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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第五章 アルトリア王国編
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59話 血脈の共鳴と事故の真相 - オーウェンの憂慮

虹色の光が、アリアの指先でかすかに瞬いていた。

制御しようとすればするほど、それはまるで意思を持った生き物のように逃げ回り、アリアの焦りを煽る。

深く呼吸を整えるうちに、胸の奥底から湧き上がる衝動に導かれるように、彼女は自然と歩き出していた。


足が向かったのは、王宮の庭園の奥深くにひっそりと佇む、小さな祠だった。

苔むした石畳、風にそよぐ木々の葉擦れの音。

どこか懐かしい空気に包まれたその場所は、かつて母が静かに祈りを捧げていたと聞かされていた。


祠の中に足を踏み入れた瞬間、清らかなエネルギーがアリアを優しく包み込んだ。

それは、長い間眠っていたアリア自身の力と共鳴し、温かく、そして力強く彼女を支えてくれるようだった。

その心地よさに身を委ねていると、遠い記憶の扉が静かに開かれた。


優しく、温かな眼差し。

ふんわりとした髪の感触。

そして、いつも優しく微笑みながら、どこか悲しげに子守唄を歌っていた女性の面影が鮮やかに蘇る。


「ああ…お母さま…!」


心の奥深くに埋もれていた、温かい記憶の断片。


「私の母の名前は…ユリだった…!」


その時、背後から静かな声がした。


「アリア様。」


振り返ると、アメリア王妃が物憂げな表情で立っていた。

王妃は、アリアの母・ユリと親交があったという。


「エレノア様のご両親の事故について、もう少し詳しくお話ししてもよろしいでしょうか。」


促されるまま、アリアは王妃の隣に腰を下ろした。王妃は静かに語り始める。

エレノアの両親、セオドアとエレナが進めていたのは、ウィステリア王国との共同研究という名目ではあったが、実際にはアルトリウム王国に古くから伝わる、危険な古代魔法の研究が主だったこと。

そして、あの痛ましい事故の際、現場には外部からの侵入者の痕跡が確かに残されていたという事実を。


「私は、あれが単なる事故だったとは思っておりません。」


王妃の声は静かだが、その言葉には重みがあった。


「古代魔法を巡る何らかの陰謀による暗殺だった可能性が高いのです。」


アリアは息を呑んだ。

陰謀…暗殺…そんな恐ろしい言葉が、エレノアの両親に関わっていたというのか。


王妃はさらに続けた。


「エレノア様のお父上、セオドア様は何かに気づいていたのかもしれません。いざという時のために、アリア様の亡き父・オーウェン様に幼いエレノア様の保護を託していたのではないかと。そして、セオドア様とエレナ様が突然亡くなった後、オーウェン様はその約束を守り、エレノア様を保護されました。しかし、自身の身の危険を感じエレノア様をウィステリア王国の女官長へと託された…。私はそう推測しております。」


エレノアの父の懸念、そしてアリアの父・オーウェンの行動――二人の父親の思いが交錯する真実に、アリアの胸は締めつけられる思いだった。


「では…父は、母の死の真相についても…何か知っていたのでしょうか?」


アリアの声は、かすかに震えていた。


王妃は悲しげに首を横に振る。


「それは…分かりません。ただ、オーウェン様は生前、ユリ様がウィステリア王国で亡くなられたことを深く悼んでおられました。お二人がウィステリア王国へ移ったのは、ユリ様が見た“予知夢”がきっかけだったと聞いています。」


王妃は言葉を選びながら続ける。


「オーウェン様の義理姉にあたるマーガレット夫人から伺った話では、ユリ様は夢の中で、大人になったアリア様が古代王家の魔法の封印を解く光景を見たそうです。そして、“この子は世界を救う子かもしれない。ならば、何としても守らなければ”とオーウェン様と話し合い、ウィステリアへの移住を決めたと。マーガレット夫人の母は、聖女サクラ様に仕えていた侍女であり、エレノア様の母・エレナ様の母もまた、同じく聖女に仕えていたと聞いております。そのような縁もあって、ユリ様やオーウェン様とも深い親交があったのでしょう。」


そして、母ユリは幼いアリアを連れてウィステリア王国へ。オーウェンはアルトリウムに残り、セオドアたちと研究を続けた――。


祠を吹き抜ける風が、アリアの頬を優しく撫でた。

母の面影。エレノアの両親を案じる父・オーウェンの姿。そして、エレノアの両親を襲ったかもしれない陰謀の影――様々な思いが、アリアの胸の中で渦を巻いていた。


「私が知りたいのは……真実です。」


アリアは静かに、しかし強い決意を込めて言った。


「母のこと、そしてエレノアさんのご両親のこと。すべてを繋ぐ“真実”を、私は見つけ出したい。」


王妃は、アリアの瞳に宿るその強い光をじっと見つめ、静かに頷いた。


「わたくしも、できる限りの協力をいたしましょう。」


夕焼けが、庭園の木々を赤く染め始めていた。

アリアは、祠に満ちる清らかなエネルギーを改めて感じながら、心に新たな誓いを立てる。

過去の悲しみを乗り越え、未来へと繋がる“真実”を見つけ出すために。彼女は、もう決して立ち止まらない。


ーーー60話へつづく

〈登場人物〉

* アリア: 本物語の主人公。古の聖女の血を引く。父はオーウェン。未来視の力を持つ。

* キク: 遥か異世界から来たという伝説の聖女で、アリアの曽祖母にあたる。

* サクラ: この世界でキクの聖なる意志を受け継いだとされる聖女で、アリアの祖母にあたる。

* 百合: アリアの母。穏やかで優しい女性。予知夢で成長したアリアが古代魔法の封印を解くのを見て、アリアと共にウィステリア王国へ移住し、そこで亡くなった。

* リリア: 幽霊屋敷で出会った少女の幽霊。オルゴールを大切に抱えている。

* エレノア: アリアの仲間。ウィステリア王国の魔術師団長。リリアと似たオルゴールを持っている。両親は古代魔法の研究者だった。

* セオドア: エレノアの父。古代魔法の研究者。突然亡くなった。

* エレナ: エレノアの母。同じく古代魔法の研究者。セオドアと共に突然亡くなった。母がサクラの侍女だった。

* オーウェン: アリアの父。故人。先王の王弟。エレノアの両親と親交があり、エレノアを保護した。百合の予知夢による移住後もアルトリウムに残り研究を続けていた。百合の死を深く悲しんでいる。

* アメリア王妃: アルトリア王国の王妃。ウィステリア王国の元王女。オーウェンと血縁関係にある。

* ヴィクトル: オーウェンの兄。アルベール家先代当主。マーガレットの夫であり、ルシウスとユリウスの父。

* マーガレット夫人: オーウェンの義理の姉。アルトリウム王国出身の貴族。母が聖女サクラの侍女だった。百合やオーウェンとも親交があった。

✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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