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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第十一章 忘れられたまま、愛されていた
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閑話:番外編006 それぞれの違和感

久々の番外編です。

アリア以外のキャラクターの視点の

お話です。


その夜、焚き火の火は穏やかだった。


はぜる音も、揺れる影も、いつもと変わらない。

誰かが声を荒げることもなく、

場は静かに、均衡を保っているように見えた。


――けれど。


それぞれの内側では、

ごく小さな違和感が、同時に芽吹いていた。




ルクスは、星を見上げていた。


星霊としての感覚が捉えているのは、

光の強さでも、配置の変化でもない。


結びつきの向き。


本来なら、交わらないはずの線が、

わずかに近づこうとしている。


(……縁、か)


そう名づけるには、まだ早い。

けれど、星々が一斉に、

ひとつの方向を“意識している”ような感覚があった。


視線の先には、アリアがいる。


彼女自身は、何も変わっていない。

けれど、星は確かに、彼女を起点に揺れている。


ルクスは、それ以上考えるのをやめた。

今は、まだ、名を呼ぶ時ではない。




シュウは、焚き火のそばで皆を見渡していた。


誰かが明確に不調を訴えているわけではない。

怪我人も、魔力の暴走もない。


それでも。


呼吸の深さ。

魔力の流れの速度。

視線の動きと、沈黙の間。


それらが、ほんの少しずつズレている。


(……個々じゃない)


シュウはそう判断した。


誰かひとりの問題ではない。

場全体が、静かに揺れている。


治癒魔法を使うほどではない。

声をかけるのも、今ではない。


だから彼は、何も言わない。

ただ、異変が「形になる前」を、

逃さないように見ている。




プエルは、いつも通りの顔で座っていた。


違和感に気づいていないわけではない。

むしろ、誰よりも強く感じている。


――だからこそ、表に出さない。


ここで口にすれば、

それは“確信”に変わってしまう。


今は、まだ、

知らなかったふりをしていられる段階だ。


プエルは、視線を伏せたまま、

静かに焚き火を見つめ続けた。




少し離れた場所で、

マコトとモルンが並んで腰を下ろしていた。


特別な会話はない。

けれど、沈黙が妙に心地いい。


ふとした瞬間、

同時に、同じ方向を見る。


――アリア。


その背を見たとき、

二人の胸に、同じ感覚がよぎった。


(……やっぱり、そうか)


言葉にはしない。

確かめ合う必要もない。


あの頃。

カメリアだった彼女のそばにいた時間。


それを“覚えている”という感覚だけが、

互いの中に、確かに残っている。


マコトは軽く息を吐き、

モルンは小さく肩をすくめた。


どちらも、

まだ語る時ではないと知っている。




イリスは、理由もなく、ぽよんと跳ねた。


誰がどう、と考えているわけではない。

ただ、場の空気が、

いつもより少し柔らかく、少し不安定だ。


だから、アリアのそばに行く。

ただ、それだけ。




エリオットは、皆を見回して、首を傾げていた。


何かが起きている気はする。

けれど、それが“過去”に由来するものだとは、

まだわからない。


彼とアリアの縁は、

アリアがこの世界に来てから始まったものだ。

だからこそ、今は、少し外側にいる。


(……静かだな)


それだけを、素直に感じていた。




少し離れた影の中で、

ユリウスは、何も言わずにアリアを見ていた。


彼だけが、

「アリアの幼少期」を知っている。


けれど、その記憶を、

今の彼女がほとんど持っていないことも。


だから、今は踏み込まない。

語られるべき時が、必ず来ると知っているから。




誰も、答えには辿り着いていない。


けれど、

それぞれの胸に宿った違和感は、確かだった。


名もなく、形もなく、

まだ物語になる前の、微かな揺れ。


月は何も語らない。


けれどその夜、

それぞれの違和感は、

確かに、同じ方向を指し始めていた。





閑話:番外編006 終

エリオットとシュウ以外

それぞれに自分の前世の記憶があり

それを徐々に思い出し始めている。

そんな番外編006でした。

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