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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第四章 王宮編 Ⅱ
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44話:怨念の奔流 - 浄化の光

激しい息遣いが、アリアの耳元で荒く響いた。

周囲には、倒れた魔物や黒装束の者たちが転がり、焦げ付いたような臭いが鼻をつく。

エリオットが、まだ警戒を怠らずに周囲を見張っている。

ルシウスとエレノアは、辛うじて残った敵を食い止めていた。


そして、アリアの目の前には、おぞましい光景が広がっていた。

それは、まるで巨大な心臓のように、黒く脈打ち、ドクドクと禍々しい音を立てるエネルギーの塊。

周囲には、憎しみ、悲しみ、絶望といった、あらゆる負の感情が渦巻いているのが、肌で感じられた。


触れたら最後、自分の心まで飲み込まれてしまいそうな、強烈な引力を持つ闇。


(これが……怨念の核……!)


アリアは、足がすくむような恐怖を感じながらも、一歩、また一歩と近づいた。


ユリウスの苦しみが、痛いほど伝わってくる。彼の魂を蝕み、王国を脅かす元凶は、まさしくこれなのだ。


「アリア様、危険です!下手に近づかないで!」


エリオットの声が、心配そうに響く。


「大丈夫よ」


アリアは、小さく答えた。

彼の心配は痛いほどわかる。

しかし、ここで立ち止まることはできない。

彼女には、やらなければならないことがある。


ゆっくりと両手を広げた。

彼女の体内で、温かい光がじんわりと灯り始める。

それは、ミストラル村で生まれた時から持っていた癒しの力。

そして2つ前の前世でも持っていた力。人々の傷を癒し、痛みを和らげる、優しい光。


しかし今、彼女が解き放とうとしているのは、ただの癒しの光ではない。

「浄化の癒し手」としての、彼女自身の奥底に眠る、聖なる力そのものだ。


「……ユリウス様」


アリアは、心の中でそっと呼びかけた。


「あなたの苦しみは、私が終わらせます」


次の瞬間、彼女の体から、眩いばかりの光が奔流のように溢れ出した。

それは、まるで夜明けの太陽のように、辺りの闇を一瞬で払い清める力強い光。


強大な怨念の力は、その光に激しく抵抗し

た。

黒いエネルギーが、まるで生き物のように蠢き、うねりながらアリアに襲いかかる。

倉庫全体が、地鳴りのような音を立てて激しく振動した。

壁や床が軋み、天井から砂や埃が落ちてくる。


「うっ……!」


アリアは、押し寄せる黒い奔流に、思わず息を呑んだ。

それは、単なる負の感情の塊ではない。

まるで、無数の悪意を持った刃が、同時に突き刺さってくるような、強烈な痛みだった。


「アリア!」


ルシウスの叫びが聞こえた。


「持ち堪えてください!」


エレノアの声も、必死さを滲ませている。


しかし、アリアは決して退かなかった。

彼女は、ユリウスの魂との繋がりを、心の奥底で強く保ち続けた。

彼の微かな意識が、アリアの光に呼応するように、内側から抵抗を始めているのが感じられた。

まるで、凍てつく氷の中で、小さな炎が燃え上がろうとしているかのように。


(ユリウス様も、一緒に戦ってくれている……!)


その事実に、アリアの心に、再び力が湧き上がってきた。

彼女は、自身の持つ癒しの力、そして、共に戦ってくれる仲間たちの存在を、心の支えにした。


「私は、負けない!」


渾身の力を込め、アリアは浄化の光を、怨念の核へと更に強く注ぎ込んだ。

彼女の体から溢れる光は、まるで意志を持つかのように、黒いエネルギーの塊を包み込み、少しずつ、しかし確実に、その形を溶かし始める。


黒い怨念は、断末魔の叫びのように、激しくうねり、抵抗する。

それは、見るも恐ろしい、黒い竜巻のようだった。アリアの光を打ち消そうと、幾度となく襲いかかる。

彼女の体は悲鳴を上げ、意識が遠のきそうになる。

それでも、彼女は歯を食いしばり、光を放ち続けた。


エリオットは、アリアを守るように、さらに強力な結界を展開した。

彼の額からは汗が流れ落ち、唇は乾ききっている。

ルシウスとエレノアも、命がけで周囲の敵を食い止め、アリアに集中できる環境を作ろうとしていた。


「アリア様……頑張ってください……!」


エリオットの声は、震えていた。


「信じてるわ、アリアならできる!」


エレノアの瞳は、熱い 希望 に燃えている。


仲間たちの声が、アリアの意識を繋ぎ止めた。

彼女は、一人ではない。

共に戦ってくれる仲間がいる。

そして、彼女の光を待っている、苦しむユリウスがいる。


限界を超え、さらに力を込めたその時、アリアの体から、今まで以上の、純粋で温かい光が爆発的に放たれた。

それは、まるで春の陽だまりのように、優しく、そして全てを包み込むような光。


黒く脈打っていた怨念の核が、悲鳴のような音を上げ、徐々にその形を崩していく。

渦巻いていた負の感情が、光に触れるたびに、まるで霧のように消え去っていく。


アリアは、全身の力を使い果たし、膝をついた。

しかし、彼女の瞳は、光り輝く怨念の残骸をしっかりと捉えていた。

それは、もはやかつての禍々しい塊ではなく、淡い光を内包した、小さな 結晶 のようになっていた。


長い、苦しい戦いが、ようやく終わりを迎えようとしていた。


アリアの心には、深い安堵と、そして、やり遂げたという静かな喜びが広がっていた。




ーーー45話へつづく

〈登場人物〉


* アリア: 怨念の核に辿り着き、浄化の光を放つ主人公。


* エリオット: 結界術でアリアを守り、戦況を見守る。


* ルシウス: 残った敵を食い止め、アリアを援護する。


* エレノア: 魔法でアリアを支え、浄化の成功を祈る。


* ユリウス: 怨念に蝕まれているが、アリアの光に内側から呼応する(精神的な存在)。


* 陰謀者の残党: 倒されながらも抵抗を続ける者たち。


* 魔物の残党: 浄化の光に晒されながらも、わずかに残る魔物。


✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


✦✦✦✦✦✦✦✦


✪読んでくださり、ありがとうございます。

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