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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第四章 王宮編 Ⅱ
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43話 激突の序章 - 地下倉庫の攻防

地下へと続く階段を、アリアは息を詰めて降りていった。

石造りの壁は湿り気を帯び、足元はひんやりと冷たい。

先に立つルシウスの背中を、彼女は固唾を呑んで見つめた。

エレノアとエリオットが、わずかな灯りを頼りに周囲を警戒している。空気は重く、かすかに漂う異臭が、この場所の只ならぬ雰囲気を物語っていた。


「……何か、嫌な感じがする」


アリアの小さな呟きに、エリオットが静かに頷いた。


「ああ、まるで底なしの泥沼に足を踏み入れたようだ」


やがて、広い空間に出た。

夕闇のような暗さの中に、ぼんやりと浮かび上がる異様な光景。

祭壇を中心に、黒装束の集団が蠢いている。

彼らの口からは、意味不明な呪文が低く響き、その声はねっとりとした闇のように、アリアの肌にまとわりついた。

祭壇の中央には、黒く濁った液体が満たされた器があり、そこから禍々しいエネルギーが立ち上っているのが見て取れた。


(これが……ユリウス様が苦しんでいた怨念の核……!)


アリアは、胸を締め付けるような痛みに顔を歪めた。

ユリウスの悲痛な叫びが、再び耳の奥で響く。絶対に、こんなものを放置しておくわけにはいかない。


その時、黒装束の一人が、こちらに気づいた。


「侵入者だ!」


鋭い叫びが、儀式を行っていた者たちの間に走った。

彼らの顔はフードで隠れて見えないが、その動きは明らかに敵意に満ちている。


「来るぞ!」


ルシウスが剣を抜き、鋭い眼光で前方を睨んだ。


たちまち、黒装束の者たちが、どこからともなく現れた異形の魔物たちをけしかけてきた。

犬のような姿をしたそれは、鋭い牙を剥き出し、喉を鳴らして襲いかかってくる。

さらに、見慣れた王宮の兵士たちの姿もあった。

しかし、その瞳は虚ろで、まるで操り人形のように、ぎこちない動きで剣を構えている。


「操られている……!」


エレノアが眉をひそめた。


「忌々しい怨念の力だわ!」


「アリア様は私の後ろへ!」


エリオットは、素早く両手を広げた。彼の周囲に、淡い光の膜が幾重にも展開していく。

ミストラル村で長老から教わった結界術だ。迫りくる魔物たちが、透明な壁に阻まれ、唸り声を上げる。


ルシウスは、騎士団の者たちと共に、操られた兵士たちと斬り結んだ。かつて共に剣を交わした仲間に刃を向けなければならない苦痛が、彼の表情を険しくする。

それでも、王国の危機を救うためには、躊躇している暇はない。研ぎ澄まされた剣技が、敵の動きを的確に捉え、一体、また一体と倒していく。


エレノアは、杖を構え、魔力を奔流させた。彼女の周囲に、青白い光が渦巻き、それが巨大な炎の塊となって敵に向かって放たれる。轟音と共に、魔物たちが焼け焦げ、操られた兵士たちもその勢いに押されて後退していく。


アリアは、エリオットの結界に守られながら、祭壇を見据えていた。黒い液体から立ち上る怨念のエネルギーは、まるで生き物のように蠢き、見る者の精神を蝕もうとする。

彼女は、ユリウスの苦しみを、そして王国の未来を守りたいという強い想いを胸に、一歩、また一歩と祭壇へと近づこうとした。


しかし、陰謀者たちの抵抗は激しい。次々と新たな魔物が召喚され、操られた兵士たちが波のように押し寄せてくる。エリオットの結界も、絶え間ない攻撃に少しずつ歪み始めていた。


「エリオット!」


アリアは心配そうに声をかけた。


「大丈夫です、アリア様。まだ持ちます!」


エリオットは額に汗を滲ませながらも、毅然と言い切った。彼の瞳には、アリアを守り抜くという強い決意が宿っていた。


ルシウスも、息を切らせながら、周囲の敵を薙ぎ払っていた。


「くっ……思ったより数が多いぞ!」


エレノアの魔法は強力だが、連発するには魔力を消耗する。彼女の表情にも、焦りの色が滲み始めていた。


「この怨念のせいで、魔力の流れも不安定になっているわ!」


アリアは、皆の奮闘を目の当たりにし、自分が立ち止まっている場合ではないと強く感じた。

彼女にしかできないことがある。ユリウスから託された想いを、ここで無駄にするわけにはいかない。

深呼吸を一つ。アリアは、エリオットの結界から一歩踏み出した。


「アリア様!危険です!」


エリオットが叫んだ。


「大丈夫よ」


アリアは、振り返らずに言った。


「私が、あの怨念を止めなければ」


彼女の体から、微かな光が溢れ始めた。それは、ユリウスの精神世界で感じた、温かく、そして強い光。その光は、アリアの決意に呼応するように、徐々に強さを増していく。


黒装束の者たちが、アリアに気づき、警戒の色を露わにした。数人が、彼女を止めようと手を伸ばしてくる。しかし、アリアの纏う光は、彼らが近づくのを拒むように、強く輝いた。


「邪魔はさせない!」


アリアは、覚悟を決めた瞳で祭壇を見据えた。黒く濁った液体は、今もなお、不気味な波動を周囲に広げている。この禍々しい力の根源を断たなければ、王都は、そして王国は、破滅へと向かってしまう。


激しい魔法の閃光、ぶつかり合う剣戟の音、そして魔物の咆哮が、地下倉庫に響き渡る。

その中心で、アリアは、静かに、そして確かな足取りで、怨念の祭壇へと近づいていく。


彼女の瞳には、揺るぎない決意の光が宿っていた。

戦いはまだ始まったばかりだ。


しかし、アリアの心には、必ずこの闇を打ち破るという強い信念があった。




ーーー44話へつづく


〈登場人物〉


* アリア: 怨念の核を止めるため、祭壇へと向かう主人公。


* エリオット: 結界術で敵を防ぎ、アリアを守る。


* ルシウス: 騎士団の一部を率い、操られた兵士や魔物と戦う。


* エレノア: 強力な魔法で敵を牽制し、アリアの道を開く。


* 陰謀者: 異様な装束を身につけ、怨念の儀式を行う集団。


* 魔物: 陰謀者たちが召喚した異形の存在。


* 操られた王宮の兵士: 怨念の力で操られ、アリアたちに襲いかかる。



✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


✦✦✦✦✦✦✦✦


✪読んでくださり、ありがとうございます。

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