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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第十章 果てなき砂と星の狭間で
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284話 眠る祭壇 - 月読猫の記憶


砂漠の遺跡の中心部にたどり着くと、そこには半ば砂に埋もれた古い祭壇がぽつんと残されていた。外の灼熱が嘘のように消え、ひんやりとした空気が肌を撫でる。乾いた風は止み、ただ静寂だけが支配する空間。砂粒がほんのわずかに舞い上がると、かすかな光の帯が祭壇を照らした。


アリアは月読猫を抱き直す。猫の耳はぴんと立ち、尻尾がそわそわと揺れ続けている。小さな胸の鼓動が、アリアの手のひらに微かに伝わってくる。


「……嫌な感じ、する?」


小さく問いかけると、月読猫は「にゃあ」と短く鳴いた。だがその目は、祭壇の奥に潜む何かをじっと見据え、まるで記憶をたどろうとしているかのようだった。


プエルは早速砂を払いのけ、祭壇の表面に刻まれた星の紋が現れるのを見て、目を輝かせた。


「うわぁっ、かっこいい! 星の紋だ!」


「触ると危ないから」


ルクスがフードの縁をつまみ、プエルを軽く持ち上げる。プエルはわっと声をあげ、アリアの後ろに避けた。


「なんで?」


「影の属性が濃すぎる。祭壇自体が魔法陣の一部だ。触れたら……吸われる可能性がある」


「ひぃ……吸われるのはいや!」


プエルは祭壇に後ろ髪を引かれるように目を向けたが、アリアの腕の中で体を小さく震わせた。


エリオットは膝をつき、床に落ちた砂の深さや足跡の形を慎重に調べる。


「……先客がいる。足跡が新しい。しかも複数だ」


「先客……?」


アリアが息をひそめて問いかける。


「冒険者か、盗掘狙いか……素人だな。この回廊を理解して歩いた形跡はない」


モルンがゆっくり一歩を踏み出すと、影がふわりと人型に膨らむ。アリアは思わず息を呑んだ。


「モルン……影が!」


「……わかってる」


モルンの笑顔は柔らかいが、微かに膝が震えているのがわかる。ルクスは影をじっと見つめ、息を吸った。


「影の魔力が、モルンから少しずつ吸われてる」


「大丈夫?」


アリアが肩に手を置く。


「……少し重いだけ。歩ける」


シュウはすぐに魔力回復用の補助アイテムを取り出し、イリスが胸を張って「モルン、疲れたら私の魔力あげる!」と手を挙げる。プエルも「わたしもあげるー!」と続いた。


「やっぱり影ぬい持ちには相性が悪いな……」


ルクスが影模様を見つめ、息を吐く。


マコトは前方で立ち止まり、風の流れを確かめる。


「風が……曲がってる。いや、そこだけ消えてる。見えない通路だ」


「見えない通路?」


プエルが首をかしげる。


「影で道を偽装してる。本当は通れるのに、壁に見せかけている」


マコトは風のわずかな流れを読み取り、慎重に歩を進める。砂が舞い上がり、沈まない場所だけが見えない壁で支えられているように見えた。


「ここだ。影が壁を隠している。通るなら、この細い風の通り道だけ」


「すごい……。師匠、よくこんなのわかるね」


アリアが感心して言うと、マコトは照れくさそうに鼻をかいた。


「昔から風の流れだけは得意だからな……こんな場所で役に立つとは思わなかったけど」


月読猫が低く喉を鳴らした。いつもの甘え声とは違う、緊張の混じった音だった。アリアは抱きしめ直す。


「どうしたの、月読さん……?」


そのとき、ユリウスが祭壇の周囲を歩きながら、石の微妙な凹凸や砂の変化を確かめていた。


「ここ、足元に注意。砂の盛り上がりが不自然。罠があるかもしれない」


アリアは頷き、猫をしっかり抱き直す。プエルもユリウスの隣に寄り、祭壇を慎重に観察した。


ルクスは祭壇の星紋に手をかざし、微かな力の流れを読み取る。


「この祭壇……記憶に関わる装置かもしれない」


「記憶……?」


アリアが呟くと、月読猫が再び低く鳴く。緊張と困惑が混ざった声に、アリアはさらに抱きしめた。


ユリウスがそっと肩に手を置き、静かに仲間を見渡す。


「無理はさせない。猫も含め、ここは慎重に進もう」


モルンは影の揺れを見つめながら、微笑んだような表情でアリアを見やる。


「大丈夫、アリアがいるから」


アリアは深く息を吸い込み、仲間たちと目を合わせた。


「行こう。慎重にね」


回廊を抜け、影を読み取りながら、仲間たちは祭壇の奥へと進む。月読猫はアリアの腕の中で震えつつも、回廊の先をじっと見つめている。ユリウスはその横で警戒を緩めず、必要なときに助けを差し伸べる態勢を保った。


祭壇の中心に近づくほど、空気が重くなり、影と光が絡み合う。仲間たちは息をひそめ、ただ歩みを進める。ここで何が起きるのか、誰もまだ知らない。ただ確かなのは、月読猫の震えとモルンの影、そしてユリウスの警戒が、この空間の危うさを物語っていることだった。






ーーー285話へつづく


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


✪読んでくださり、ありがとうございます。

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