280話 砂漠の仲間 - 新たな旅立ち
遺跡を離れ、風道を抜けると、砂漠はまた果てのない姿を取り戻していた。
陽光は容赦なく降りそそぎ、乾いた空気が肌にまとわりつく。
「よし……ひとまず安全地帯までは行けそうだね」
シュウが額の汗をぬぐい、息を整えながら周囲を見回す。
「遺物を持って帰れたのは大きいよな。これでしばらく記録整理が捗る」
エリオットは長杖を肩に担ぎ、にっと笑った。
「でも重いけどな!」
「あなたが言うと、なんか安心するよ……」
アリアが苦笑し、仲間たちの空気が少しだけほぐれた。
プエルは月読猫の後ろをぴょこぴょこと走りながら、好奇心全開で問いかける。
「ねえねえ、月読さんって、やっぱり特別なの? 遺物のことわかってたの?」
「……にゃあ」
月読猫は答えない。
だが尾が誇らしげに一度だけふわりと揺れた。
「ふむ……月読殿は何かを思い出しかけているのかもしれぬね」
ルクスが砂を踏みしめながら静かに言う。
「この世界の外側……?」
「うむ。この星の理とは少し違う“層”の気配。懐かしくて……少し怖い」
ルクスの言葉に、マコトが後方から短く続けた。
「……それでも、月読はアリアから離れようとしない。その理由はそれだけで十分だ」
「……うん」
アリアは歩を緩め、月読猫をそっと抱き上げた。
猫は安心したように喉を鳴らし、アリアの胸元に顔を埋める。
その様子を見て、影がふわりと揺れた。
モルンが人型の姿で微笑んでいる。
『アリアが中心……それは、昔も今も変わらないことだ』
「モルン……。人化、前より長く保ててる?」
『影循環が少しずつ安定してきた。……もうすぐ、もっと自由に形を選べる』
アリアは嬉しそうに頷いた。
「さて、俺の役目も忘れるなよ? プエル、弓の構えは昨日の続きだ」
少し離れた位置でユリウスが弓を肩にかけて手招きする。
「えっ、今ここで? 砂漠で?!」
「環境が変わっても当てられてこそ、だろう?」
プエルはうめきながらも駆け寄る。
その後ろでイリスが「ぽよん」と跳ね、励ましているように見える。
マコトはそんな光景を静かに見守り、
エリオットは「ま、がんばれよ~」と肩をすくめ、
シュウは周囲の地形を確認しながら歩き、
それぞれが自然に自分の役割をこなしていた。
「次の場所は?」
エリオットが尋ねる。
「砂の裂け目の向こうだ。古代の文献によれば――」
ルクスが少し長い説明を始めた瞬間、
「あーっ!また始まった!」
プエルが叫ぶ。
イリスが「びよん」と跳ね、エリオットが肩を震わせて笑う。
「まあまあ、聞くだけ聞こうよ」
シュウがなだめ、
モルンは静かに耳を傾け、
マコトだけは周囲の気配を探るように無言で前を見続けている。
そして――
月読猫がアリアの肩に乗り、尾をゆっくり左右に振った。
その尾の動きには、言葉以上の信頼と、
“まだ言えないけれど伝えたい何か”がこもっている。
砂漠の風が吹き抜ける。
どこまでも続くこの道の先に何が待つのかは分からない。
だが、この仲間たちとなら越えられる。
アリアは強くそう思い、次の一歩を踏み出した。
───281話へつづく
※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。
作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。
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