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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第六章 王都セントラル編
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73話 交錯する思惑 - 師の眼差し、王宮の気配、そして過去を語る夫人

エレノアの瞳に宿った、戸惑いと悲しみが混ざり合った光。アリアは、オルゴールが確かに過去への扉を開いたことを感じていた。温かい思い出が蘇ったエレノアの心は、不確かな死、そして胸に重くのしかかるアルトリウム王国の紋章の意味を考え、深く痛んでいた。それでも、その瞳の奥には、隠された真実を掴み取ろうとする、静かで揺るぎない炎が燃えていた。


王宮の訓練場では、マコトの鋭い眼差しが、騎士たちの動きと魔術師たちの詠唱の一つ一つを注意深く見守っていた。ルシウスの誠実さ、ユリウスの内に秘めた才能。彼ら二人の従兄弟は、アリアの帰還を心から喜び、訓練後にはよく一緒に夕食を囲み、かつてのように温かな交流を続けていた。


しかし、マコトの老練な目は、一部の古参の騎士や魔術師たちの間に漂う、微妙な緊張感を捉えていた。彼らの言葉の端々、ふとした沈黙。その空気には、まるで過去の痛ましい出来事を意図的に覆い隠そうとするかのような、奇妙な違和感が漂っていた。


一方、アリアはエレノアから、両親が生前、マーガレット夫人と親交があったという意外な事実を聞かされた。かすかな希望を胸に、アリアは夫人を訪ねた。

古風で落ち着いた雰囲気の応接室で、アリアはマーガレット夫人の前に座った。窓から差し込む柔らかな光が、夫人の深い皺を優しく照らしていた。


「夫人、今日はお時間をいただき、ありがとうございます」

アリアは、丁寧に言葉を切り出した。

「私の両親のこと、特にアルトリウム王国との関わりについて、何かご存じないでしょうか?」


マーガレット夫人は、遠い記憶を辿るように、ゆっくりと目を閉じた。

「あなたのご両親ね……ええ、よく覚えていますよ。とても熱心に研究に打ち込んでいらっしゃいました。特に、古代魔法について、熱心に研究していましたね」

夫人の優しい声は、記憶のフィルターを通して、温かみを帯びていた。

「時折、不安そうなご様子をされていたこともありました。何か、目に見えない影に怯えているような……でも、具体的なことは何もおっしゃいませんでした」


アリアは、夫人の言葉一つ一つを大切に心に刻んだ。

「リリアさんのご一家とも、面識がおありだったと伺いました」

夫人は、穏やかな微笑みを浮かべた。

「ええ、何度かお会いしました。とても誠実で、清らかな心を持った方々でしたね。特に、リリアさんは太陽のような明るい笑顔が印象的でした」

エレノアの記憶と重なる夫人の言葉に、アリアは胸が締め付けられる思いだった。


「父が、いつも手帳のようなものを肌身離さず持っていた、という記憶はありますか?」アリアは、かすかな期待を込めて尋ねた。

夫人は少し考え込み、眉をひそめた。

「手帳……ええ、確かにいつも持っていらっしゃいましたね。何か大切な研究の記録を書き留めていたのでしょう」

アリアは、その情報に一筋の光を見出した。


続けて、アリアは母方の家系、アルトリウム王国との繋がり、そして古代魔法や古代王家について、慎重に尋ねた。夫人は、知っている限りの記憶を丁寧に、誠実に語ってくれた。古代の魔法の力、王家に流れる隠された血筋、そして歴史の中に埋もれた不確かな出来事の数々。夫人の言葉は、まるで古代の物語を聞いているかのようでありながら、アリアの今の探求とも深く結びついていた。


別の日、アリアはレオンの隠れアトリエを訪れていた。古びた書物や研究用の道具が整然と並べられたその空間で、アリアはオルゴールの紋章の詳細なスケッチと、エレノアから聞いた断片的な記憶について説明した。


「レオン、あなたの広い情報網を使って、このアルトリウム王国の紋章に関する古い記録を探してほしい。そして、エレノア様の両親が研究していた古代魔法についても、何か手がかりがないか調べてほしいんだ」


レオンは、アリアの真剣な眼差しを受け止め、静かに頷いた。


「承知した。古い埃に埋もれた真実を、たとえわずかでも見つけ出してみせる」


一方、エリオットは王宮の書庫に通い詰めていた。元書記官としての彼の広い人脈と、古文書に対する深い知識が、かすかな手がかりを探す上で大きな力となっていた。かつての王命書、失われた研究の記録、そして公式には決して公表されなかった不確かな報告書……。エリオットは、古い埃にまみれた文書の海の中を、静かに、しかし着実に進んでいた。


それぞれの場所で、隠された真実を求める小さな動きが始まっていた。師の老練な眼差し、王宮に漂う不確かな気配、そして過去を優しい声で語る夫人の記憶。すべてが、かすかに、一つの隠された陰謀へと繋がっていた。



73話:終わり

〈登場人物〉

* アリア:エレノアの記憶の手がかりを元に、陰謀の真相を探る少女。

* エレノア:リリアとの記憶を取り戻し、両親の死の真相を求める女性。

* マコト:王宮の訓練指導を通じ、不穏な気配を感じ始めるアリアの師。

* マーガレット夫人:アリアの両親とリリア一家を知る、過去を語る夫人。

* レオン:アリアの依頼を受け、紋章と研究に関する調査を開始する情報屋。

* エリオット:元書記官として、王宮の過去の記録を探る協力者。

✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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✪読んでくださり、ありがとうございます。

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