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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第四章 王宮編 Ⅱ
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42話 策謀の胎動 - 王宮の異変

王宮の一室。夕焼けが窓枠を茜色に染める中、アリアは手にした羊皮紙を見つめていた。ユリウスの精神世界で垣間見た、おぞましい光景が脳裏に焼き付いて離れない。


「地下倉庫……まさか、そんな場所で」


アリアの呟きに、向かいに座るエリオットが静かに頷いた。精悍な顔には、いつもの穏やかな微笑みはなく、深い憂慮の色が滲んでいる。


「ユリウス様の言葉が真実なら、連中はそこで怨念の儀式を行うつもりでしょう。王宮の地下など、普段は誰も寄り付かない場所ですからな」


傍らでは、ルシウスが腕を組み、鋭い眼光を周囲に走らせていた。騎士団長としての彼の勘が、事態の深刻さを物語っている。


「最近、貴族たちの動きが不自然なのは皆も感じているはずだ。やけに顔色が悪かったり、そわそわしていたり……まさか、本当に王権を奪おうなどと」


エレノアは、窓の外に広がる夕焼け空を憂いを帯びた瞳で見つめていた。魔法師団を率いる彼女は、微かに感じ始めた不吉な魔力の波動に敏感に気づいていた。


「あの忌まわしい怨念の力……もし増幅させようなどとすれば、王都全体が危険に晒されます。結界を張り巡らせる準備は急いでいますが、間に合うかどうか……」


部屋の隅で、レオンが何枚もの書簡を広げていた。情報網を駆使する彼の表情は険しい。


「陰謀の首謀者はまだ掴めていません。しかし、複数の貴族が裏で繋がっているのは間違いありません。外部の勢力の影も見え隠れしています……一体、誰がこんなことを」


重苦しい沈黙が部屋を包んだ。それぞれが抱える不安と焦燥が、空気の濃度を高めていく。


「私たちが動くしかありません」


アリアは、決意を込めた声で言った。ユリウスの苦しみを無駄にはできない。王国の未来を守らなければならない。


「ユリウス様が命懸けで伝えてくれた情報を、無駄にするわけにはいきません。地下倉庫の位置は? 他に何か手がかりは?」


エリオットは、アリアの言葉に励まされるように顔を上げた。


「地下倉庫は、王宮の西側、古い書庫のさらに奥にあるようです。普段は鍵がかかっていて、管理人もほとんどいません。連中はそこを隠れ蓑にしているのでしょう」


ルシウスは、すぐに立ち上がった。


「騎士団の半数を動かし、王宮全体の警備を強化します。不審な貴族は徹底的にマークしろと指示を出します。エレノア様、結界の準備はどの程度進んでいますか?」


「主要な場所への結界術式はほぼ完了しています。あとは、怨念の力が漏れ出しやすい場所を特定し、重点的に強化する必要があります」


エレノアは、真剣な表情で答えた。彼女の指先には、微かな魔力の光が宿っている。


レオンは、広げた書簡の中から一枚を取り上げた。


「気になる動きをしている貴族が数名います。近衛騎士団の一部にも、彼らと接触している者がいるようです。内部からの裏切りも警戒しなければなりません」


アリアは、皆の言葉を聞きながら、ユリウスの悲痛な叫びを思い出していた。彼の魂を蝕む怨念、そしてそれを操る黒い影。絶対に許せない。


「私たちにできることを、一つずつ確実に実行していきましょう。ルシウス様、警備の強化と不審な貴族の監視を。エレノア様、王宮全体の結界を。レオン、陰謀の黒幕と外部の勢力の特定を。そして私は、エリオットと共に、ユリウス様から得た情報をさらに深く掘り下げます。何か見落としている点があるかもしれません」


それぞれの役割が決まり、部屋の空気はいくらか引き締まった。不安は消えないが、皆の瞳には、強い決意の光が宿っていた。


その夜、ルシウスは騎士団を率いて王宮内を巡回した。普段は静まり返っている夜の王宮に、微かな緊張感が漂っている。廊下の隅々まで目を光らせ、不審な物音や人影がないか警戒した。


エレノアは、魔法師団の者たちと共に、王宮の各所に魔石を配置し、複雑な結界術式を施していた。額には汗が滲み、集中力が途切れないように神経を研ぎ澄ませていた。


アリアとエリオットは、王宮の古い書庫に籠り、ユリウスが残したわずかな言葉の断片と、王宮の古文書を照らし合わせていた。「地下」「古い」「鍵」「儀式」……一つでも手がかりになる言葉を探し求めていた。


レオンは、秘密裏に組織した情報網を駆使し、怪しい動きを見せる貴族たちの動向を探っていた。彼らの屋敷に出入りする人物、最近の金銭の流れ、そして謎の会合の存在……少しでも不審な点があれば、すぐに報告が上がってくる。


数日後、レオンからの報告で、ある有力貴族が頻繁に王宮の西側に出入りしていることが判明した。その男の屋敷からは、微かながらも不吉な魔力の残滓が検出されたという。


「やはり、地下倉庫が怪しい」


アリアは確信した。ユリウスの言葉と、レオンの情報が線で繋がった。


「連中は、そこで怨念の力を増幅させる儀式を準備しているのでしょう。近いうちに、決行するつもりかもしれません」


エリオットは、険しい表情で頷いた。


「儀式を阻止しなければなりません。しかし、敵の全貌はまだ掴めていません。下手に動けば、逆に罠に嵌められる可能性もあります」


その時、エレノアが息を切らせて駆け込んできた。


「大変です! 王宮の地下から、強い魔力の波動が感じられます! 間違いありません、連中は儀式を始めたのです!」


緊迫した空気が部屋を支配した。もう時間がない。


「ルシウス様、騎士団を率いて地下倉庫へ向かってください! エレノア様、私たちもすぐに合流します。レオン、引き続き情報収集を頼みます!」


アリアの号令一下、皆はそれぞれの持ち場へと駆け出した。王国の命運をかけた、最後の戦いが始まろうとしていた。




ーーー43話へつづく

〈登場人物〉


* アリア: ユリウスの異変を知り、陰謀に立ち向かう決意をした主人公。


* エリオット: アリアと共にユリウスの情報を分析し、行動を共にする。


* ルシウス: 騎士団長として王宮の警備強化と不審な貴族の監視を行う。


* エレノア: 魔法師団を率い、王宮全体の結界準備と魔力感知を行う。


* レオン: 情報網を駆使し、陰謀の首謀者と外部勢力の特定を試みる。


* ユリウス: 精神世界で異変を察知し、アリアに情報を伝えた(回想)。



✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


✦✦✦✦✦✦✦✦


✪読んでくださり、ありがとうございます。

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