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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第四章 王宮編 Ⅱ
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49話 別れと旅立ち - 未来への誓い

春の柔らかな日差しが、王都の石畳を温かく照らしていた。

鳥たちのさえずりが、穏やかな日常を告げるように響く。


ユリウスもすっかり元気を取り戻し、その明るい笑顔が、アリアの心にも安らぎを与えていた。


そんなある日、アリアの手元に、エレノアから丁寧に封蝋された一通の手紙が届けられた。

封を開くと、そこには見慣れない美しい筆跡で、切実な言葉が綴られていた。

アルトリア王国のアメリア王妃からのSOS。奇妙な出来事に悩まされているという王妃の訴えを読むうちに、アリアの胸には、かつての苦しみが鮮やかに蘇ってきた。

他国にも、あの忌まわしい怨念の影が忍び寄っているのではないか――。


ウィステリア王国での出来事を乗り越えた今、アリアは強く感じていた。

アメリア王妃を助けることは、遠い異国の苦しむ人々を救うための、最初の一歩になるのだと。


決意を胸に、アリアは大切な仲間たちに、アルトリア王国へ向かうことを告げた。


いつものように温かい光が差し込む部屋で、ルシウスは、アリアの言葉を静かに聞いていた。

彼の目には、隠された心配の色が浮かんでいたが、アリアの断固たる眼差しを受けると、穏やかに頷いた。


「アリアの決意は固いのだな。無事を祈っている」


ユリウスは、いつもの優しい笑顔で言った。


「アリアなら、きっと大丈夫だよ。遠くまで行くんだから、気をつけてね」


その瞳には、兄弟の愛情と、わずかな寂しさが滲んでいた。


エレノアは、アリアの手を温かい両手で包み込み、改めて千里鏡の存在を説明した。


「困ったことがあれば、いつでもこの鏡で連絡してください。繋がりが途絶えても、私が魔法的な手段で必ず連絡しますから」


レオンは、すでに手配を始めていた。


「アルトリア王国に関する情報なら、すでにいくつか集めてあります。出発前に渡しますので、役立ててください」


彼の落ち着きと、情報網への信頼が、アリアの背中を力強く押した。


そして、エリオット。

彼は、アリアの断固たる決意を静かに見つめ、短い言葉を発した。


「私も、一緒に行く」


その瞳には、迷いのない断固たる光が宿っていた。

以前のように、アリアのそばにいることが、彼の固い意志だった。


旅立つ日の朝、アリアはいつもの占い処の扉を開け放った。

温かい日差しが部屋全体を包み込む。

集まってくれたのは、日頃から彼女の言葉を求め、未来への希望を託してくれる、大切な街の人々だった。


「皆様、いつも本当にありがとうございます」


アリアは、一人ひとりの顔をゆっくりと見渡しながら、穏やかに語り始めた。


「この度、私は、遠いアルトリア王国へと旅立つことにいたしました」


部屋には、小さなざわめきが起こった。

心配そうな目、不安げな表情。

アリアは、そんな皆の気持ちを受け止めながら、温かい笑顔を向けた。


「アルトリア王国の王妃様が、何かお困りのご様子で、私に助けを求めていらっしゃいます。ウィステリア王国での経験から、私は、それが世界に影を落とすかもしれない、容易ではない問題だと感じています」


そして、アリアは、カイルから贈られた小さな手鏡を、皆に見えるように持ち上げた。


「ですが、ご心配には及びません。エレノア様とカイル様が、この素晴らしい『千里鏡』という魔道具を作ってくださいました。私がアルトリア王国にいても、この鏡を通して、皆様の未来を占うことができるのです」


部屋には、安堵の空気が静かに広がった。

アリアの言葉は、皆の不安を優しく包み込んだ。


「旅の間は、安全のため、占いは事前の日時予約制とさせていただきます。ですが、これまでと変わらず、皆様のお悩みや願いに、この鏡を通して耳を傾けたいと思っております。遠くにいても、連絡を取り合いましょう」


アリアは、あらかじめ用意しておいた、浄化の癒やしの付与された手作りのお菓子を皆様に温かい笑顔で手渡した。

それは、感謝の気持ちと、遠くにいても心はいつも繋がっているという、彼女なりの温かいメッセージだった。

甘い香りが部屋に広がり、人々の心も温かくなった。


アリアは、集まった人々の温かい眼差しを受けながら、アルトリア王国での使命に向けて、静かに決意を新たにした。


彼女の胸には、アメリア王妃を助けたいという断固たる決意と、共に困難を乗り越えてきた仲間たちへの深い感謝の気持ちが溢れていた。


そして、懐にそっとしまった小さな千里鏡が、遠く離れていても繋がりを保ってくれるという信頼感が、彼女の背中を優しく押してくれた。


新たな旅の始まりに、アリアの瞳は、未来への明るい希望に輝いていた。




ーーー50話へつづく


〈登場人物〉


* アリア: アルトリア王国のアメリア王妃からのSOSを受け、新たな旅立ちを決意する。

* ルシウス: アリアの安全を心配しつつも、その決意を尊重する。

* ユリウス: アリアの新たな旅を心から応援する。

* エレノア: 千里鏡の利用を改めて説明し、アリアを支援する。

* レオン: アルトリア王国に関する情報収集を約束する。

* エリオット: アリアと共にアルトリア王国へ旅立つことを決意する。

* 街の人々(占い処の客): アリアの旅立ちを聞き、千里鏡による占い継続を知る。

* アメリア王妃(手紙のみ): ウィステリア王国よりアルトリア王国へと嫁いだ元王女。アルトリア王国で奇妙な出来事に悩まされ、アリアに助けを求める。


✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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✪読んでくださり、ありがとうございます。

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