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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第十章 果てなき砂と星の狭間で
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271話 幻影の砂獣 - 小さな危機

夜のうちに下書き保存しておいて、

時間指定投稿を暫くやってみます。



「……風が、止んだ?」


ユリウスが足を止めた。空気が一瞬にして張りつめる。

遺跡の奥、淡く光る砂壁がざわりと揺れた。

次の瞬間、砂の粒が渦を巻き、巨大な影が姿を現した。


四つ足、長い尾、そして光を呑み込むような瞳――。

まるで砂そのものが命を持ったかのような“幻影の獣”だった。


「……幻影、だな。」


マコトが剣を抜きながら低く呟く。

月の光を反射する刃が、わずかに揺らめいた。


「けど、攻撃してこない……?」


ルクスの声に、砂獣の身体がわずかにしなった。

まるで、仲間たちを“試す”ように。


「おっきい……!」


プエルが息を呑み、足を一歩下げる。

その声に反応するように、砂獣の尾がしなり、空気が震えた。


「避けろ!」


マコトの声と同時に、エリオットが光の盾を展開する。


「“シェルド・ウォード”!」


眩い光壁が衝撃を吸収し、砂煙が爆ぜた。

砂粒が飛び交い、音が消える。


「……攻撃してこないけど、進路を塞いでるね。」


アリアが息を整えながら呟く。

視線の先、砂獣はじっと動かず、ただ見つめていた。




月読猫がふいにアリアの前に出た。

金の瞳が細く光り、砂の匂いを嗅ぐように地をなめる。


「にゃっ」


瞬間、猫の足元に淡い光の線が走った。

まるで“道”を描くように、遺跡の奥へと伸びていく。


「……あれが、通れる道?」


アリアがつぶやくと、猫は振り返って小さく鳴いた。

その声は「早く来い」と言っているようだった。


「行け、アリア。猫が導いてる。」


マコトの言葉に、彼女はうなずいた。

砂獣が咆哮のような風を吹かせる中、アリアは月読猫の後を追う。


砂壁が崩れ、視界が真っ白に染まる。

足が滑った瞬間、ユリウスの手が彼女の腕を掴んだ。


「離れないで。」


短い一言。その声音に焦りも恐れもない。

アリアは頷き、「ありがとう」と息を吐いた。


「礼はあとだ。――猫のほうを見て。」


彼の視線の先、月読猫は砂獣の正面に立っていた。


小さな身体をふくらませ、尾をピンと立てる。

砂獣の巨大な瞳と、小さな金の瞳が交わる。

空気が震えた。


「月読さん……」


アリアの心がざわつく。

どこか懐かしい、月の神の名を宿した存在。

その姿が、まるで神話の断片のように見えた。


「ねこちゃん、戻って!」


プエルが叫ぶが、猫は動かない。

むしろ一歩、前へ進んだ。


その瞬間――風が止まった。

砂獣の身体が淡く揺らぎ、輪郭が溶けていく。

幻のように崩れ、風と共に散って消えた。


「……消えた?」


エリオットが目を細める。

砂嵐が収まったあと、遺跡の奥に光の通路が現れた。


「どうやら、月読猫が“幻影の鍵”を見抜いたらしい。」


ルクスが静かに分析する。

その声には、長命ゆえの直感に似た重みがあった。


アリアは膝をつき、猫の頭を撫でる。


「月読さん、すごい……本当に助けてくれたのね」


猫は満足そうに喉を鳴らし、「にゃー」と短く鳴いた。


プエルが嬉しそうに近づく。


「ねえねえ、なんでアリアの名前しってたの?どこからきたの?」


しかし、猫はするりと避けて、尾だけで軽くプエルの頬を撫でた。


「つめたい~!」


「ふふ、きっと誇り高いのよ」


アリアが笑うと、仲間たちにも自然と笑みが広がる。



その瞬間、遺跡の奥から風鈴のような音が響いた。

祈りの残響のように、かすかに揺れて――。


「……まだ、終わりじゃなさそうだな。」


マコトが剣を納め、慎重に歩を進める。

ユリウスが無言で後に続き、ルクスは静かに光の流れを追った。


月読猫はアリアの足もとをすり抜け、再び先頭へ。

小さな足跡を、確かに砂の上へと刻みながら――。


「行こう。きっと、あの光の先に“何か”がある」


アリアの言葉に、誰も異を唱えなかった。

月光が差し込むその瞬間、仲間たちは再び歩き出す。



新たな夜明けが、砂の奥で静かに待っていた。






ーーー272話へつづく


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。



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