師匠。……行こう。私たちの戦いを、終わらせに」


その言葉に、エリオットが杖を持ちかえながらにやりと笑った。


「アリアがそう言うなら、僕も張り切るよ」


「ぽよん」


イリスがアリアの肩に跳ね上がり、控えめに気勢を上げた。


マコトが扉の前へと歩を進める。彼の背に続くように、アリアたちも並び立った。


扉の前には、ひとりの男が立ちはだかっていた。


中年ほどの年齢、だがその目には強い狂気のような光が宿っている。黒衣をまとい、片手に魔導具を持つその姿からは、ただ者ではない雰囲気が滲み出ていた。


「……通すわけには、いかぬ」


「名を」


マコトが問う。


「我は元老院直属・暗部の残滓。かつてこの国の”闇”として生き、滅び損ねた存在」


「なるほど。役割を終えてなお、居座るか」


「お前たちには、まだ理解できまい。この国を守るために、どれだけの犠牲が必要だったか。理想だけでは、国など保てぬのだ」


「理想なき犠牲に、意味はない。お前の言葉はただの詭弁だ」


マコトの声は冷たかったが、その奥に確かな怒りがあった。理想を捨てた者が、民を導く資格などない。


アリアが前に出る。


「あなたのような人がいたから、誰かが泣き、苦しみ、命を落とした。だからこそ、私たちは変えたいの。恐れに屈しない国に」


敵の男がかすかに目を見開き、ふっと笑った。


「サクラの孫か……やはり、面影がある」


「……あなた、母のことを知ってるの?」


「愚かな女だったよ。聖女制度を変えたいなどと……理想を語り、背を向けた。だが、君は違う。君には“受け継がれる意志”がある」


「……それは、認める。けれど、その意志は、あなたの“選民思想”なんかに縛られたくない」


「フッ……いい目をするようになった。さあ、越えてみせろ。新たな時代を切り拓けるかどうか、試してみるがいい」


男が魔導具を構えると同時に、魔力が広間に満ちる。


マコトが一歩前に出た。


「……アリア、ここは俺が抑える。お前たちは先へ行け」


「でも――」


「お前の役割は、扉の向こうにある。俺がここに残る意味は、それしかない」


アリアは迷いながらも、マコトの背を見つめ、そしてうなずいた。


「……ありがとう、師匠。絶対、戻ってきて」


「おう」


マコトが最後に見せた微笑みは、どこか切なげで、そして確かに頼もしかった。


アリア、エリオット、イリスが王の間へと続く扉へ駆けていく。マコトは、後ろ姿に向かって静かに呟いた。


「……生きて帰れよ。俺たちの“選んだ未来”を、その手で掴め」


 


――決戦の扉が、静かに開かれた。




ーーー93話へつづく


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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