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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第六章 王都セントラル編
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80話 繋がる鏡 − 繋がる想い

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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王宮の静かな一室。

蝋燭の灯が淡く揺れる中、長机の上には丁寧に包まれた鏡が整然と並べられていた。


「よし、全部揃ったな」

カイルが微笑みながら机の上を見渡す。


「仕上げは万全。あとは、渡すだけね」

エレノアが静かに頷いた。


千里鏡——戦場で仲間たちを繋ぐため、ふたりが力を尽くして完成させた、特製の魔導具。

いよいよ、それを一つずつ手渡していく時間が始まった。



最初に現れたのはアリア。

彼女はそっと鏡を受け取ると、小さく息を呑んだ。


「これ……星の光みたい」


手のひらに収まる小さな手鏡には、銀細工の装飾と星模様の刻印が施されている。


「お守りにもなるよう、私が術式を加えたわ」

エレノアが微笑む。


「鏡の裏側、夜空を模したのは僕のアイデアさ」

カイルが少し照れたように言った。


「ありがとう……この子と一緒に、明日を迎えるね」



次に現れたのはレオン。

彼は革製の手帳のような形の鏡を手に取り、口笛を吹く。


「見た目も中身も、かなり凝ってるな。……これ、俺好みに仕上がってるじゃん」


「暗号化通信と情報の仕分け機能も搭載してあるわ。君なら、使いこなせるでしょう」

エレノアがさらりと答える。


「外見は地味にしたけど、中身はギリギリまで詰め込んだよ」

カイルの声には自信が滲んでいた。


レオンは鏡を閉じ、手のひらで軽く叩く。


「……感謝は、明日の無事で返すさ」



エリオットは、重厚な小箱を両手で受け取ると、鏡を取り出し、じっと見つめた。


「なるほど、魔法支援の術式が組み込まれている……これなら、戦闘中でも的確に対応できるな」


「君の戦い方に合わせて設計したの。魔力の流れも補正してくれるわ」

エレノアが補足する。


「動きの中で使えるように軽量化もした。僕としては満足の仕上がりだよ」

カイルが少しだけ誇らしげに言った。


「……ありがとう。俺の役目は、誰も欠けさせないことだ。必ず守る」



ルシウスとユリウスは、並んで鏡を受け取った。

ルシウスの鏡は金属製で、まさに軍用といった趣。


「これは……まさに俺のための造りだな」

ルシウスが低く唸る。


「耐衝撃、同時通信機能つき。騎士団副団長にはこれくらい必要でしょう?」

エレノアがわずかに誇らしげに微笑んだ。


一方、ユリウスの鏡は軽量かつシンプル。


「兄上とつながっていられる仕様……さすが、気が利いていますね」

ユリウスは静かに微笑む。


「軽さと耐久性、両立させるの大変だったんだよ」

カイルはこめかみを掻いたが、どこか嬉しそうだった。



マコトには、飾り気のない鏡が手渡された。


「ふむ。……悪くない。むしろ、好みだな」


「無駄な機能は省いたけれど、壊れないことだけは保証するわ」

エレノアの声には信頼が込められていた。


「耐久試験、カイルの全力パンチでクリア済みだから」

カイルが得意げに言うと、マコトが思わず吹き出した。


「……なるほど。それは心強い」



マーガレット夫人には、小さく繊細な装飾の鏡が渡された。


「まぁ……素敵な仕上がりだこと。衣装にも馴染みそうね」

夫人は優雅に微笑む。


「飾りとしても通用するように細工したの。貴族婦人の嗜みとしてね」

エレノアが、いつもより柔らかい声で答える。


「でも、中身は王妃仕様と同等だよ」

カイルがにやりと加えると、夫人はくすくすと笑った。



皆に鏡が行き渡り、場が落ち着いたそのとき——

エレノアがふと手元の包みを取り上げた。


「……これ、あなたの分」


「えっ、僕のは……自分で作ったやつで十分だよ?」

カイルがきょとんとする。


「でもこれは、“私が”あなたのために用意したもの。ちゃんと受け取って」

エレノアは少しだけ視線を逸らして差し出した。


カイルは一瞬驚いた顔をしたが、やがて笑みを浮かべてそれを受け取った。

包みを解くと、中から現れたのは深い青に銀の紋が刻まれた、コンパクト型の千里鏡。


「……これ、僕の魔力量と周波数に合わせてある」


「あなた、いつも皆のことばかりで、自分のことは後回しだから」

エレノアは、少しだけ拗ねたように言う。


カイルは鏡を手のひらで転がし、じっと見つめた。


「……ありがとう。ちゃんと受け取る。これは僕の、戦場用装備だ」


「そう、それでいいのよ」

エレノアがわずかに笑った。



最後に、エレノア自身の鏡。

王宮の魔術師団長室に設置されている姿見型に加えて、携帯用には宝飾が施され、特注の術式が刻まれている。


「……これで、全員ね」

エレノアが確認するように呟く。


「王妃陛下と、聖女サクラ様には昨日のうちに届けておいた」

カイルが肩を竦めた。


「明日の決戦までには、きっと届くはずよ。……この鏡が、皆を繋ぐ」


静かな空気の中、仲間たちはそれぞれの鏡を胸元に収める。


それはただの道具ではない。

――互いを信じ、繋がり合うための“証”。



そして後日——


アリアは王宮の片隅に住まう変わり者の王族、グレゴール叔父のもとを訪れていた。


「叔父様……これ、あなたにも持っていてほしいの」


「これは……千里鏡? ふふ、私には勿体ないな」


「そんなことない。叔父様は、父のこと、王家のこと……何よりも私に“今”を教えてくれた。だから、遠くにいても繋がっていてほしいの」


グレゴールは少し驚いた表情を浮かべ、それからそっと鏡を受け取った。


「……ありがとな、アリア。お前の旅路が、光に包まれるよう祈ってるよ」


——こうして渡された鏡は、ただの道具ではなかった。


それぞれの絆を結ぶ、“証”。

それぞれの心に、互いを想う力が宿る。


——明日へと続く、その先の未来のために。



80話:終わり

※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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