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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第十一章 忘れられたまま、愛されていた
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305話 選ばなかった未来 - 胸に残る違和感

皆様、楽しいクリスマスを過ごされましたか?

私は3日間のんびり過ごしました

クリスマスが終わるともうすぐ年末年始。

掃除と断捨離がんばります!



白い静寂の中に、アリアは立っていた。

床も壁も天井も、境界のない淡い光に満たされた空間。


以前見かけた“白い部屋”と、よく似ている。けれど、今回は違った。


――近い。

距離ではなく、感覚が。

胸の奥が、じくりと疼く。

痛みというほどではないが、無視できない違和感が、確かにそこにあった。


「……ここは……」


声に出しても、反響は返らない。

それでも、この場所が“夢”ではないことだけは分かっていた。


ふいに、壁の一部が、ざわりと揺れた。

白が削がれ、墨を落としたような影が滲む。

輪郭の定まらない、白黒の映像。


――一人の女性が、そこにいた。

長い髪。

静かな眼差し。

どこかで見たことがあるような、けれど、はっきりと思い出せない姿。


(……カメリア)


名前は、自然と胸に落ちてきた。

確信というほど強くはない。

けれど、否定する理由もなかった。


映像の中の彼女は、机に向かい、水晶のようなものを前にしていた。

指先が、微かに震えている。

視えたのだ。

誰かの裏切り。

国の歪み。

小さな綻びが、やがて大きな崩壊へ至る未来。

カメリアの唇が、かすかに開く。


――言えば、止められる。


その先を、アリアは“知っていた”。

だが、彼女は口を噤んだ。


「……そんなはず、ない」


そう呟く声は、弱く、優しかった。

信じたかったのだ。

信じるという選択を、してしまった。


次の瞬間、映像が揺らぐ。

人々のざわめき。

遅すぎた警告。

守れたかもしれないもの。

失われていくもの。

けれど、責める声は、どこにもなかった。


ただ、立ち尽くす彼女の背中だけが、そこに残っていた。


(……罪じゃない)


アリアの胸が、強く鳴る。

これは、断罪ではない。

裁きでもない。

――後悔だ。


選ばなかった未来。

選べたかもしれない道。


その“もしも”が、今も胸の奥で、脈を打ち続けている。


「……」


伸ばした指先が、映像に触れる前に、ぶつりと途切れた。

白が、すべてを覆い尽くす。


「アリア……」


微かな声が、遠くで聞こえた。


「……だいじょうぶ……」


イリスの声だった。

はっきりとは聞こえない。

それでも、確かな温度だけが、胸に残る。


次の瞬間、足元が崩れ、意識が引き戻された。




「――っ」


アリアは、息を呑んで目を開けた。

天幕の中。

見慣れた布の天井。

外から聞こえる、人の気配。

胸に、手を当てる。

まだ、鼓動が早い。

痛みはない。


けれど、さっき見たものの余韻が、消えていなかった。


「……選ばなかった、未来……」


小さく呟くと、胸の奥が、また応える。

すぐ傍で、月読猫が尻尾を揺らした。


「見え始めたニャ……」


いつもの軽さを抑えた声。


「でも、まだ“全体”じゃないニャ。 今は、縁に触れただけ」


アリアは、黙ってうなずいた。

無理に続きを知りたいとは、思わなかった。

怖さよりも、不思議な納得があったからだ。


(……わたしは、もう知ってる)


全部ではない。

でも、確かに。

夢として。

感覚として。

胸に残る鼓動として。


「月読さん」

「なんだニャ」

「……あの人、後悔してた?」


問いは、静かだった。

月読猫は、少しだけ目を細める。


「後悔、というより……

 “それでも、そうするしかなかった”

 そう思い続けていたニャ」


アリアは、ゆっくりと息を吐いた。

責める気持ちは、湧かなかった。

むしろ、その選択をした心の重さが、胸に残る。


(だから……今も、こんなふうに)


胸の奥で、脈打つもの。

選ばれなかった未来が、

それでも消えずに残したもの。


アリアは、そっと目を閉じた。

今はまだ、名付けなくていい。

ただ、この鼓動を、覚えていればいい。


それがきっと、

次の鍵へと続く合図になるのだから。


――静かに、確かに。


物語は、次の扉の前へ進み始めていた。





ーーー306話へつづく


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


✪読んでくださり、ありがとうございます。

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