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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第六章 王都セントラル編
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91話 ルシウスの怒り - 背を預けた誓い

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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灰色の空が王都の上空を覆い尽くしていた。雨こそ降らぬものの、今にも泣き出しそうな重い雲が、王宮を包み込む。中庭に集まった騎士たちの間を抜けて、ルシウスは静かに歩を進めた。


その視線の先には、黒衣の男――元老院議員の一人、かつて父ヴィクトルを謀略によって追い詰めた張本人が立っている。名をヘルマン。白髪交じりの長髪を風になびかせ、唇には薄く笑みを浮かべていた。


「まさか、このタイミングで貴殿が現れるとはな…」


ルシウスの声は低く、怒気を含んでいた。手には既に剣の柄が握られている。


「副団長!」


駆け寄ってきたのは弟のユリウスだ。眉を寄せ、兄の前に立ちはだかるようにして制止する。


「落ち着いてください。この場は剣を交える場所ではありません」


「だが、こいつは…父を…」


声を荒げかけたルシウスだったが、すぐに口をつぐんだ。その拳に込められた力が、彼の胸中を物語っていた。


ヘルマンはそんな兄弟のやり取りを見て、鼻で笑った。


「まったく…相変わらず感情で動くな。まるで若き日のヴィクトルそっくりだ」


その名を聞いた瞬間、ルシウスの瞳が怒りに燃える。剣が鞘からわずかに抜き放たれた。


「父を侮辱するな。あの方は最後まで民と正義のために戦った。貴様のような人間に、卑劣な手で追い詰められるような人ではなかった…!」


ユリウスがそっと兄の腕に手を添える。力ではなく、静かな意思を伝えるように。


「兄上。あなたの怒りは、私も理解しています。ですが、それを力で示すことが正しいとは限りません」


その言葉に、ルシウスの呼吸が一瞬止まり、次第に落ち着いていく。


ヘルマンはそんな二人の姿を眺めながら、愉快そうに肩をすくめた。


「確かに…ユリウスの言う通りかもしれんな。ルシウス、お前が今ここで私を斬っても、何も変わらない。むしろ、貴族派の思うつぼだ」


「ならば…」


ルシウスは視線を落とし、ふっと息を吐いた。


「私は父の遺志を継ぐ。ここで感情に溺れて終わらせるわけにはいかない」


「そうです、兄上。私たちは、正義の在り方を知っています」


ルシウスは弟と一度目を合わせ、力強く頷いた。


「…だが、その前に一つだけ聞かせてくれ」


剣を鞘に戻し、ルシウスは一歩前に出る。


「お前たちが隠蔽し続けてきた『聖女制度の裏側』、そして『ミストラル村の実験』……どこまで関わっていた?」


その問いに、ヘルマンは初めて口元の笑みを消した。


「……それを知って、どうするつもりだ?」


「真実を、正しい形で世に示す」


その声には、怒りでも悲しみでもない、揺るぎない信念が宿っていた。


その瞬間、王宮の鐘が遠くで鳴った。いよいよ最終決戦の幕が上がろうとしていた。


ユリウスは兄の背に視線を送りながら、小さく呟いた。


「背中を預けるに足る兄で良かった」


それは、静かな誓いだった。


そしてルシウスもまた、弟に聞こえぬように小さく呟いた。


「ありがとう…ユリウス」


空はまだ灰色のままだったが、その雲の隙間から、かすかな光が差し込み始めていた。




ーーー92話へつづく

※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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