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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第六章 王都セントラル編
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71話(前編) 再会と探求 - それぞれの動き、そして新たな手がかり

アリア、レオン、エレノア。三つの想いが、絡み合う糸のように、過去へと向かっていた。愛する者の身に起きた出来事の真相を求め、それぞれの場所で、それぞれの方法で、微かな光を手繰り寄せようとしていた。


王都の静寂に包まれた図書館。埃を被った古文書の頁を繰るアリアの指先は、微かに震えていた。

肩に乗るイリスに、そっとささやく。


「ねえ、イリス……これ、何か変だと思わない?」


イリスは静かに光を揺らした。

アルトリア王国に関する記述の中に、ぼんやりと浮かび上がる影を感じ始めていたのだ。

何かがおかしい。平和な文章の裏に潜む、冷たく湿った空気のような不吉な気配。それは、長い年月積み重ねられた歴史の埃の中に、確かに息づいていた。


アリアは本を閉じ、そっと立ち上がった。


「……行こう。きっと、まだ続きがある。」


イリスがふわりと後ろをついてくる。


**


一方、大商会の堂々たる建物で、レオンは酒場の片隅、フードをかぶった男と向かい合っていた。


「事故の夜、何か変わったことは?」


低い声で尋ねると、男はグラスを傾けながら答える。


「さあな……ただ、北の砦で妙な動きがあったって話は聞いたぜ。」


「妙な動き?」


「兵の数が増えたとか、誰にも言えない命令が下ったとか……。王家の連中が裏で何かやってたって、噂だ。」


レオンは眉をひそめた。


「それ、もっと詳しく知ってる奴はいないのか?」


男は肩をすくめる。


「金次第だな。」


レオンは小さく舌打ちし、銀貨をテーブルに滑らせた。


「……これで、少しは思い出すんだな。」


**


王宮の、静かでどこか物悲しい回廊。

エレノアは両親の残した色あせた手記を、膝の上に広げていた。


「……お父様。お母様。どうして、こんなに苦しそうだったの?」


声に出すと、部屋にぽつりと響く。

愛しい声が聞こえてくるような錯覚。温かな思い出と、解けない謎が、彼女の胸の中で重たい石のようになっていた。


ページの端に、ほとんど消えかけた言葉が滲んでいた。


『──子どもたちには、知られたくない。あれが目覚めることを。』


「"あれ"って……?」


エレノアの指が、そっと文字をなぞった。

胸の奥で、恐ろしいものを直視してしまう予感が、冷たい波となって広がっていった。


**


真相への渇望に突き動かされ、アリアは記憶の場所へと足を運んだ。

かつてリリアが暮らしていた、今は荒れ果てた家。


「……リリア。」


名前を呼ぶ声は、誰にも届かずに沈んだ。

放置された家特有の、酸っぱい匂いが鼻を刺す。昼間にもかかわらず、家の中は薄暗く、沈黙が重たい毛布のように全てを覆い尽くしていた。

アリアは、失われた何かを探すように、静かに歩き回った。


その時だった。


イリスが、アリアの足元で虹色の光を強く放った。


「イリス……何か、見つけたの?」


導かれるように、アリアは視線を床に向けた。

そこに、埃まみれの小さなオルゴールが落ちていた。


「これ……」


アリアはそっとオルゴールを拾い上げた。

イリスの光は脈打つようにさらに強まり、まるで何かを訴えかけてくる。


(……リリアの、もの?)


アリアの心に、冷たくも温かな波が押し寄せる。

これは、ただの古びたオルゴールではない。何かを秘めている。何かを語りかけている。


オルゴールをしっかりと抱きしめ、アリアは小さく微笑んだ。


「大丈夫。絶対、無駄にはしないから。」


イリスが、きらりと光を震わせる。

手の中のオルゴールは、まるで温かい命を宿しているかのようだった。


アリアは静かに家を後にした。

背後に広がるのは、荒廃した冷たい空気──けれど彼女の胸には、確かに小さな灯りが宿っていた。



71話(前編):終わり

〈登場人物〉

アリア:王都に戻った占い師。エレノアの両親の事故とリリア一家の失踪事件の真相を追う。

レオン:大商会の会長。独自の情報網で事件の裏を探る。

エレノア:元女官だった王宮魔術師団長。両親の残した手記から手がかりを探す。

イリス:アリアの新たな仲間である虹色のスライム。

リリア:失踪したとされる商人一家の娘。

✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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