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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第三章 ミストラル村編
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37話 再出発の地 - 新たな絆

静寂が戻ったミストラル村に、穏やかな日常がゆっくりと息づき始めた。

アリアとエリオットは、村人たちと共に復興の日々を送っていた。


アリアは、占い師としての知識はもちろん、前世で得た現代の知恵も活かし、村人たちの生活再建に奔走する。

長年、古い農法しか知らなかった村人に、新しい作物の育て方を優しく教えたり、清潔な水を保つための知識を分かりやすく伝えたり。最初は戸惑っていた村人たちも、アリアの親身な言葉と、実際に目に見える効果に徐々に信頼を寄せていった。


「アリア様のおかげで、今年は希望が持てます」


日焼けした笑顔でそう話す農夫の言葉が、アリアの胸を温かくした。困っている人を助け、感謝される。そんな当たり前のことが、今の彼女には何よりも大切だった。

失われた故郷を思い出すような、じんわりとした温かさが、彼女の心を満たしていく。


エリオットもまた、この村で新たな自分の居場所を見つけ始めていた。村の子供たちを集めては、基礎的な魔法を教える。

小さな火花を指先に灯したり、風を起こして落ち葉を集めたりする彼の魔法に、子供たちは目を輝かせた。


「すごい!エリオット先生!」


と無邪気に笑う子供たちの声は、エリオットの心にこれまで感じたことのない喜びを運んできた。

荒れた土地に再生の魔法を試す日々は、困難ながらも充実していた。地面が徐々に活力を取り戻し、緑が芽吹き始めるのを見るのは、彼にとって何よりの褒美だった。


アリアは、村人たちとの何気ない会話の中に、温かい繋がりを感じていた。井戸端での世間話、夕食を囲んでの笑い声。そんな日常の断片が、彼女の心を優しく包み込む。過去の辛い出来事が遠ざかるような、穏やかな時間だった。

しかし、そんな平和な時間にも、終わりが近づいていた。

ある日の午後、村の使いの者が、アリア宛の手紙を持ってきた。

王都にいるレオンからだった。

封を開き、丁寧に折り畳まれた便箋を広げる。レオンの几帳面な文字が、アリアの目に飛び込んできた。


『アリア様

ご無沙汰しております。ミストラル村の件、大変ご苦労様でした。

王都の状況ですが、貴女が不在の間にも、決して平穏とは言えません。以前より制御していた古代の怨念の動きが、最近わずかに活発化している兆候が見られます。微細な魔力の揺らぎが観測されており、専門家たちの間でも警戒が高まっております。

また、ユリウス様の精神状態も不安定さを増しているとの報告も受けております。ルシウス様とマーガレット夫人が懸命に支えていらっしゃいますが、時折、周囲を不安にさせるような言動も見られるとのことです。

王宮内では、アリア様の出自に関して、一部で動きがあるようです。具体的な詳細はまだ掴めておりませんが、以前から噂されていた件が再び表面化しつつある兆候が見られます。

詳細については、お会いして直接お話したいと考えております。

くれぐれもご無理なさらず、お気をつけてお帰りください。王都にて、一刻も早くお会いできることを願っております。

敬具

レオン』


手紙を読み終えたアリアは、そっと息を吐いた。レオンの心配そうな言葉が、胸に重くのしかかる。


ミストラル村の温かさに触れ、ようやく心の静けさを取り戻しつつあったのに、王都では再び不穏な空気が漂い始めているようだ。


「どうか、何もありませんように……」


小さく呟いた言葉は、夕焼け空に溶けていった。茜色に染まる空は今日も美しかったが、アリアの心には、拭いきれない不安が静かに広がっていく。


ミストラル村の穏やかな風が頬を撫でる。しかし、その優しい感触とは裏腹に、遠い王都で待ち受けるかもしれない困難を思うと、胸の奥が締め付けられるようだった。


再び、あの不穏な日々に戻らなければならないのだろうか。

彼女は、村人たちとの別れを前に、一人一人の顔を思い浮かべた。彼らのために、自分にできることはまだあるのだろうか。

王都に戻ることで、また新たな困難に巻き込まれるかもしれない。それでも、彼女は行かなければならない。


王都には、彼女を待っている人たちがいる。そして、解決しなければならない問題があるのだから。


アリアは、ゆっくりと立ち上がった。遠くの空には、一番星が小さく瞬いている。その光を見つめながら、彼女は心の中でしっかりと決意した。

このミストラル村で得た温かい記憶を胸に、再び王都へと向かおう。そこで待ち受けるであろう困難に立ち向かうために、彼女はもう一度、自分自身を奮い立たせるのだった。




37話:終わり


〈登場人物〉


* アリア: 本作の主人公。怨念騒動を経て、ミストラル村の復興を支援する中で、再び王都へ戻る決意を固める。占い師としての知識と現代の知識を持つ。


* エリオット: アリアと共にミストラル村の復興を支援する青年。村の子供たちに魔法を教えたり、土地を再生させる魔法を試したりと、新たな道を見出し始めている。


* レオン: 王都にいるアリアの協力者。手紙を通じて、王都の不穏な状況や王宮内の動きをアリアに伝える。


* ミストラル村の村人たち: 怨念騒動から立ち直ろうとしている人々。アリアとエリオットの支援を受けながら生活を立て直している。


✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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✪読んでくださり、ありがとうございます。

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