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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第四章 王宮編 Ⅱ
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47話 兄弟の絆 - 王都の未来

朝の光が、アルベール家の応接間を優しく照らしていた。

窓の外では、庭の木々を小鳥たちが飛び交い、楽しげなさえずりが聞こえる。

アリアは、その穏やかな光景を、静かに見つめていた。

昨夜の激しい戦いが、まるで遠い夢のようだった。


部屋の中央では、ユリウスとルシウスが、固く抱きしめ合っていた。

長らく、憎悪と怨念に囚われ、兄に冷たい言葉しか向けることのできなかった弟と、弟の身を案じ、苦しみ続けてきた兄。


二人の間には、言葉などいらなかった。

ただ、互いの体温を感じるだけで、どれほどの喜びと安堵が胸に満ちているのかが伝わってきた。

ゆっくりと離れた二人の顔には、温かい涙の跡が残っていた。

ルシウスは、弟の肩を力強く握りしめ、落ち着いた声で言った。


「ユリウス……本当に、よかった……」


ユリウスは、兄の目を真っ直ぐに見つめ返した。その瞳には、かつての冷たさはもうなく、温かい光が宿っている。


「兄上……ご心配をおかけしました。もう、大丈夫です」


「もう二度と、あんな思いはさせない」


ルシウスの声には、騎士団副団長としての力強さと、兄としての深い愛情が滲んでいた。


「共に、この王都を立て直そう。そして、二度とこのような悲劇が起こらないように」


ユリウスは、力強く頷いた。


「はい、兄上。私も、微力ながら、そのために尽力いたします」


その傍らでは、エレノアが、魔法師団の者たちに指示を出していた。

彼女の表情は真剣そのもので、王宮だけでなく、アルベール家にも、より強固な結界を張り巡らせている。


「今回の事態を踏まえ、王宮の警備体制を一層強化します。アルベール家にも、同様に厳重な結界を施します。魔力の流れの監視も徹底的に行います」


レオンは、傍らで、何枚もの羊皮紙に素早く筆を走らせていた。

彼の情報網は、既に今回の事件の真相解明に向けて動き出している。


「首謀者だけでなく、背後に潜む黒幕の存在も必ず突き止めます。王国の安定のため、私も全力を尽くしましょう」


アリアは、エリオットと共に、その様子を静かに見守っていた。

王都を覆っていた重苦しい空気は消え去り、代わりに、明るい希望の光が差し込んでいる。

人々の表情も、昨日よりも明るく、落ち着きを取り戻しつつあった。


「本当に、平和が戻ってきたんですね」


アリアは、隣に立つエリオットに、しみじみと語りかけた。


エリオットは、優しい眼差しでアリアを見つめた。


「ああ、あなたの光が、全てを浄化してくれたからです。ありがとうございます、アリア様」


アリアは、照れたように微笑んだ。


「私一人では、何もできませんでした。皆さんの協力があったからこそです」


二人は、窓の外に広がるアルベール家の庭の景色を、しばらくの間、無言で見つめていた。

昨日の騒乱が嘘のように、穏やかな朝が訪れている。


「これから、色々な困難もあるでしょうけれど……」


アリアは、静かに言った。


「きっと、皆で乗り越えていけますよね」


エリオットは、力強く頷いた。


「えぇ、もちろんです。私たちは、もう一人じゃないから」


兄弟の固い絆、エレノアの決意、レオンの固い決意、そして、アリアとエリオットの間の信頼感。

それぞれの心が一つになり、王都の未来は、昨日よりも確かに、明るい方向へと向かっているように感じられた。


しかし、アリアの心には、拭いきれない懸念も残っていた。


ユリウスの記憶の中で語られた、過去の優しい時間。

それは、アリアがこの世界に来る前の、本当のユリウスの姿なのだろう。


今の彼女には、その記憶がない。

二人の間には、まだ見えない壁があるような気がしていた。

それでも、ユリウスが正気を取り戻し、再び温かい眼差しを向けてくれるようになったことは、アリアにとって、何よりも明るい希望だった。



王都には、昨日を乗り越えた人々の、新たな希望に満ちた明るい息吹が満ちていた。

そして、その数日後、王からの使者がアルベール家を訪れた。

王は、アリアたち一連の功績を深く称え、彼らに相応しい褒賞を授けるという知らせを伝えた。


アリアは、その清らかなる力と勇気をもって王都を救った功績により、男爵位を叙爵されることとなった。

共に戦い、アリアを支え続けたエリオットは子爵へ陞爵、卓越した情報収集能力で事件の真相解明に貢献したレオンは準男爵を叙爵、そして、王都の守護に尽力したエレノアは伯爵へ陞爵、ユリウスを苦しみから解放し、王族としての責務を果たしたルシウスは公爵へと陞爵されることが決定した。


さらに、王はアリアに対し、男爵に相応しい邸宅を王都に用意することを決めた。新しい爵位を持つ者が、これまでと変わらぬ暮らしを送ることは、周囲に不要な配慮を生むという王の温かい思し召しだった。

アリアは、その申し出を謹んで受け入れた。


この知らせは、王都の人々にも喜びをもって迎えられた。

彼らは、街を救った英雄たちの新たな地位と未来を祝福し、ささやかな祝宴を開いて彼らを称えた。

アリアは、新たな生活への準備を進めながらも、これまでと変わらず占い処に立ち続けることを心に決めていた。

多くの人々との繋がりは、彼女にとって何よりも大切なものだったからだ。

そして、いつも隣で支えてくれるエリオットの存在が、彼女の心に温かい光を灯していた。


王都の未来は、決して平坦な道ではないだろう。しかし、固い絆で結ばれた仲間たちと共に、アリアは新たな一歩を踏み出す。

静かに始まる新しい一日が、彼らの未来への希望を力強く照らしていた。




ーーー48話へつづく

〈登場人物〉

* アリア:今回の怨念騒動を解決に導いた少女。その功績により、男爵位を授与される。

* エリオット:アリアと共に戦ってきた青年。男爵子息から、その功績により子爵位を授与される。

* ルシウス:ユリウスの兄であり、騎士団副団長。弟を救い、王都の安定に尽力した功績により、公爵位を授与される。

* ユリウス:ルシウスの弟。怨念に苦しめられていたが、アリアによって解放される。兄ルシウスが公爵となったため、アルベール家の侯爵位を継承する。

* エレノア:魔法師団長。王宮とアルベール家に強固な結界を張り、再発防止に努める。その功績により、伯爵位を授与される。

* レオン:情報収集能力に長けた商人。事件の真相解明に大きく貢献した功績により、一代貴族である準男爵位を授与される。


✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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✪読んでくださり、ありがとうございます。

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