54話 王都への接近と不安な少女 - 虹色の小さな奇跡
アルトリア王国の国境に近い、深い緑に包まれた森の中。
アリア、エリオット、そして虹色のスライム、イリスは、一人の少女と出会った。
少女は、泥に汚れた服を着て、大きな瞳に不安の色を浮かべていた。
一人、森の中を彷徨っている。
アリアが優しく声をかけると、少女はびくりと肩を震わせ、怯えた目でアリアを見上げた。
「あなたは…?」
少女の声は、震えていた。
「私たちは旅をしているの。どうしたの?迷子になった?」
アリアが微笑みかけると、少女は少しだけ警戒を解き、小さな声で答えた。
「王都へ行く道を知ってる…」
少女は、アリアたちを王都へと案内すると申し出た。
しかし、その表情は陰鬱で、ほとんど言葉を発しない。時折、後ろを振り返り、何かを恐れているようだった。
「何かあったの?」
アリアが尋ねても、少女は首を振るばかり。ただ、その目は、深い悲しみと不安を物語っていた。
森を抜け、王都へと続く街道に出た。遠くに、王都の城壁が見える。
しかし、少女の足取りは重く、その表情はますます陰鬱になっていった。
「王都で、何かあったの?」
アリアが再び尋ねると、少女はしばらく沈黙した後、ようやく口を開いた。
「王都では、変な噂が広がってる…」
少女は、震える声で語り始めた。
王妃様の具合が悪いとか、夜になると奇妙な光が見えるとか、そんな噂が人々の間に広がり、皆、不安に怯えているのだと。
「王妃様…?」
アリアは、その言葉に胸騒ぎを覚えた。
休憩中、イリスが近くの木に生っていた、まだ青い小さな果実を見つけた。
イリスはそれを自分の体の中に包み込むと、数分後、先ほどとは見違えるほど赤く熟した、美味しそうな果実を取り出し、アリアの足元に置いた。
「これは…?」
アリアが不思議そうに果実を見つめていると、エリオットがそれを手に取り、慎重に観察した。
「少し、味見をしてもよろしいでしょうか?」
エリオットは、アリアに断り、果実を小さく齧った。
しばらくして、エリオットは安堵の息を吐いた。
「毒はなさそうです。それに、とても甘い」
エリオットは、残りの果実をアリアに差し出した。
「どうぞ、アリア様」
アリアは、エリオットから果実を受け取り、口にした。
その瞬間、驚くほどの甘さが口の中に広がった。
「美味しい…!」
アリアは、思わず声を上げた。
「もしかして、イリスは何か特別な力を持っているのか?」
エリオットが呟くと、アリアもイリスを改めて見つめた。
イリスは、得意げに体を揺らし、虹色の光を放っている。
少女は、その光景を、目を丸くして見つめていた。
その瞳には、恐怖と同時に、小さな希望の光が灯っていた。
「イリス…」
アリアは、イリスに優しく触れた。
その時、イリスの体が、温かい光を放ち始めた。その光は、アリアの心を優しく包み込み、不安を和らげていくようだった。
「ありがとう、イリス」
アリアは、イリスに微笑みかけた。
イリスは、嬉しそうにアリアの足元に擦り寄った。
「さあ、行こう」
アリアは、少女の手を握り、立ち上がった。少女は、少しだけ表情を和らげ、頷いた。
王都への道は、まだ遠い。
しかし、アリアの心には、イリスがもたらした小さな奇跡が、温かい光を灯していた。
王都で待ち受けるものは、一体何なのだろうか。
アリアは、不安と期待を胸に、少女と共に、再び歩き始めた。
ーーー55話へつづく
〈登場人物〉
* アリア:王家の血を引く少女。王都で起こっている異変を心配している。
* エリオット:アリアの護衛。魔法の才能を持つが、杖は持っていない。毒味ができる。
* イリス:虹色のスライム。不思議な力を持つ。
* 少女:王都への道を知っている、不安そうな少女。
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※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。
作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。
あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。
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